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ヘヴンズクエスト  作者: じぇいたそ。
2/2

はじまりの風

――――――――――目覚めなさい――――――――――



――――――――――あなたはこの世界の希望の子――――――――――



――――――――――魔王を倒すのです――――――――――



――――――――――仲間を集め、剣を目覚めさせ、魔王を倒すのです――――――――――




一人の若い男が目を覚ました。


そこは木でできた小さな家のようだった。


若い男は木でできた素朴なベッドに寝かされていた。


家の奥から、年配の男が現れる。


「おお、目が覚めたかい。あんたが森の奥で倒れていたのを見つけたんだが…」


若い男はベッドから、体を起こすが後頭部に痛みが走る。


「まだ動かさん方がいい。あんた頭から血を流して倒れていたんだからな。

…ところであんたは王都の人かい?」


「僕は…」


若い男は言葉に詰まる。


必死に自分が何者か思い出そうとするが、どうも思い出せない。


「自分が何者か言えないのか?見るつもりはなかったんだが、腰に差していた剣の紋章…王都アーベル国のものだろう?」


ベッドに立て掛けるようにおいてある剣を指さしそういった。


「すまない…何も思い出せないんだ。自分が何者かも、何故ここにいるのかも。」


若い男はしばらく考えたがやはりわからなかった。


この答えに年配の男は怪訝な顔をして、しばらく間をおいて話した。


「頭を強く打ってたみたいだから、記憶が飛んでしまってるのか…

名前は?あんた名前は思い出せるかい?」


「僕の名前…名前は…。…ノア」



結局思い出せたのは名前だけであった。


年配の男はアンドレと言い、この小さな村トニ村の村長であった。


村長の計らいで怪我が治り落ち着くまで、トニ村に滞在することとなった。


本来は怪我のこともあるので寝ておくべきだが、ノアは村長に無理を言い剣を持ち外へ出た。


何故だかわからないがじっとしていられないノア。


何かがノアに動けと語り掛けてくるような感じだった。


行くあてもなく、ふらふらと村内を歩いていた。


ノアが家の角に差し掛かったときだった、ノアからは角度で見えない奥から人が現れぶつかってしまった。


ノアはよろめいただけで何ともなかったが、ぶつかった少女だろか女のひとは尻餅をつく体制で倒れた。


少女はノアと同い年か少し歳下で、焦げ茶色のショートヘアが特徴の可愛らしい少女だった。


白のブラウスに茶色のスカートという格好で、この小さな田舎村には似合わず洒落ていたのが、可愛らしく見えたのだろう。


「すまない、大丈夫か?」


少女は手にしていただろう数冊の本を落とした。


「はわわ!すみません!すみません!」


少女は慌てて落とした本を拾う。


おそらく人と接するのが得意ではないのだろう、ノアの顔を一度も見ずに一心不乱に落とした本を拾う。


「ほら」


ノアは拾い終えた少女に手を差し伸べ、少女はそれに小さな声でありがとうございますと言うとノアの手に触れる。


(なんだ!?)


少女と手が触れた瞬間、体に軽い電流が走ったような感覚がした。


少女にも同じ感覚に襲われたのか、驚いた顔をしていた。


(なんでしょうか今の感じは…?)


ノアの顔を初めて見た少女は急に顔を赤くし、うつむいた。


(お…同い年くらいの男の子!村には同い年くらいの子なんていないのになんで!

それに物凄くかっこいい…ど、どうしよう!)


「どうした?大丈夫か?」


顔を赤くした少女に心配して声をかけるノア。


「はわわ!大丈夫です!大丈夫ですから気にしないで下さい!」


そういうと少女はノアと手を離し、足早に去ってしまった。


「何だったんだ今のは…、何か体の中で目覚めたような…、無くした記憶と何か関係があるのだろうか?」


ノアはいろいろ考えを巡らせたが、わかるはずもなかった。




一方、去った少女の方も顔を赤くしたまま何が起きたか考えていた。


(…この電気が走った様な感覚…、…きっと恋だわ!)


少女が出した結論は的外れだった。




「可愛かろう?わしの娘は」


ノアの後ろから先ほどの村長がアサシンのように現れる。


「いたんですか村長?」


「ええ、ずっと」


「ていうか今の子娘って…」


「わしの一人娘のクリスだ。」


村長の話だと、今の子はクリスティナといい、16歳だという。幼い頃に魔法に目覚め、村の図書館で勉強ばかりしている箱入りだと言う。


村長はもっと大きな街に行かせて勉強させたいが、ここ最近はこのトニ村のすぐ外に凶暴な魔物が多くでるようになったのでそのことを心配して、村から出さないようにしていると話した。


(さっき感じたあの感覚…、あの子の魔法と何か関係が…)


そのときだった。


村の奥の方から人の叫び声のようなものが聞こえた。


それも一人や二人の声ではなかった。


ノアは考える間もなく声のした方へ走る。


村の入り口に差し掛かったとこだった、そこには全身が緑色で背が低く凶悪な目をした異形な生き物が十数体いた。


「なんだこいつら…」


手には木でできた棍棒や、短剣が見える。


きょろきょろして何かを探しているようだった。


「ゴブリンですね…」


クリスティナが現れる。


「ゴブリン?」


「ええ…、ずる賢いモンスターで集団で森などに棲んでいるんですが…

あまり凶暴ではなく、人のいる村などをまず襲ったりはしません」


「じゃあなんで…」


「それがよくわかりません…」


まだ大きな怪我人はでていないようだが、このまま放っておけば遅かれ早かれでるだろう。


そう考えるとノアは居ても立っても居られなくなり、腰の剣を抜きゴブリンの群れに向かった。


「危険です!戻ってください!」


クリスティナの言うことはもはやノアの耳には入っていなかった。


ノアは物凄いスピードで接近し、ゴブリンを一匹斬りって、もう一匹とまた斬っていく。


斬られたゴブリンは次々と消滅していく。


ノアには記憶がなかったが、まるで体が剣術を覚えているかのように剣を振るう。


「す…すごい、あの男の子一体…」


クリスティナはノアの華麗な剣技に見とれていたが、すぐに我に返る。


(わ…私も加勢しないと!そのために魔術の勉強してきたんだから)


1m程の長さの木の杖を取り出し、意識を集中するクリスティナ。


ボッと杖の先から火球が現れ、ゴブリンの群れに勢いよく飛んでいく。


一匹のゴブリンに当たり、ゴブリンは苦しそうにし消滅した。


二人は協力し、次々とゴブリンを倒していく。




「すごいじゃないか、今の魔法だろ?」


ゴブリンを全滅させ、クリスティナに駆け寄るノア。


「ええ…、で…でも生きているものに撃つのは初めてで…」


言葉につかえるクリスティナ。


目の焦点があってなく、体もふらふらしている。


「おい、どうした?大丈夫か?」


倒れかけたところをノアは抱え込む。


クリスティナの意識はなかった。





クリスティナが目を覚ましたのは数時間後だった。


「目を覚ましたかクリス!」


クリスティナがベッドから起きると父親である村長がいた。


「あの人は!?」


「行かなくてはとだけ言って、村を…。もう村を出ている頃じゃないかな?」


その言葉を聞くや否や、飛び起き家を出ようとする。


「お父さん!決めた!私、あの人についていく!」


えっ、とあっけにとられる村長。


「あの人もしかしたら『勇者』なのかもしれないの!」


クリスティナはちいさな頃から本をたくさん読み、その中にある魔王を勇者が倒すという半ば神話のような本に出てくる勇者とノアを重ねて見たのだろう。


最初は反対した村長だったが、クリスティナの熱心な気持ちと、自分の娘を立派な魔術師にしたいということに負け、送り出すことにした。


村の出入り口には今にも村人に見送られ、すぐにでも出発しそうなノアがいた。


「あの…ま、待ってください!」


「もう具合はいいのか?」


「だ…大丈夫です。調子に乗って魔法を使い過ぎただけですから…」


「そうか…無事なら良かった。僕はもうこの村をでるよ。これ以上はここには居られないしな」


「そ…そのことなんですが……。わ…私も連れて行ってください勇者様!」



ここから長きにわたる旅の物語は始まったのである。

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