第2話 僕ってなんでこんなに強いんだろう?
ふう、無事に着いたか。気が付くと森の中の街道みたいなところに立っていた。とりあえず、持ち物を確認する。所持金7253万8005円、マイマクラ。うん、バッチリだ!スパイはすごく給料がいい。でも、忙しいのに加え、持ち物は支給品が多いからあんまりお金も使わないし。
ふと気づくと、目の前に何かが出てきた。全長が三メートルくらいありそうな熊だった。向こうから襲ってきた。でも、これくらいじゃ僕の敵じゃない。そう思って戦闘態勢になった瞬間、何か文字が出てきた。熊の横にパラメータがある。なになに、ビッグベアlv.30。初期の敵としては、強すぎる気がする。因みに、僕の横にもパラメータは出た。チカラlv.72。なんで僕、初期でこんなに強いんだろう。まぁ、いい。とりあえず、適当に戦ったら相手のhp.と思われるパラメータが0になった。所要時間五分。
一息ついて、さあご飯が食べられると思った僕は致命的なミスに気が付いた。鍋がない。これでは熊が食べられない。熊は熊鍋に限るのに。悩んでいると、目の前に文字が出てきた。
(異世界はいかがですか?私ちゅーとりあるです。しばらく、この世界に慣れるまで、折々で役立つ情報をご案内していきますね。目の前のビッグベアの肉ですが、一応、ゲームの世界のようなものなのでアイテムボックスとか使えますよ?そこにパッとしまえます。心の中で、“めにゅー”と念じて見てください。)
ふむふむ、こういうゲームはやったことないが、そういうものなのだろう。
“めにゅー”
と念ずると色々な項目が出てきた。とりあえず、“アイテム”を選び、“しまう”を選ぶと、選択肢に“ビッグベアーの肉”とあり、それを選ぶと熊がパッと消えた。なかなか使い勝手がいいらしい。
“めにゅー”には他にも色々な項目がある。一番上は“チカラ”となっている。そこを開くと、僕の個人情報が書いてあった。
チカラlv.72
攻撃力453
防御力377
魔法力499
魔防力451
瞬発力894
知力1542
体力3589
??6588
職業:無職
いや、無職っていったい。確かに無職だけど…。次に“アイテム”とある。その他、いくつか“???”があり、最後に“設定”となって終わってる。まだ、始まったばかりで解らないことが多い。
ひと通り確認したら腹が減っているのに気が付いた。やっぱり、街を探して何か喰った方がいいらしい。残念ながら、マップとかは持ってないので、そのまま街道を歩いていく。
日が暮れるまで歩いたが、結局森を抜ける事はなかった。野宿は久々だ。昔やったサバイバル訓練では、Tシャツに短パンのみでアマゾンの奥地に連れて行かれたりもした。確かあの時は参加者20名で、無傷で帰れた者は3人だけだったな。それに比べればまだましだろう。因みに、今日の収穫は“ビッグベアの肉”が8個に“ラビッターの毛皮”を60枚であった。アイテムボックスと言うのはやっぱり便利な物だと実感した。好きなだけ狩っても手を煩わせないので嬉しい。とにかく、街道の隅っこに寝っ転がり、目を瞑った。