表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/33

……え?

「なあ、大愛。いつまでいるんだ?」

 時計の短針は7を少し過ぎたところを差し、長針は6を差した頃にそう言った。

 気付くのが遅かった。

 遅すぎる。

「勉強会が終わるまで」

「じゃあ、勉強会っていつ終わるんだ?」

「わたしの気が済むまで」

 大愛の『気』なんて知らない。

 『気が付く』『気が済む』『気が気でない』とか言うけど、そもそも『気』ってなんだ。

 スカウターで計れるのか。

「俺はそろそろ飯を食べたいのだけれど……」

「わたしにも頂戴」

「……え?」

 何ヲ言ッテンノ、コノ人。

「……え?」

 つい、二度同じ台詞を言ってしまったじゃないか。

「『神林君が食事をするというのであれば、わたしにも下さらない?』と言ったのだけれど、聞こえなかったの?」

「そこまで丁寧には言ってなかった」

「『神林君が食事をするというのであれば、全てわたしに下さらない?』と言ったのよ」

「俺の飯がない!」

「『神林君が食事をするというのであれば、わたしもご一緒していいかしら?』と言ったのよ」

「気になってたけど、なんで全部若干上から目線なんだ?」

「で、どうなの?」

「俺はいいけど、心配されないのか?」

「前にも言ったと思うけど、日本国内にいる限り問題ないわ」

 それは前にも聞いた。でも、それってどうなんだろう。放任というか、気にも留めてないって感じだよな。

「相模原さんに心配かけることになるかもしれないけれど、問題はないわね」

「相模原さん?」

 それは誰だ。新キャラだぞ。

「OESの一人で、わたしに仕えてるって設定の人」

「ん? 大愛についてんのは佐々原さんじゃないのか?」

 どっちも『原』だけど。

「佐々原さん、相模原さん、澤原さんの三人がわたしに仕えてるのよ」

「待て待て、登場人物を増やすな。俺がわけわからなくなる。ただでさえクラスのやつらもどんな名前だったか覚えてないのに」

 余談だけど、『わたしに仕えてる』って言い方がなんか嫌だ。

「OESって一体何人いるんだよ」

「この地球上から大愛家と神林君を除いた全て」

「…………」

 唖然としたのではなく、呆れた。嘘も程々にしろよ。

「なんてね、冗談よ」

「だろうな」

 それが冗談じゃなかったとしたら怖い。大愛グループが世界規模っていうか、世界そのものじゃないか。

「実際はそんなにいないわ。少数精鋭って感じの人たちだから」

「小数ってのはわかるけど、精鋭なのか?」

「精鋭よ。最年長の務川さんって人がいるのだけど、その人にかかれば神林君なんて……。まあいいわ。食事をしましょう」

「その人にかかれば俺はどうなるんだよ! 気になるじゃないか!」

「食事をしましょう」

 そこでようやく大愛は俺のほうを向いて立ち上がる。

 ここまでの会話を全て勉強しながらする大愛って……。

 俺も勉強してたけどさ。気候帯を纏めてたけどさ。でも、大愛が立ったから、俺も勉強を止めて立つ。

 どうせ、俺がどうなってしまうのかは訊いても教えてくれないだろうし、もしかしたら、大愛は思いついていないだけなのかもしれないし。その件はもう終わり。

「とりあえず下に降りよう」

 冷蔵庫には何が入ってたかなー。オムライスが食べたいなー。材料あるかなー。チャーハンもいいなー。なんて考えながらリビングへ向かう。

 そしてリビングのドアを開けて中に入る。

 そこには親がいた。母親がいた。

『気』って何なんだろう。気になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ