俺は俺は俺は俺は……。
「ねえ、神林君。連休中に一緒にどこか行かない?」
今日は卯月末から皐月初めにかけての大型連休、つまり黄金週間。所謂、ゴールデンウィーク。日本中が歓喜するその連休の前日。俺は、また大愛と下校していた。もう慣れた。
「連休って言っても、3日は不治の病を持つ先生がエコ活動と称してみんなを学校に集めるんだろ。その所為で今年はどこにも行けないんだ」
まあ、毎年どこにも行ってないけど。
「何言っているの? 行かない人もいるわよ」
「は?」
「先生も事情がある人は来なくてもいいって言ってたし」
「え?」
「サッカー部、野球部、バスケ部、卓球部、テニス部、バドミントン部の人は練習試合で行けないし、吹奏楽部は音楽の高鍋先生が個人練習をやるようにって言って誰も家から出れないらしいわ」
吹奏楽キツっ! 俺だって流石に家からは出るぞ。
「美術部は博物館での絵の博覧会に行くみたいだし、行くのはわたしと神林君だけよ」
「えぇ!? じゃあ、谷沢は!? あいつも無所属だっただろ!」
「谷沢君は塾に泊まりこみで勉強だって」
そんなことしても俺より成績下だろ……。可愛そうなやつだ、と同情はしない。
「じゃ、じゃあ、柳下と兵法は!?」
「学校情報部の定例会議に出席するらしいわ」
「そういえばあいつら、そんな部活だったな……」
「本丸君と喜屋武さん、若戎君と真田さんはデートですって」
「へえ、デートね」
羨ましくなんかないぞ。うん!
「明月院さんはフランス旅行、小迎森さんはオーストラリア旅行、川奈部さんはカナダ旅行らしいわ」
フランス、オーストラリアはともかく、カナダってどこか見に行くところあったか? 俺が知らないだけか?
「流川君はカヌー体験、洞井君は鍾乳洞探索に行くと言っていたわ」
名前とまんまじゃねえか!
「人魯と独島は!?」
「人星さん、人西さんと一緒に人間観察」
「はぁ!?」
どんな趣味してんだ……。しかも四人でって……。
「あと残ってるのは……」
「わたしと神林君だけよ」
「ぐはっ!」
俺は倒れそうになる。足が何とか踏ん張ってくれた。だが、頭痛がする。
「よし! 一緒に出かけよう! なんとしても篠原先生から逃げなければ!」
「もう、準備してあるから着替えを用意しておいて。10時くらいに向かえに来るからね。じゃあね」
「え、いや、どこ行くの?」
大愛は答えることなく走り去って行った。丁度俺の家の前だった。
「今日からって、父さんと母さんが許すはずないよな」
家に入り、一応連絡を取る。
『もしもし? 神林だが』
「もしもし? 父さん?」
『おお、どうした?』
「今日から、友達と遊びに行っていい?」
『いいぞ』
いいのかよ!
『むしろ丁度いいくらいだ』
「丁度いい? どういうこと?」
『母さんにも訊いてみるんだな。じゃあ」
切られた……。何が丁度いいんだ?
母さんにも電話してみる。
『もしもし、神林です』
「あ、母さん? 俺だけど」
『ん? どうしたの? デート?」
何故、分かるんだ?!
「ちょっと違う。友達と今日から出かける」
『いいわよ』
いいのかよ! こっちも即答か! 息子を何だと思ってる!
『母さんも父さんと一緒にゴールデンウィークを使って旅行に行くから、お爺ちゃんにあんたを預けるつもりだったの』
「なにィ!?」
おいおい、聞いてないぞ!
『あんたが出かけるんだったらお爺ちゃんに預けなくていいわね。助かったわ』
何だ、この親は……。
『じゃあ、行ってらっしゃい』
電話を切られる。
「一応、交渉成立か?」
交渉するまでもなく、大丈夫だったかもしれないが……。
「それにしても、さ」
大愛と一緒、か……。
「俺は俺は俺は俺は……俺は俺は俺は俺は……」
何だか気分が高まる。
「超嬉しいぞー!!!!!!!!!!!!!!」
俺は叫んだ。思いっきり。
神林君の雄叫びが出ました。今回はちょっと続きます。どこに行くのか分からない大愛とのデート(?)どうなるのか分かりませんが波乱万丈間違いなし! 次の更新まで、次の更新からも、応援よろしくお願い致します!