第6話 坊ちゃんに花をもたせよう
飛びかかってきたそれぞれが魔法を唱え始める。しかし、ほとんどが針レベルの魔法しか撃てず、2発だけ矢が飛んできた。この程度の攻撃では躱すことは簡単だ。
「おい、何をやっている。早くアイツを仕留めろ。」
坊ちゃんがなにか叫ぶがどうにもならない。相手がまごついている間に少女を連れて逃げようとした。彼女の手を引いて逃げようとした時、後ろで嫌な音がした。思わず振り返ってしまったら、さっきの取り巻き達が全員地面を舐めていた。いや、気絶しているということからすればなめられないのだが・・・。
「よくも俺様に恥をかかせてくれたな。この代償は高くつくぞ。」
坊ちゃんが怒りを顕にし、既に臨戦態勢に入っている精霊2体を従えてこちらに歩いてくる。片方が炎の矢を放ってきた。単発だったのでさっと避けられる。
「へえ、田舎者のくせにちゃんと回避できるんだ。だけどこれはどうかな?」
坊ちゃんがさっと手を上げると、さっきの精霊が炎の矢を周囲に纏った。そして、もう一方の精霊が土の矢を身に纏わせる。色的に炎と土精霊とはわかっていたけど、なるほど、土で矢を作るのか。周囲の野次馬からは悲鳴が聞こえてくるが、これくらいは余裕で躱せるだろう。しかし、これからの平穏な学校生活を考えると、ここで勝って目立っても仕方がない。僕は、少女にヒソヒソと言う。
[僕があいつをひきつけているうちに君は逃げるんだよ。君が逃げ切れれば僕も逃げられるから。]
なぜかちょっと不満そうにしている彼女をおいて、僕はそれっぽく坊ちゃんに向かって走りだした。
「うおおおおおおーーーー!!!!」
いきなり向かってきたことに驚いた坊ちゃんだったが、すぐに落ち着きを取り戻し、撃てーと命じた。前方から、炎と土の矢が次々に飛んでくる。
ひとつ、ふたつ、みっつ・・・。そろそろかな。
ギリギリいっぱいで必死そうに矢を躱してみせたあと、わざと当たってやられたふりをしよう。やっぱり炎は熱そうで嫌だから、土の方の矢かな。上手く、当たって後方に派手に吹っ飛んでみせた。ついでにぎゃーーーーーと派手に叫んで見せて、地面をのたうち回ってみた。
「はははははーーー!やっぱり田舎者は無様だな。それにそんな男にくっつく女なんてもう興味もないな。おっと、俺様はこれから一高の願書を出しに行かなければならない。ふん、命拾いしたな。」
ようやく坊ちゃんがいなくなった。僕は叫ぶのをやめ、その場に立ち上がった。周りから野次馬たちが心配そうにこちらを見る。なんか気まずいし、早くこの場から逃げよう。そう思い、そそくさと立ち去ろうとしたら目の前に例の少女が立ちふさがった。すっごく納得いかない顔をしている。
「お互い、大事にならなくてよかったな。今度から気をつけろよ。」
そう言って、立ち去ろうとした僕の後ろ襟を掴んだ彼女が睨んできた。
「なんで、あんな無様な真似をしたのよ。あなたほどの実力ならあんな奴なんて簡単に倒せるでしょ?それにあなたの精霊はどこに行ったのよ。」
「サフィなら、先に家に帰らせたぞ。それに君は僕を買いかぶり過ぎだよ。あれでも僕は頑張ったほうだったんだから。」
主に目立たないようにすることに、とは言わないことにしておく。
「ふん、どうだか。まあいいわ。お礼に手当くらいはしてあげるから来なさい。」
そして結局、僕はまだ名前も知らない少女に連れられていくことになった。
美少女の名前が今話にも出て来なかった。てか、名前ないとすごく書きにくい。




