表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魚の杜の巫女  作者: 楡 依雫
水鏡篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/270

六十三、子生みの朝

 亜耶の夢に、(みお)が出た。腹が引き絞られる様だ、と訴える澪に亜耶は、今日が子生みの日だと告げた。益々不安そうな様子を見せる澪に闇見(くらみ)をして遣ると言って、其の侭目覚めた。中途半端な夢だ、其れが起きた時の感想だった。

 亜耶は夢の中で闇見を終えられなかった事で、朝餉の時も心此処に在らずだ。大蛇(おろと)が心配して、何事かと問うて来る。

「今日、澪が子を生むみたいなのだけど…」

 夢が、半端に途切れて仕舞った。難産で無い事は解って居るけれど、不安でならない。

「珍しいな」

 闇見を終えられなかったのなら、起きて直ぐ其れをして仕舞うのが亜耶の性格だ。何が亜耶を止めているのか。聞かれても亜耶は、答えられなかった。

「黒い、針…」

「あ?」

「あれが間違って澪に向くかも知れないと、此の前言ったの」

 大蛇が、顔を顰める。真耶佳(まやか)に向けられた僻みの針は、孕みが公になった事で増しているからだ。

「した方が良いんじゃ無えか、闇見」

 大蛇からこう言うのは、珍しい。以前、心が宮に行っていると咎められて以来だ。

「夢では、何か邪魔が入ったのかも知れない」

「宮での何かか」

 そう、と亜耶は頷く。宮は正しく綿津見神の巫女としての霊力が、発揮されない場所だ。大元の国つ神を違える所為で。

「もし、あちらの(くに)(かみ)が澪の子生みを阻むなら…」

「尚更見た方が良い、亜耶」

 大蛇には言われたが、見るべきならば()うに見えて居る筈なのだ。今まで無かった事に、亜耶は戸惑う。

 其処に、がたがたとかなり急いて御館(みたち)(きざはし)を上る音がした。舎人(とねり)を遣り込めるとは、何者なのか。大蛇が身構え、亜耶は其の後ろに隠れる。

「亜耶は居るか!」

 響いたのは、巫王(ふおう)の声だった。御館から走って来た様で、ぜいぜいと息をして居る。

「お父様、何事です!?」

 問うても、巫王は直ぐに喋れる状態では無い。亜耶は碗に水を入れ、巫王に飲ませた。

「澪、澪が…」

「今日、子生みの様ですね」

「そんな、悠長な物じゃあ無い…!」

 何とか其れだけ言って、巫王は息を吐いた。あちらの国つ神が…と息も切れ切れに言う。

「国つ神が、どうしたって!?」

 大蛇が、巫王に掴み掛からんばかりの勢いで問う。

綿津見(わたつみ)の姫を害する者が、宮に来る、と…」

 巫王が気圧されつつも、何とか答えた。亜耶は、慌てて宮の様子を闇見する。宮から階を見た瞬間、水鏡に向けて亜耶は叫んだ。

「澪、避けて!」

 届いたか、と水鏡を覗き込むも、人は映らない。ただ見慣れた宮の一角と、太さを増した黒い針が映し出されるだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ