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ふと思ったんだけどさ。

「ふと思ったんだけどさ。これって勉強会って呼ばなくない?」

「だから?」

「だから……ちゃんと勉強会をしようぜ」

「ちゃんとって?」

「勉強会と言えばって感じで」

「わたしの勉強会のイメージと神林君の勉強会のイメージが同じとは限らないのに、そんなことを出来ると思っているの?」

「それはねえだろ。だったらさ、俺のイメージでやってもいいか?」

「嫌よ」

 今までの俺ならこの一言で打ちのめされていただろうが、今日の俺は自分の家ということで何となく強気なんだ。反論できる。

「なんでだよ。ここは俺の家だから、俺に主導権があるだろ。お前が俺の言う通りにしない理由を言ってみろよ」

 はっはっはー。反論できまい。今日のところは俺の勝ちだ。そしてこれからは俺の前に平伏すがよい。

「神林君とわたしの格が違うから。格下の神林君の言うことを聞くだなんて虫酸が走るわ」

 ふっ、反論できたか。まあこれで五分五分と言ったところか。

「格下ってなんだよ、お前! 親がどれだけ金持ちかは知らねえが、そんなことで格付けすんじゃねえ! そんなことをしている時点で俺のほうが格上なんだよ!」

 よし。これで俺の勝ちは保証された。まあ、大愛も頑張ったほうだけれど、まだまだ俺の域には達することは出来ないということだ。

 そうだ、いいことを思いついた。今まで多くの苦汁を舐めてきたんだ。俺が勝ったら大愛に罰ゲームでもしてもらうか。できるだけ羞恥心やトラウマを与えられるような罰ゲームをな!

 そのかわり、俺が負けたら全校生徒の前でお前に告白でもしてやろうじゃないか。そして俺は振られる。そうなれば次の日から俺は生徒の笑いものだ。卒業まで肩身を狭くして過ごさなくてはいけなくなるだろう。想像したら涙が出てきた。

「格下っていうのは勿論冗談よ。神林君の言うようにやってあげるわよ」

 大愛がこちらを向く。

「で、どうしたら……って、え、なんで泣いてるの?」

 慌てる大愛。可愛いな、おい。涙で霞んでよく見えないけど。

「だ、大丈夫だ。ちょっと悲しいことを想像しちゃっただけだ……」

「神林君のご両親が失業してしまい、更に借金を背負って家を追い出されて、中学三年生にしてホームレスになってしまうことを想像したの?」

「……それは悲しいな……」

 でも、大愛に振られるほうが悲しいな。

「もし、そうなってしまったとしても、わたしが面倒見てあげるから安心してね」

 大愛の天使の微笑みが炸裂! 神林は瀕死の状態だ!

「婿養子にでもしてくれんのか?」

「いえ、居候。ご飯と押入れは提供するわ」

「俺は未来の猫型ロボットじゃねー!!」

 大愛、止めの一撃。神林は倒れた! しかし、神林は最後の力を振り絞って、そして涙を拭きとって、攻撃を仕掛ける!

「あのアニメだと、居候は子供の部屋の押入れで寝起きしてるだろ? そして、お前の家の子供はお前だけ! つまり大愛の寝顔や寝言を我が物にできるのだ!」

 決まった! これで俺の勝ちだ! いやー危なかったー。一時はどうなることかと思った。もう俺はフラフラだよ。だが、これで大愛の罰ゲームは決定したな。

「わたしの部屋に押入れはないわ」

「なっ……」

 大愛、神林の攻撃を簡単にかわし、返り討ち。神林、完全に倒されてしまった。

「ま、負けた、だと……。今日は勝てると思っていたのに……」

「どうして神林君が落胆しているのか理由は分からないけれど、くだらないことでしょうから、聞かないわ。それはそうと、神林君の涙が止まったようでよかったわ」

「ああ、そうだな……」

 今の俺にとっては涙なんてどうでもいいことなんだけどな……。

「神林君は泣いているのよりも、笑ってるほうが素敵よ」

 前言撤回! 涙なんてどうでもよくない! 俺はこれから大愛の前では泣かないぞ! 神とか仏とかに誓う! そして大愛に誓う!

「そうか。それはよかった。俺はもう泣かない」

「……そう。分かったわ。これからは泣いちゃ駄目よ」

「誓ったから、大丈夫だ。勉強会の続きをしよう」

「そうね」

 そう言って大愛はまた机を向いて勉強を始める。俺もシャープペンを持つ。


 あれ? 何も変わってなくない?

 そして、俺は大愛に告白しなきゃいけなくない?

 どうしよ……。

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