第10話 愛しい彼
チカラ様はまだお戻りになられていないのね。
私はなんかそわそわした気持ちで、自室にいた。お昼前はキャニと一緒に学校を見てきた。まさか私が行儀作法の学校に行くなんて、たとえ未だに姫としての地位があっても想像できなかったであろう。
小さい頃からやんちゃで、城内の男の子相手にちゃんばらをしては、泣かせていた。お母様は、見かけによらず厳しい方で、王族としての行儀作法の他、料理や掃除などもみっちりと仕込まれた。あの頃は、そんなことがなんの役に立つのかと思っていたが、今思えば大変ありがたかったと思う。
お母様は最低限のことさえこなせば、後は好きにさせてくれた。私は行儀作法など嫌いであったから、もっぱら武芸に励んだ。姫将軍などと呼ばれるようになるほど、上達した。
しかし、帝国との戦で自分の非力さを知った。自分の取り柄をすべて失ったような気がして絶望の状態であった。
そんな時に現れた彼は、私に生きる希望を与えてくれた。
ふふ、彼の横に並び立つのにふさわしい女になるために、自分から行儀作法を習いたいだなんて、自分の変化に私自身まだ戸惑ているみたいね。
そういえば、ここに来る途中、私たちに服を買ってきてくれたときは面白かったな。彼ってセンス全然ないし。こ、今度一緒に服を買いに行って、センスを磨いてもらわなくちゃ。あ、あくまでその為に仕方なくいくんだからね。そ、そんなデートなんかじゃ・・・。でも、私は彼の婚約者なのよね。だったら、デートしても・・・、ってダメダメ。そんなのまだ私たちには早いんだから。
キャニは、下の階でお母様に今日の事を話している。学校に行けることが本当に嬉しかったのだろう。
さて、私もそろそろお母様のところに行って夕食の手伝いをしなければ。こう見えても、煮物系の料理には自信がある。昔、私の料理を美味しいって言ってくれた女の子がいたな。そういえば、バルミカル王国の王女様だった気がする。小さい頃にあっただけなので、きっといま見てもわからないだろう。でも、王女という立場でなくなった私を見て、もし彼女が覚えていたらなんて思うだろう。私はなんとなく、今の自分に胸が張れる気がする。確かに、地位としては下がったのかもしれない。しかし、彼の妻になるという未来を思い浮かべると、たとえ、彼が仇をとらなくても私はきっと満足しているだろう。彼に合うまでは、人を愛するということは全くわからなかった。将来は政略結婚で、相手の子どもを産めば良いとだけ思っていたから。
下でお母様が呼んでる。早く行かなくては、ね。
僕が買った家は2階建てになっていて、1階が共有スペース、2階が各プライベートルームになっています。byチカラ




