情報界面インターフェース<天野法子>
転校生である天野法子について詳しい事はよく分からない。
ボブショートに眼鏡を掛けた彼女はいつもクラスの片隅で本を読んでるからだ。
ただ偶に授業中などで教師に指された際の受け答えのエキセントリックさが目立ってはいた。
良く言えば風変わり。
悪く例えるなら奇矯な言動の数々。
頭が決して悪い訳じゃなく(校内試験の上位者だ)、
まるで定まった式をどう表現していいか分からないかのような答え。
級友達には天然ということで理解はされていたが。
それでも体躯に恵まれてる訳じゃない。
むしろ平均的な女子の中でも小柄だろう。
そんな彼女が毅然と歩み進む。
無数の飛行物体が砲口を向ける方へと。
あ、危ない!
彼女は理解してないのだろうか?
特異な力を持つ僕達だってこの中を潜り抜けるのは難しい。
唯一の打開策は広域殲滅系の兵器か術なのだろうが、あいにくとそれも切らしてるときてる。
鳴神君は、
「くっそ……銀河特警にアクセス出来れば……
すぐにガルドレイザーを出動してもらえるのに!!」
と無念そうに呟き、
委員長は、
「デッキをカウンター主体にしてたのが失敗、ね。
全体除去も2~3枚差し込んでればこんな事には……」
と小指を悔しそうに噛んでいる。
どうやら本当に打つ手がないようだ。
ならば僕が踏ん張るしかない。
僕には状況を打破できる力はないけど、せめて盾くらいにはなれるから。
そんな悲壮な決意を抱き魔力放出の触媒であるステッキを構える。
けどそんな僕を余所に天野さんは、眼鏡をクイっと差し上げると、
「敵性反応多数を検知。
種別:魔力と火薬の複合弾
対処:次元干渉による粒子分解」
などとブツブツ呟いている。
理解の追いつかない事態、あるいは砲火による恐怖で錯乱してしまったのだろうか?
ならばせめて僕が守らないと。
弱き人の盾となる。
絶望を希望に変える。
それが先代魔法少女より受け継いだ心意気だから。
轟音と共に一斉砲火される砲撃。
僕は魔力障壁を纏い、駆け出す!
……よりも早く、
「フィールド展開。
脅威度の消失を確認」
彼女の腕から突き出た有機物の機械っぽい何か。
そこから照射された虹色のバリアー。
それによって全ての砲火は遮られてた。
皆も驚いている。
一斉に天野さんを見る一同。
でも僕はそんなことより何より、彼女の傍により容態を尋ねる。
「うあああああああ!!
あ、天野さん腕は大丈夫!?」
血は出てないも、肉を食い破ってるとかしか見えない突起物。
僕は砲火を遮った事よりもその事が心配だった。
「平気」
「だって!」
「大丈夫。私は現地人とコンタクトを取る為に遣わされた
対有機生命体用ヒューマノイド・インターフェース。
この程度の損傷は問題ない」
「でも、痛みは感じるでしょ?
やっぱり心配だよ!」
「……痛みは遮断できる」
「それでも!」
「……アナタは変。
普通ならば正体を晒した私を気味悪く思うはず。
なのにその態度は何?」
「あ~ま、だってねえ?」
僕は苦笑する。
コンバットスーツを着た宇宙刑事。
膨大な術式を練り直す、帝都守護。
術符を捲る様に構える、決闘術師。
そしてファンシーな衣装を身に纏った魔法少女。
これだけの面子が揃えば何を恐れようか?
不思議そうに僕を見上げる天野さん。
しかしその顔が苦悶げに歪む。
「ど、どうしたの!?」
「敵母艦より思念による干渉を確認。
アストラル体に膨大な損傷を負いつつある」
「ど、どうすれば!?」
「これは正直打つ手がない。
今の私にはこのフィールドを維持するのが精一杯」
汗を流しながら跪く天野さん。
言い忘れたが、こうしてる間も僕達を守るフィールドには砲弾が叩き込まれ続けてる。
くっそ~どうすれば……
苦悩する僕。
そんな僕に対し、
「はぁ~……そんなの簡単だし。
しょうがないわね。あたしが力を貸すわ」
真面目な生徒が多い中、遊び人を自称する野坂真琴は溜息をつき言った。
お待たせしました~^^: