サフィア
あらすじ 新人航海士デシンは、ブルクを仲間に加え、故郷カルウから航海に出発。
港町ラルムに着く。
港町ラルムは、カルウよりはるかに都会だった。
ここは小国シンドの隣国である大国ソルゴの第三の都市であり経済都市で、第二の都市であり文化都市のコルゴン、第一の都市であり政治の中心のレトビと並ぶ発展を遂げていた。
「ラルムに着いたぞー」
「ここは、「真珠の採れる街」というのが名前の由来で、真珠が名品らしいな。」
「へえー。じゃあ、それを買っていくか。」
二人は、市場に向かって歩き出した。すると、広場で白いふさふさの毛をした子犬を追いかけたスマートな少女を見つけた。
「待て、サニー!
すみません!その子をつかまえてください!」
「え!?俺が!?」
あまりに突然の事なのでデシンは驚き、子犬を捕まえようとしたが、顔に体当たりをくらった。
「もう!ドジねえ!役に立たないんだから!」
「理不尽だろう…」
とデシンはつぶやくが、少女は子犬を追いかけて路地の奥へと消えた。
「デシン、大丈夫か?」
「ありがとう、ブルク。」
「しかし、あの女の子、髪に櫛を挿して、ポケットにはナイフとルーペがあったな。
探検でもするのかな。」
「すこし、後を追いかけてみるか」
少女は、子犬を路地の壁際に追い詰めていた。
「さあ、サニー。観念しなさい。早く、飼い主の元に戻るのよ。えいっ!」
少女はサニーという子犬を捕まえた。
「すみませーん」
そこにデシンたちがやってきた。
「あの、犬を追いかけて、何をしていたのですか?」
ブルクが尋ねる。
「わたしは、サフィア。この子は私の飼い犬のサニーで逃げてしまったので、追いかけていたの。」
「そのナイフとルーペは?」、とデシンが問う。
「わたし、探検家なの。このナイフは、ジャングルでの森を切り開くときや、遺跡で刻印を刻み暗号文を記録したりするの。ルーペは、小さい鉱石や植物、虫を探したり、光を集めて火を起こすときに使うわ。」
「なんのために探検しているんですか?」
「わたし、じつは母方が代々王族の血を受け継いでるという言い伝えを母から聞いたの。
でも、信じられなくて…。手掛かりが、母からもらったさっきのナイフで、王家の遺跡で使われたという手掛かり以外にも、『暗号文を彫ると秘密の場所に行くことが出来る』という言い伝えがあるの。」
「そうですか。ねえ、僕たちと一緒に旅をしない?男二人だから、用心棒になるし、夜襲われるかもって、心配はあるかもしれないけど、何よりたくさん仲間がいる方が楽しいよ!」
「俺も賛成だな。デシン。それに、旅は目的があった方がいい。ただ漫然と交易をするより、何倍も楽しくなるよ、きっと。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」