0話 プロローグ
処女作です。楽しんでくだされば幸いです。
この頃が懐かしい・・・
このころは自分が異世界に行くなんて思ってもみなかった。
俺の名前は【太刀川 陵】
クラスのリーダー的な存在でもなく、虐められてもいないごく一般的な高校生だったが、いつも家では一人だった。親どうしは仲が悪く、両親とも不倫相手の家に行っていて滅多に家には帰ってこなかった。だが、食費と生活費の最低限のお金は月初めに家に置いて行ってくれるので苦労はしなかった。俺の行っていた高校は中高一貫校だったがいつも一人で友達もいなかった。前の席の【戸上 雄太】と俺の隣の席の【富山 由紀】は付き合っているらしい。なぜか俺はこの二人に露骨に避けられている。
俺は何をやっても平均的で運動も勉強も下手でもなければ得意でもなかった。それに比べ、雄太は野球部に所属していて運動神経がよく、学業面でもいつも学年で十位以内に入るぐらい優秀だった。由紀も学級委員長をしていて、運動は人並みだが、学業面ではいつも学年で一位、二位を争うほどだ。俺とは住む世界が違うといつも思う。
俺はいつも朝礼の前には登校し一人で本を読む。
「おはよー」
「おっはー」
「昨日のアニメ見たか~?」
「見た見た!めっちゃ泣けたな~」
「妹の記憶がもどるところな~」
いつものように俺の前と横で雄太と由紀がしゃべっていたが気にしないで本を読み続ける。
そんなことを毎日のように続けている。すると突如足元に光の円が浮かび上がった。その光が辺りを包み、一緒にしゃべっていた二人と本を読んでいた俺は光に飲み込まれた。
「なっなんだこれは!」
「キャーーー!」
雄太と由紀が叫び、俺は光から逃げようと横に飛ぶ。しかしそれは無駄な努力に終わった。そこで三人の意識は暗転した。