魔法少女プリティ☆スター<霧島神楽>
異世界召喚。
ライトノベルでは使い古されたありきたりな題材だ。
何の変哲もない自分がチート能力を駆使し大活躍。
周囲には何故かご都合主義的なハーレムが形成される。
誰しもが一度くらいは妄想するネタだろう。
けどまあ、それは実現しない妄想だから楽しめる訳で。
実際こうして異世界に召喚されると茫然とするしかない。
それは共に召喚されたクラスメート達も一緒のようだ。
「ここは何処なの?」
「いきなり光ったら見知らぬ部屋だし」
「わたくし、これから習い事があるのですけど」
「俺もバイトの約束が」
「あ~こりゃアレですね」
「マジか……はぁ……」
銘々に当惑し愚痴る級友。
無理もないと思う。
地面に描かれた魔方陣。
妖しい光を放つ祭壇。
窓から見えるのは広大な都市。
しかし落ち着いて見てる余裕はなさそうだ。
何故なら、
彼方には煙をあげ倒壊する塔が視え、
上空には怪物らしき影まで視えるから。
って怪物!?
僕の驚愕につられる様に皆も騒ぎ始める。
「何アレ!?」
「ちょー燃えてるんですけど!」
「あら、困りましたわね」
「おお! 襲撃イベントなのか?」
「こりゃまたテンプレ通りで」
「またかよ……今度は救国系か?」
その声が聞こえた訳じゃないだろうが、怪物は急にこちらへ目標を変える。
落下速度を増し間近に迫る怪物。
よく観察すれば、それは有翼の石像。
俗にいうガーゴイルっぽかった。
って、冷静に考えてる場合じゃないか。
正体を晒す事になるけど、背に腹は代えられない。
皆を守る為、僕は苦渋の決断を下す。
勢いに乗ったガーゴイルが僕達の建物に拳を向け振りかざす。
まさに直前!
「ラブリ~スター☆ぱーんち★」
虹色の光と共に可憐に変身し、全身を強化し威力を高める魔力を宿した僕の拳が逆にガーゴイルを打ち砕いた。
バラバラに瓦解しぶっ飛ぶ残骸。
うん、異世界でも僕の力は失われない様だ。
強化魔法が正常に働いてるのを実感し、安堵の溜息。
全身を巡る魔力回路を再確認。
余剰魔力をきちんと収める為、可愛く勝利のポーズを取る。
ちゃんと意味があってやってるんですよ?
いや、真面目に。
その一連の流れに歓声をあげる級友。
「すっごーい!」
「まあまあじゃね?」
「本当に凄いですわ……あの服装」
「褒めるとこそこかよ!」
「でもまあ、神楽だから似合ってる」
「ヘタなヒロインより女子力あるしな」
怪物を撃破した事より何故か僕の恰好を見て驚いてるのは気のせい?
けどそれも無理はないかもしれない。
ピンクを基調としたフリフリの衣装。
腰にはお約束のステッキ。
鮮やかにカラーリングされたポニーテール。
今の僕の姿を見れば、人はある事を連想させられるだろう。
と、その前に自己紹介がまだだった。
僕の名前は霧島 神楽。
何かと多感な14歳。
アンニュイな、さそり座のA型。
ちょっと低目な身長は160cm。
食べても太らない体質なのか体重は42㌔。
部活に汗を流し、
勉強に悩み、
時に恋をして涙を呑む。
どこにでもいる普通の中学生。
でもそんな僕が抱える秘密。
そう、皆とただ一つ違っているのは――
僕は……魔法少女だったのです!
……男の娘なのにね?
ド阿呆なシリーズが始まりました(冷やし中華なノリ)。
脳みそ使わず読んでくれれば幸いです。
一応他作品とリンクしてるものもあります。