荷作り
デシンは、港に船を見に行っていたが、家に帰ってきた。
すると、母コリンが迎えに来た。
歳は、30代くらいよりも若く見え、しかし落ち着きのあるたたずまいであった。
デシンと同じく碧眼で、黒髪だが、肌は雪のように白かった。
「ついに、旅立ちの時ね。船とお金の準備は大丈夫?」
「船は、帆が三つ、櫂が三組ある船が一艘。お金は、銀貨三千クール。あと積荷は、オリーブの果実とガラスのコップをひと箱ずつ。」
クールとは銀貨であり、対して金貨はザクールと称される。
金貨の価値は、どの地域も一定の価値で取引されるが、銀貨は地域間で価値に格差がある。
ちなみに、銅は貨幣として認知されていない。
「あなたの父さんより三年も早く、私の父より七年も早く航海に出るのか。
「四方の海の覇者」として名高い父、もといあなたの祖父を超えられるかしら?」
「なに!大丈夫さ!あー、どんなものが見れるんだろう!遺跡があるかな?美しい景色があるかな?自然にあふれているかな?」
「相変わらずはしゃいでいるわね。通商許可証はちゃんととったでしょうね?奴隷売買はともかく、交易、物品調達、為替、酒場への出入ぐらいは各地で行えないと後々不便になるわよ。」
「いけねー!忘れてた!いってきまーす!」
こうして、デシンは街へ出かけた。
「通商許可証をとるなら、総督府か組合会館だな。」