5話 佐倉
「えーっと。風間は机があるだろう。一番後ろの廊下側のところに座れー
・・・と、佐倉は・・・席を持ってくるから早乙女の横に立っておけ」
今のあたしの席は一番後ろ。たまたまクラスの人数が奇数だったことであたしは一人席。
窓側の席だから風間さんとは離れてる。
あたしの前の席にいるのはなんとたっちょん。結構いい席・・・だったけど・・・
「これで朝の時間は終わりだー。一時間目までに佐倉の机持ってくるからなー」
先生が教室から出てふっと佐倉のほうを見るとこっちをじっと見ている。
「お前が早乙女・・・」
「え?あぁぁ、そう。よろしくね」
そういうと佐倉はふいっと向こうを向いてしまった。
えぇぇぇぇえぇぇぇぇ無視ですかぁ!?よろしくぐらい言えばいいだろぉぉぉ!!!
「・・・夢子。落ち着けよ・・・」
「へあ、たっちょん!」
いつの間に、ていうかあたしそんなに表情に出てた!?
「佐倉竜也、だよな。俺は坂井達哉。同じたつや同士、よろしくな」
「・・・・坂井、達哉・・・」
佐倉はたっちょんのことをじーーーーーーっと見続けてる。
さすがのたっちょんも少し苦笑いになってきた。
「さ・・・佐倉?」
「あ・・・よろしく、坂井」
たっちょんとあたしは顔を見合わせる。
っていうのもそういった佐倉の顔が、
寂しそうで、悲しそうで。
まー、ただ人見知りが激しいだけかもだけど。
「「「「さーくーらーくん❤」」」」
「え!?」
クラス中の女子どもが束になってかかってくる。
「ねぇねぇ神楽高ってどんな感じ??」
「好きな食べ物はナニ??」
「彼女いる――???」
「カッコいいね!!!モデルみたい❤」
ひとつひとつの質問も覚えられないくらい何個も何個も質問が重なる。
あたしとたっちょんは逃げ出したけど、佐倉はその女子たちに囲まれまくっている。
「ねーねー、佐倉君のお父さんって何してるの???」
そういってその女の子が佐倉の腕にさわる。
今までのどんな質問も無視して、たかる女子も振り払わなかった佐倉がいきなり女の子の手を払った。
「・・・邪魔。離れろ」
その顔はさっきあたしとたっちょんに見せた顔とは全然違う、嫌悪と苛立ちがこもっていた。
「な・・・何よ。意味わかんない!!」
その言葉をきっかけに周りの女子たちが離れていく。
佐倉は、あの言葉にいらだったのかな。それとも触られたこと・・・?
「佐倉、あのさ・・・」
「おーい、机を持ってきたぞー」
あたしの言葉は先生によってさえぎられる。
ホントのことは、何もわからないまま。
the少女漫画に出てきそうな人 佐倉。