表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/33

楽しみにしておこう。

「オッケー取れたから、荷造りするか」

 俺は自室へ行き、スーツケースを取り出す。

「一応、2日分の着替えとジャージを用意」

 何故か独り言が出てしまう。大愛と出かけるのをそこまで楽しみにしているんだろうか。

「あとはケータイっと」

 ケータイ、充電満タン確認。

「あ、俺は大愛の番号知らない……」

 その時、俺のケータイに着信。

「知らない番号だな。誰だ?」

 俺は電話に出る。

「もしもし」

『大愛よ』

「お、大愛! どうして俺の番号を知っているんだ?」

『あなたの寝言はケータイの電話番号よ』

「マジかよ……」

『先生ですら知っているわ』

 絶句……。

『とにかく、10時に迎えに行くからその頃には外に出ていてね』

「分かった」

『じゃ』

 電話を切られた。もう少し喋りたかったな、と思う自分が心のどこかにいる気がする。

「とりあえず、大愛の番号を登録!」

 ラッキーだ。

「えっと、今が6時だから、あと4時間か……」

 晩飯と風呂だな。

 台所へ行き、適当にチャーハンを作る。プロの料理人を意識。

「よし、完成!」

 即行食べる。1人前5分で完食。

「次は風呂だ!」

 チャーハンを作っている間に沸かしてある。2分で洗い、3分浸かる。計5分。

「チャーハン作るのに時間かかってもう7時か。あと3時間だな」

 それから俺はマンガを読んだり、ゲームをしたり、テレビを見たりしていたはずだが、全く記憶にない……。どうしたものか……。

「おぉ! やっと9時50分! 外に出よう!」

 俺はスーツケースを持ち、外に出る。ちゃんと家の鍵もかける。

 そこへケータイにまた着信。大愛からだ。

「もしもし。もう外に出てるぞ」

『知っているわ。あと10秒で着くから』

 そう言うと電話は切れた。10秒だったら電話しなくてもいいんじゃないか?

「お、来たか?」

 そして1台の車が俺の家の前に停まる。リムジンだった。この住宅街にどうやって入ってきたんだろう。謎だ。

「…………」

 俺は声が出ない。

 リムジンの運転席からスーツの男――というか爺さんが降りてきた。俺に一礼してきたので咄嗟に礼をする。その爺さんが後部座席のドアを開ける。そこにいたのは、

「大愛……か?」

 いつもとは雰囲気がまるで違う大愛が降りてきた。でもこいつは確実に大愛だ。間違いない。

「神林君、待った?」

「いや、大丈夫だけど……」

「じゃあ行きましょ」

「う、うん」

 俺は大愛につられてリムジンに乗る。途轍もなく広い。これが車か?

「では、お嬢様参ります」

「お願いします」

 大愛が爺さんに満面の笑みでお願いする。俺もこんな風にお願いされたい、とか思ってしまった。

 車が動きだす。

「なあ、さっきの爺さん誰だ?」

「OESの1人、佐々(ささはら)さんよ」

「OES?」

「大愛家専属執事――Oai Exclusive Stewardの略よ」

 何だか難しそうなので訊くのをやめた。

「わたしには佐々原さんがついているの。お父様は大川(おおかわ)さん、お母様は蝦夷森(えぞもり)さん」

「川と森と原か……」

「そうね。それには気づかなかったわ。流石は神林君ね」

「いや、褒められることじゃないんだけど……」

「これから、空港へ行くわ」

「空港?」

「そう。そして大愛家自家用ジェットで飛ぶから。飛行機は大丈夫よね」

「大丈夫だけど……。本当に自家用ジェットなんてあるのか……」

 大愛は笑って何も言わない。

「飛ぶってどこへ?」

 大愛は笑って何も言わない。

「あの、大愛さん?」

 大愛は笑って何も言わない。

「怖いですよ」

 何も言わない。

「ま、まあ。楽しみにしておこう」

「それがいいですわ」

 やっと喋ってくれた。ほっとした。心の底から。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ