第2話 服を買って頂きました。
時系列的に、奴隷解放からリステルプールに着く前です。回想風です。
「ふう、ようやく国境を越えられたね。」
長い空の旅を終え、私たちが地上に再び降り立った時、チカラ様はそう言われた。
私たちは、奴隷解放していただいてから再びチカラ様の精霊の魔法で空を飛んだ。チカラ様の圧倒的な魔力、その他戦闘力にまだ少し恐怖を感じるが、でもそれよりも奴隷を解放され、ようやくあの悪夢から逃げ出せたのだと思うとすごくほっとした。現在、私たちはカルキレ帝国の国境を越えた街道を歩いている。
「あのう、チカラ君?ちょっといいかしら?」
お母様がなんかチカラ様とひそひそ話をしている。私はキャニの手を引きながらその後ろをついていく。
チカラ様はお母様の話を聞くなり、だんだんお顔が赤くなっていった。お母様のことだから、また変なことを吹き込まなければいいのだけれども・・・。
チカラ様がペコペコとお母様に頭を下げる。その横をふわふわ飛んでいた精霊がもうしょうがないといった風に肩をすくめていた。その後、精霊に慌てて迷彩の魔法をかけさせ、周りから見えなくしたチカラ様。もう国境も越えたのになんでそんなことをするのだろう。
「だって、3人ともそんなボロ布しか身にまとっていないじゃないか。」
チカラ様に指摘され、私は慌てて自分の格好を見た。今まで、緊張とその他で自分の格好なんて見ていなかった。あわてて、手で体のあちこちを隠そうとしたけど無駄だった。
「そういうことで、まずは服屋に行くから。」
私たちは結局、最初にたどり着いた小さな町の服屋に駆け込んだ。お金は気にしなくていいとのことなので、下着から一式揃えることにした。
私は試着室に入って、服に袖を通した。お母様が3着は買っておきなさいとおっしゃるので、もう2着持ってきてもらうことにした。ここの試着室は、個室型になっておりカーテンではなくちゃんとした扉で仕切られていて鍵もかかる。以前、試着室覗き魔事件があったらしく、絶対に覗けない構造になっている。
扉をノックする音が聞こえた。お母様が新しいのを持ってきて下さったのであろう。私はすぐ着られるように、最初に持ってきた服を脱いで下着姿になっていた。上下お揃いのピンクのやつである。ブラの方は縁にレースがあしらってあって、可愛い感じがする一方、お母様の勧めでカップの面積が小さいものだ。最近、ようやく大きくなってきた胸の谷間が強調されるようなデザインである。ショーツも縁がレースであしらってあり、可愛いながらも大人な感じがする。おっと、いつまでもお母様をおまたせしてはいけないわ。私は、扉の鍵を開け、お母様に微笑みながら言った。
「お母様、持ってきて下さり、ありが・・・・・・。」
なぜか、お母様ではなくチカラ様が服を持って扉の前に立っていた。私の姿を見た瞬間、真っ赤になり、なぜかカタコトでいいわけを始めた。
「ワ、ワタシハ、ワ、ワザトジャナクテ、ミ、ミルテサン二イワレテ・・・。」
そう言いながらも私の体に視線が釘付けになっている。よほど、動揺しているらしく、普段一人称が僕なのになぜか私になっている。
きっと、私も真っ赤になっていたのだろう。私はそのままチカラ様から服をひったくると、バタンと扉を閉めた。鍵も閉めようと思ったのだけれども、ふと思って、もう一度扉を開けた。そして、バチンと彼の頬を叩き、バタンと扉を閉め、鍵をかけた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
結局、その後私とチカラ様はリステルプールに着くまで気まずい雰囲気になってしまった。チラチラとこっちを見るのだけれども、私があからさまに視線を逸らすので、どうすることも出来ず、オロオロとする。その様子は、ちょっと可愛いと思ってしまった。
因みにお母様はその様子にニンマリと笑っていて、キャニはそんな事などお構いなしに、新しい土地に興味津々でキョロキョロしていたことなど、私には知る由もなかった。
偶数日投稿となりますので、次は六月二日投稿になります。
二日から第三章入学編が始まります。




