表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/33

グモングモン。

「確かに、俺はお前が泊まることを許可したけど」

 許可してしまった。

 大愛の「ここに泊まります」宣言から30分後、和歌森という女の人が来て、大愛の服を持ってきた。その5分後、大愛が風呂に入った。その間、俺は漫画机を撤去して大愛の布団を用意。30分後、大愛が風呂から戻ってきて、今。

 ピンクのパジャマを着て、椅子に座っている大愛と、ベッドの上で胡坐をかく俺。

「空いてる部屋はないから、ここで寝てもらってもいいか?」

 普通はありえない。まず、生徒が他の生徒の家に外泊することは校則で禁止されてる。それに、女子が男子の家に泊まるというのは明らかに常軌を逸している。俺の人生において初だ。

 ピンクのパジャマ可愛いな、おい。

「あら、廊下でもいいのに」

「さすがに女子を廊下に寝かすなんてできないだろ」

「わたしではなく、神林君が廊下でもいいのに」

「ああ、そういうことか」

 そういうボケだったのか。俺としたことが、うっかり気付かなかった。

「はっ!? なんでだよ! おかしいだろ! ここは俺の家で、俺の部屋だぞ!」

 数秒の沈黙。

「……4点」

 大愛の採点。

「4点満点で?」

 マジかよ。俺満点じゃないか。

「勿論、100点満点中4点よ」

 やっぱりか……。そうだと思った。

「むしろ、0点のほうが清々しいんだけど」

「そう? では、0点で」

 神林東示、ツッコミテスト 0点。追試無し。留年決定。

 

 閑話休題。

「ここで寝るのはいいけれど、神林君、変なことしないわよね」

「へ、へ、へ、変なこと?! すすすす、するわけないだろ!」

 つ、つーか、変なことって何だしー。俺そんなん知らねーしー。ああ、破廉恥なことって意味? エロいことって意味? しないしない。俺がそんな人間に見えるかっつーの。大体、そんなことしてたらお前はもうパジャマなんか着てねーよ。その姿見たら一瞬でスイッチ入るっつーの。

 心なしか汗をかいている。

 今年は暑いなあ。まだ5月だぞ、おい。

「そうね、神林君はそんなことしないわよね。愚問だったわね」

「そうそう。グモングモン。お前は安心して寝なさい」

 保証はしないけど。

「さて、勉強の続きをしましょう。と思ったのだけれど、神林君の机がないわね」

「そうだな。だから、俺は漫画を読む。大愛は思う存分勉強しなさい!」

 大愛が何か悩み始める。俺は読む漫画を決めるため、本棚を物色。

「思いついた!」

 突然大愛が叫ぶ。叫ぶって程じゃないけど。俺が驚く程度に。俺が驚いた拍子に大切な漫画を落とす程度に。

 そしてその漫画の角が足に直撃。

 痛いけど、泣かない。俺は男だ。無言で漫画を拾って、本棚に戻す。

「大丈夫? 痛くなかった?」

「は? 何の話? 漫画? ぶつかったみたいだね。でも大丈夫大丈夫。全然痛くないから」

 超痛いけど。

「で、それはそうと、何を思いついたんだ?」

「次は英語なのよ」

「あっそ。やればいいだろ。俺と、俺の漫画に影響を与えるな」

「神林君の漫画のことは知らないわ。それに神林君の漫画ではなく、神林君の足への影響のほうが大きいわよね」

「だから、足とは何のことだ。全然痛くないと言っているだろう」

 あの程度の痛み、男ならば我慢できる。ハードカバーだったらヤバかったけど。漫画しかないから、その心配はない。

「英語だから、一緒にやらない?」

「ん?」

 どういうこと? 詳しく。

「とにかくこっち来て」

 言われた通りにする。

 そして、大愛は椅子の右半分にずれる。

「神林君、座って」

 大愛が俺を見て微笑む。

「え、これって、座ってって、え、あの、えっと……」

「ほら、こうやって」

 大愛が俺の腕を掴み無理矢理座らせる。体の左半分は椅子から出ている。そして右側では大愛とピッタリくっついている。

「これでいいわね。勉強しましょう」

 そう言って、英語の教科書とノートを取り出す。

「まずは今日の授業の復習からね」

 俺と大愛は英語の勉強を始めた。

いつだったか、「地獄の勉強会編」なんて言っていたような気がします。

だけれども、これは地獄じゃなく、普通に天国じゃないか。

神林羨ましいな。俺と代われ。なんて思います。気が小さいのかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ