01話
大きな屋敷が並ぶこの閑静なこの町に、いつものように怒鳴り声が響く。
「まったく!!いつになったらあんたは仕事をちゃんとできるよるになるんだい!」
(あ〜ぁ、またこのばあさんの説教が始まったよ・・・)
まったく、このばあさんは俺をいじめるのが好きらしい。
俺は割れた(実際は割った)壺をジェシーのばあさんの怒声を聞き流しながらちりとりに集めていた。
高そうな絵や壺が飾ってある廊下。床には赤い絨毯が敷いてあり、これもまた、高そうである。
この綺麗な廊下の装飾品を少し前に壊してしまったのだ。んで、その音を聞きつけて説教大好きばあさんが駆けつけてきたのである。
「ゲイル!あんた全然反省してないだろ!えぇ!まったく、また大切な壺を割って!!」
「あぁ〜、反省してますよ。いや、本当に。すいません。どうもマヌケなもんで・・・」
本当は全然反省なんてしていないし、する気もない。謝ってる気なんてサラサラないが、
人生謝って損することなんて、まぁ、あんまないし。
「まったく!謝れば済むなんて思ってるんじゃないでしょうね!?」
「何を言ってるんですか、そんなことないですよ」
実際はその通りだが正直な事を言ってこの説教ばあさんにエサを与える事もないので、適当に答えておく。
「ったく!あんたは何考えてるかさっぱりわからないよ。まぁいい。この壺代。あんたの借金に加算しておくからね」
この壺代分の借金が増えようが、現在の借金分だけで一生働いても返せないんだ。
今更借金の額なんて気にしてらんねぇ〜。
俺は怒鳴り散らすだけ怒鳴っておそらくストレス解消してであろう説教ばあさんが去るのをボォーと眺めていた。
明らかに俺に非があるのだが、どうもやる気がでなくていつも『謝罪の心』が沸いて来ないのだ。
まったく、自分で言うのもアレだがかなりひねくれている。
俺は適当にボォーとしたあとに、割れた壺の片付けを再開した。
さてさて、1個の壺の片付けに小一時間ほど掛けて俺は庭に出た。当たり前の事ながら
、使用人の仕事なんてまったくの無視である。
そう、俺を一言で表すなら『無気力』。俺の体の構成は80%が『無気力』で出来ていて、後はまぁ人間として生きるために必要な機能が備わっているのだろう。
「・・・・・・・・・・・」
こうしてボォーとして空を眺めるだけでなんだか空と一体化しているような気分になる。
別に空が好きなわけではないが、「なんとなく空はいいなぁ・・・」なんて気分に浸るのが好きなのだ。
「はっは!相変わらずボォーとしてるなぁ」
隣から若い男の声が聞こえてくる。髪は金髪の短髪。身長は180cmでガタイはまぁ、なかなかだ。
「お前、知ってるか?人間はそのボォーとしてる間に脳細胞が死んでいくんだぜ?」
常にラフな格好、一般人オーラ全開の俺の友人は、俺の脳細胞の心配をしてくれてるらしい。
「ん?お前の脳細胞の心配をしてるんじゃなくて、お前がどんどん阿保になって俺にお前の仕事が回ってくるのを心配してるんだ」
「・・・・・・・・」
まぁ、こういう奴だ。
「ところで何してんだ?仕事は?サボってんのか?」
「・・・ゲイル。俺はお前と違ってサボってるんじゃなくて、仕事を終らして休みに来てるんだ。一緒にされるのはマジ勘弁だな」
「・・・あ、そ」
俺はカイに興味が無くなりまた空を眺める。
俺とカイは物心つく前からこの屋敷にいた。生まれてすぐ捨てられた俺達を、施設の管理者が発見して保護してくれたのだ。
その施設を訪れた、現主人に買われて今俺はこの屋敷にいる。
俺達には母親も父親も親戚も居ない。ただ、兄弟はいる。俺とカイは血は繋がっていないが、兄弟なのだ。
俺がボォーとしてる間になんとなく昔の事を思い出していたら屋敷の中から声と言う名のグレネード弾が飛んできた。
「カイ!カイ=アーガル!居ないのですか!?」
説教ばあさんの声は庭の外まで聞こえてくる。俺は咄嗟に庭の角に生えている太い木の裏に隠れた。
「はい。ここに居ります」
カイは俺達がさっきボォーとしてた場所から動かず、返事をした。
「こんな所に居たのですね、カイ。頼みたい事があるのよ」
「はい、なんでしょうか?」
「ゲイルがまたどっかに行ってね。ゲイルの仕事が溜まっているのよ。やってくれないかしら?」
あ、そういえば俺はサボってたんだった。
カイは俺の方をちらっと見てから説教ばあさんの方に向きなおし「・・・はい」と、トーンを低めに返事をして、屋敷に入っていく説教ばあさんの後について屋敷の中に入ってった。
ドンマイ、カイ。




