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明るい未来へ~ティアsaid

「ティア?…大丈夫?」

 そう優しく問いかけてくるのは、紛れもなくギルバート。だが、何故だろう…何かが違う…。


「…誰ですか?」

 不躾な質問だとは分かっていたが、どうしても()をギルバートだとは思えなかった。どうしてだろう。


 不機嫌な顔をされるかと思ったが、彼は逆に穏やかに、心の底から幸せが溢れてきたような、そんな笑顔を私に向けた。


「ありがとう」


 彼はただただ、微笑んでいるだけだった。


 気が付くと、周りに妖精王と呼ばれる者たちが集まってきていた。


「…この賭けはこの子の勝ちだ。とっとと帰ってくれ。そして、二度と俺の愛し子に手を出すなよ」

 ギルバートのようなその人は、笑顔で周りの妖精王を見つめているが、その言葉には物凄い圧を感じる。


 よくよく見ると、どの妖精王もボロボロだ…。


「…あなたが?」

 ティアが声をかけると、彼は笑って「気にしないで」とだけ言った。


「ねぇ、あなたが〝ローディの死神〟?」

 黙っていたフレアが、我慢できないとばかりに割り込んできた。彼は驚いた様子で、フレアとティア、そして周りの妖精王達を見回した。


「ふっ……改めまして、お初お目にかかります。その〝ローディの死神〟に加護を与えている『精霊』と呼ばれるものです」


 彼は『精霊』と名乗り、フレアと私におじぎした。


「妖精王との賭けの内容は、剣を取り戻し、森を抜けること。妖精王共は、本気でギルバートを殺しにかかってくれやがったが、それより少し早くギルバートは森を抜けました。賭けはギルバートの勝ちです」


 所々、妖精王たちが関わってくるところには、何やら今にも殺してやりたいと言いたげな殺気を感じる話し方だったが…考えないでおこう。


 彼はギルバートのことを愛おしそうに、そして誇らしげに語った。


「妖精と精霊は、根本的なところは一緒です。妖精は好奇心から、精霊は契約の下、力を貸し与えます。ギルバートは忘れているのでしょうが。俺は、俺の全てをかけて、ギルバートに手を貸します。それが俺らの契約ですから。ま、俺にも出来ないことがあるのですが…まぁ、それはもう大丈夫か、君がいるから…ありがとうございます」


 彼はティアに礼を言った。その後、妖精王たちを一瞥した後、その場に倒れこんだ。頭を打たないよう、ティアはすぐさま駆け寄る。


『さぁ、負けは負けだ。大人しく帰ろう』

 ギンは、冷たく他の妖精王に言う。妖精王たちは、少し悔しそうに見えた。


 そして、ギンが国を覆う氷の壁に向かって手を上げると、一瞬で氷の壁がちりじりになり、雪のように国に降る。季節が夏だから、積りはしないだろうが神秘的だった。


 その後、ライとギン以外の妖精王は森へ帰っていった。

『我らはいつでもお前たちを見ている。…幸せになれ』


 そう静かに言って。


 ティアたちは、ギルバートを客室に運んだ。国には、いつもの平穏が戻った。






─────それから一日中、ギルバートは寝ていた。

「…んっ」

「良かった」


 もう目覚めないのでは、などと不穏なことが脳裏に浮かんで、気が気出なかった。だからだろうか、彼が目を覚ました瞬間、堰を切ったように涙が溢れてきた。


「どうかしたのか…?」

 ギルバートがティアの顔を覗き込んできた。


「…バカ」

 涙を拭うが、それ以上に涙が溢れてくる。


 ギルバートは少し戸惑ったあと、ティアが泣き止むまで、ティアを抱きしめた。それを家族に見られたことは、この際だ。忘れよう。






─────その後、ギルバートに何があったのかを話した。妖精たちのこと、精霊のこと…。


 しまいには、家族達が勝手にティアの昔話まで、綺麗に話してくれていた。ティアの顔が、珍しく火を噴きそうなほど真っ赤になっていたのは言うまでもない。


 ギルバートはどんな話も楽しそうに聞いていた。


「…ローディ帝国に帰ったら、ギルバートの昔話を絶対に聞きまくります」

 感情を上下させまくったせいか、ギンの氷の壁を破壊したとき以上に疲れたティアは、不貞腐れたように話す。


 ギルバートは困ったように笑って、面白い話じゃないぞ、と言っていた。それでも、知りたいと思ってしまうのだから、恋とは本当に厄介だ。






─────帝国の者が心配しているだろうからと、ギルバートとティアは次の日には帰ることになった。


 帰る前に少し家族と話そうかと、朝早くに起きて準備をしてくれている家族の元へと向かったが、先客がいた。


 ギルバートだった。

 ティアは咄嗟に、もの陰に隠れてしまった。やましい事がある訳では無いが、なんだかその場には行くべきではない気がした。


 だと言うのに、何故かその場を離れる気にもなれず、聞き耳を立ててしまう。


「ありがとうございます。ティアのあんな楽しそうな顔を、心からの感情を表に出した姿を見るのは、本当に久しぶりでした。ギルバート様の噂を聞いた時は、大丈夫だろうかと不安にもなりましたが、杞憂だったようですね」


 父は、瞳に涙を浮かべていた。王としてでは無く、父としての姿がそこにはあった。


「姉様のこと、よろしくお願いしますね。お義兄様」

 フレアも満面の笑みを浮かべていた。


 不意に、また涙がこぼれる。聞いていたことを、泣いたことを悟られないように一呼吸置いてから、ティアはみんながいる場所まで歩いていった。




「お世話になりました。また来ます。ティアを連れて」

 ギルバートは最後にそう言い、深深とお辞儀をした。そうして、私たちはローディ帝国への帰路についた。


 国に帰る中、ギルバートはポツリと「良い家族だな」と言ったのをティアはしっかりと耳にした。




───── ギルバートの言葉に、自然と笑みが浮かんでくる。


 さあ歩んで行こう。あなたと共に。

 二人、手を取り合って、明るい未来へと歩みを進み続けよう。


 両国は、いがみ合っていたのがはるか昔のことのように、もともと無かったかのように、仲良くなった。

 それから何年後か… ギルバートとティアは、平和の象徴としていつまでも愛され続けている…。

なんか無理やりな感じもあるかもですが、無事終われたので良かったです。

読んでくださって、ありがとうございました。

名前を変えたのですが、変わっていないところがあるかもしれません。御了承下さいm(_ _)m

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