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ちげえよ。

「えっと……母さん? 帰ってたの?」

 マズいマズいマズいマズい。この状況はヤバい。

 母さんがいること自体はなんてことないけれど、大愛もいることがマズい!

「今帰ってきたとこー」

 母さんがスーツを脱ぎながら言う。

 思春期の子どもの前で服を脱ぐな!

 そんなことはさておき。

 母さんが帰ってきたことに気付かないなんて、俺としたことが……。大愛との会話に浮かれすぎたか。

「ご飯食べたー?」

「いや、まだ。今食べようと思ってたとこ」

「ふーん。何食べる? 今日は久しぶりに私が振る舞うよ」

と言いながら振り向く。そしてようやく母さんが大愛に気付く。

「あら? その子はどなた? 彼女? それとも妹?」

「妹!? 母さんは俺以外にも誰か産んだ記憶があるのか!?」

 なにそれ、生き別れ? そんな過去があるのか!?

「初めまして、お母様。神林君のクラスメイトの大愛と申します」

 お母様って、何それ。それに『クラスメイトの』を入れることでサラッと母さんの彼女説を否定してるし。

 あーあ、やっぱここまで行ってもクラスメイトかー。さっき決めたように、告白はするべきかなー。それくらいはしておくべきかなー。

「初めまして。神林の母です」

 母さんがにこやかに言う。にこやかってより、ニヤニヤって感じ。

「ちょっと、東示ちゃん、来て来て」

 手招きされる。部屋の隅に連れて行かれる。

「ねえねえ、あの子は彼女? それとも姉?」

「姉はねえっての」

 二度も同じネタが通用するかよ。

「さっきあいつが言ってたろ。クラスメイトだよ。今日は勉強会してたの」

「ふーん?」

「……なんだその顔」

 母さんには失礼だが、キモイよ。言わないけど。

「実は東示ちゃんが連れ込んだんでしょ」

「はあ?」

「とぼけちゃってー」

「ちげえよ。あいつが考査が近いから勉強会やろうって言ってきたんだよ」

 それに、と続ける。

「俺にクラスメイトの女子を家に連れ込む程の度胸があると思ってんの?」

 自分で言って自分で傷つくタイプの台詞。

「そうねえ。そういう子を産んだ覚えはないわねえ」

 親に言われて自分が傷つくタイプの台詞。

「ま、東示ちゃんが言うように、『勉強会』ってことにしておくわ」

 母さんのウインク。何気に上手い。

 そしてやっと母さんから解放される。

「大愛ちゃん、だっけ? そこの椅子に座って」

「はい、わかりました、お母様」

 母さんと大愛がテーブルを間に挟んで椅子に座る。

 えっと、飯は?

「あ、そうそう。私は大愛ちゃんとお話しするから、東示ちゃんご飯作ってねー」

「え……さっき振る舞うって言っ――」

「ねえ大愛ちゃん――あ、大愛ちゃんって呼んでいいかな?」

「勿論いいですよ、お母様」

「俺のことを『東示ちゃん』って呼ぶのはやめ――」

「大愛ちゃんは将来、なりたい仕事ってあるの?」

「なりたい仕事はあるのですが……」

「俺は石油王になって生涯楽して過ご――」

「『あるのですが』? なれない理由があるの?」

「ええ……。わたしはなりたい仕事に就くことなく、ただ死んでいきますよ」

 なんかブルーな話になってるし!? いちいち母さんは俺の台詞の邪魔をするし! どうして俺は仲間外れにされてんの? 村八分って言うんだっけ? こういうの。

「東示ちゃんは早くご飯作ってー」

「……へーい」

 仕方なく俺はキッチンへ行き、料理集中モードに入る。今日は大愛がいるから本気で美味い料理を作る。

 オムライスでいいよな。冷蔵庫の中身を見る限り、オムライスかラーメンくらいしか作れない。ラーメンでも悪くはないが、作るとなるとインスタントになってしまう。大愛にインスタントは食わせられない。

 さて、オムライスを作るが、オムライスの作り方くらい誰でも知っているだろうから、わざわざ俺が語る必要もないだろう。だから(中略)で飛ばそう。

 まずは、フライパンを用意して――(中略)――よし、これで完成!

 俺が作っている間にも大愛と母さんは何か話していたようだけれど、料理集中モードの時は料理以外何も目に入らないし何も聞こえない。

 この力を少しでも勉強に回したらいいのにと思わなくもない。

「オムライス出来たよー」

 大愛と母さんの前にオムライスを置く。そしてその横にケチャップとデミグラスソースを置く。

「好きなほうかけてね。おすすめはデミグラスソースね」

 デミグラスソースも用意する辺りが意外と完成度が高い俺の料理。まあ、本気でやる時だけだけど。

 そして、ケチャップをかける母さん。続けて同じくケチャップをかける大愛。

 俺の努力は。おい。俺のおすすめは。おい。

 一人悲しく自分のオムライスにデミグラスソースをかける。一応、父さんの分も作ったからソースも残しておく。

「いただきまーす」

 三人、声を揃えて言う。そして一口。

「美味しいわねー。私が作る料理よりも美味しいんじゃないかしら」

「そんなことはあるかもしれないなー」

 得意になる俺。だけれど、母さんよりも大愛の評価のほうが大事だ。

「あら、惜しい。間違えた、美味しい」

「実は『惜しい』のほうが本音じゃないことを祈るよ……」

 さすがに大愛だってそこまでは性格悪くないだろ。大愛はそれ以降何も言わないが、文句も言わずに食べてくれる。よかった。お気に召してくれたようだ(多分)。

 まあ、今回は結構いい出来だった。将来、店を出してもいいかもしれない。

 ああ、将来と言えば。

「大愛と母さんとで何の話してたんだ? 将来とか仕事とか話してたと思うんだけど」

「内緒よ、ナ・イ・ショ。ね、大愛ちゃん」

「そうですね、お母様。秘密よ、ヒ・ミ・ツ」

 なんか、不気味なくらい仲が良くなっている二人。俺が料理してる間に何があったんだよ……。

「そう言われると気になるなぁ。少しくらい教えてくれよー」

「だーめ。東示ちゃんには教えない。ねー」

「ねー」

 何があったのかは知らないが、仲が良くなっていた二人だった。

 父さんに相談することを決意した俺だった。

早く考査しろよ。勉強会いつまでやるんだよ。なんで母親いるんだよ。オムライスとかどうでもいいよ。インスタントラーメンでもいいだろ。勉強会とか言って勉強してんの? 父親も出てくんの?


なんでこんなに進まないんだろう。気になります。

絶対的に自分が悪いのですけど。気に病んでます。


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