第2話 日本人の基本は年功序列だよね
11月2日は投稿できず申し訳ありません。
全校ランキング1位のガウスがいきなり渦中のチカラに模擬戦を申し込んだことにより、たちまち辺りは人だかりができた。4校中最下位の二高であったがこのガブリッテ・ガウスは四神祭ではいつも上位に食い込む猛者であった。特に昨年の黄龍祭では、一高ランキング3位の選手を見事撃破したことで一躍名を馳せていた。(もっともそれで力を使い果たし、次の試合で負けたが・・・。)
「やったじゃない、ダーリン。一位の人が戦ってくれるって言うから、勝てば一位になれるわよ。」
トルチェが横でテンションを上げているが、チカラは目の前のガブリッテをよく見る。重量感のあるその体躯からは確かに長期戦には向かないものと考える。しかし、その分、短期決戦では圧倒的な力があると解る。しかし、チカラはその分析をやめた。ここは異世界。今までの常識は通用しないと考えた方がいい。それに肩にのっている精霊は中位精霊であろう。
「わかりました、ガウス先輩。ただここだと人が多すぎて危ないので、場所を変えましょう。」
突如決まった1位と11位の模擬戦。上級生と新入生でその態度は正反対であった。上級生たちは、入学式からいろいろと調子にのっているチカラに対しお灸を、と思っていた。新入生では既にS組は別格と思われているが、今後の上下関係を考えると、ぜひチカラに勝ってもらい、自分たちの居場所を確保したいと考えていた。
午後一番に組まれたその模擬戦では二高の全校生徒が揃ったのではと思うくらいに観客が溢れた。学校の中で一番収容量を誇る第1模擬戦室では中心に三人の男が立っていた。チカラとガブリッテ。そして審判役の教師が立ち会っている。
vip席では、ヴァルトシュタイン・ガーリック校長を始め二高の首脳陣がすべて揃っている。ここだけの話、どこで聞きつけたのか、国王もお忍びで来る話も上がったが、彼の優秀な側近により、それは阻止された。本人曰く、「あの目障りな男がこれでやられれば、愛しのトルチェちゃんもきっと目を覚ますだろう。」とのことであった。
さて、そんな裏話をもちろん知らないチカラは、戦い方について悩んでいた。向こうは精霊も伴っていることを考えて、魔法も使ってくるだろう。しかし、こっちは前述のように魔法禁止である。サフィに使わせる分には問題ないのだが、表向き低位精霊なので大きな魔法は使えない。そうこうしているうちに開始の時間になった。
「ガウス~。生意気な一年なんか軽くぶっ飛ばせ~!!」
「俺たち上級生の実力を見せてやれ~!!」
ガブリッテの後ろ側からは、上級生たちが盛り上がる。
「ダーリーン!!軽く一位になってきなさい!!」
「か、仮にも私に勝ったのだ。無様な負けは許さないからな、チカラ。」
「老いぼれ共には退場してもらえ!!」
チカラの後ろからも、こっちは新入生によるヤジが飛ぶ。
「両者、準備はいいか?それでは、ただ今より、校則第8章第12条に基づく模擬戦を開始する。全校ランキング一位、ガブリッテ・ガウス。十一位、チカラ・スズキ。正々堂々、始め!!!」
開始の合図の直後、ガブリッテから伸びる水の幕がチカラを覆おうとする。チカラはそれを横に逃れ、間合いを詰める。それを見たガブリッテは口笛を吹く。
「ひゅーい!俺の水の牢獄を初手で防ぐやつを始めてみた。それにこの間合の詰め方も見事だ。」
そう言いながら、その巨躯に似合わない素早い動きでチカラの繰り出す拳をさばく。
「おまえ、体術も随分なもんじゃないか。魔法なしで俺の組手についてこれるやつを久々に見たぜ。」
そう言いながら、チカラの隙をついては、拳を放っていた。そしてチカラが間合いを取ると、すかさず水魔法が襲ってくる。結果として、チカラがジリジリと押され始めていた。魔法を放っている間はガブリッテはちょっとした休憩になる。接近戦はガブリッテ、距離が離れるとその精霊の魔法により、絶え間ない攻撃が可能になっている。
『ご主人様、私も魔法を使って、反撃しましょうか?』
ここまで、手出しをさせてもらえないサフィがチカラの苦戦に声をかける。
「いや、サフィの手出しするまでもない。それにこの試合、勝っちゃいけないしね。」
『?どういう事です?』
「まあ、すぐに分かるよ!」
ガブリッテ側の大掛かりな水魔法をギリギリでかわすと、チカラはガブリッテに肉薄する。そのまま、殴りかかるチカラを横にそれたガブリッテが足を払いそのままチカラが転倒する。そしてチカラを組み敷くと、チカラはギブアップした。
歓声、悲鳴両方の声が入り混じる中、ガブリッテは手を伸ばし、それに引かれてチカラが起き上がる。そしてそのまま硬い握手が交わされた。
「今年の一年は随分有望だな。これで俺たちもこの学校の将来が安心だ。」
「いえ、先輩方の素晴らしさをこの身で経験でき、光栄でした。また、ご指導お願いいたします。」
そして、模擬戦室は大きな拍手に包まれた。
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『で、どういう事です。ご主人様?』
「そうよ、ダーリン。サフィから聞いたけど、なんでわざと負けたのよ。」
試合後、サフィ、トルチェの二人から詰め寄られるチカラは、目を外らせながら話した。
「さっき、試合前にトイレで先輩方二人が来たんだよ。毎年、全校ランキングに組み込まれるこの時に、ランキング1位の生徒が、新入生トップに試合を申し入れ、模擬戦を見せる。しかも先輩の威厳を保つために先輩の勝利で終わらなくてはならないらしいんだって。これから先輩方からも指導頂いていく上で、上下をしっかりしておきたいんだって。」
「何よ、その悪しき風習。」
「まあまあ。で、例年は新入生はそんなに強くないから何の問題もないんだけど、今年は僕が強すぎるからってガウス先輩がビビっちゃって。このままじゃいけないからって、八百長試合を求められたわけ。まあ、僕の故国は年功序列の国だからね。しっかり従ってあげたというわけさ。」
肩をすくめながらいうチカラにトルチェはまだ納得いかないようであった。




