第15話 サラディナーサの回想
今回、サラディナーサ視点での話です。
因みに、キャニエル→キャニ。サラディナーサ→サラ。です。
誤字、修正しました。
最後に、少々加筆しました。
最初からよくわからない人だった。
私たちは、このカルキレ帝国と戦争になった時、既に死を覚悟していた。かの王弟エルバトーレに望まれたその瞬間からもうこの国の未来は決まっていたのだ。しかし、せめて一矢報い、壮絶に死のうと先陣を願ったのに、結局何もできないまま敵に捕まった。あまつさえ、そのせいでお父様は死にお母様やキャニまでも無様な思いをさせてしまった。
この首に付いている奴隷の首輪さえなければすぐにでもこの生命を絶ってしまえるのに、それさえも許されないのは本当にもう、悔しさを通り越して悲しくなってしまう。
やがて、私たち3人は奴隷オークションにかけられた。その後、いろいろあって、この少年(とは言っても私より少し年上な感じがする)の所有物となった。正直、今頃あの変態エルバトーレのものになっていたら、私たち3人はこのように穏やかな時を過ごせていなかったであろう。その点でも、彼には感謝している。
しかし、彼は不思議な少年だった。あの歳で精霊と契約し、何十円という大金をいとも簡単に支払えるほどの財力を持っている。どういうつもりで私たちを買ったのだろう。慰み者にするわけでもなく、まして私たちのこれからを考えてくれて、あっさり奴隷解放を提案してきた。しかも、一つしかないベッドを私たち3人に譲り、自分は部屋の外の硬い床で雑魚寝をするらしい。間違っても奴隷に対する行動じゃない。
彼が出ていってから、私たち3人はしばらく黙ってしまった。
最初に口を開いたのはお母様だった。
「それで、あなた達はどうしたい?」
ふと横を見るとキャニは、久々の柔らかいベッドにほっとしたのか、もうぐっすりと眠っていた。必然的に答えるのは私になる。
「そんなの、決まっているでしょ。奴隷を解放してもらってそれでおしまい。ドルカニア再興のために生きていくわ。」
「それでいいの、サラ?」
お母様は何を言い出すのだろう。せっかく、私たちを解放してくれるって言ってくれているのに、まさか本当に奴隷になりたいとか、・・・。いやいや、お母様に限ってそんなことは。私たちはこれから3人で生きていくんだから。
「いいわ、もう一晩もいらない。今、あの少年を呼んできてこの場で解放してもらって晴れて自由の身よ。」
そう言って彼がいる入り口の戸に近づいた私は、戸の向こうで彼が何か話しているのが聞こえた。
「やっぱり、安心させて私たちを襲うつもりね。お母様、キャニを起こして!!早く逃げるわよ。」
私は、声を殺してお母様に言うと、更に聞き耳を立てた。すぐに、お母様も隣で聞き耳を立て始める。どうやら、あの精霊と話しているようだ。きっと、私たちをこのあと、どうするか打ち合わせているんだろう。
次話、ようやくチカラくんの昔話です。
 




