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寡黙な男って。

「質問? いいですよ」

 月曜日、朝、西尾先生と俺との会話。

「ですが、僕の、質問に対する返答はかなり的外れだと思いますよ。どれくらい的外れかと言うと、ダーツの矢を投げたのに、隣の的に当たる感じですよ。つまり、全く、全然、無関係で、無意味で、無意義で、時間の無駄ですが、いいですか?」

 俺も先生と似たような例えを最近した気がする。まあ、いいか。

「問題ないです」

 元々、期待なんてしていない。

「寡黙な男ってカッコイイと思いますか?」

「なるほど……。それは僕のことを言っているのですね」

 違う!! 断じて違うぞ!! どこをどう取ったらそうなるんだ!!

「確かに、口数が少ないと、影が薄いと感じられてしまいます。しかし、色々と喋りすぎる男よりは断然いいと思います。どのようにいいかと言うと、キリンがゾウに見えてしまうくらい、いいですね」

 どういう例えだ!? 意味が分からないぞ!

「寡黙な男というのは、的確なことをビシッと言うのがカッコイイと思います。鶴の一声のように、ビシッとバシッとその言葉で全てが決まってしまうような、そういう男、そういう寡黙さ、というのはとてもカッコイイと思います。僕もそれを目指しています」

 本当に目指しているのか? 嘘だろ。

「神林君はそのような男を目指しているのですか? だとすると、僕を見習うのが一番いいと思いますよ。自画自賛ではないのですが、僕は神林君が言うように、寡黙な男です。そして、それでいて、それなりに、カッコイイと自負してはいます。しかし、それは自負に過ぎず、他人からどう思われているか、というのは分からないものです。自分から訊くのもおこがましいですし、何より、自分のことを他人に訊く、というのは、とても照れてしまうものなのです。全員が全員そうなのかは、やはり分かりませんが、僕はそうです。際立ってそうです。おこがましく感じ、照れてしまいます」

 先生は今、俺が先生のことを寡黙な男だと言った、とか喋ったが、俺は何も言ってないぞ。

「若しかすると僕は寡黙な男の中でもトップクラスの寡黙さを持っているかもしれません。だって、僕は性格は無口です、と言うとその瞬間、周りの人も静かになってしまいますから。つまり、僕の寡黙さは伝染するんです」

 多分、周りの人が、先生の言葉が衝撃的過ぎて固まったんだと思うぞ。だって、全然無口じゃない。

「神林君も僕の寡黙さが伝染したんですか? 先程から何も言ってませんね。やはり、この力は抑えるべきですね、その為には寡黙というのをやめて、口数を増やすのがいいですかね。いくら何でも、生徒が何も喋らなくなってしまうと、授業になりませんからね」

 これ以上口数を増やさないほうがいいと思うぞ。口には出さないが。

「それとも、神林君は僕の口数が少ないので、僕の全ての意図を探る為に何も喋らず、待っているのですか? それはとても賢い行動だと思えます。そのようなことをされてしまうと、大概の人間は動揺してしまうと思います。僕は心理学には一切全くもって詳しくはありません。素人並み、いや、素人以下でしょう。心理テストなる本等は全然読みませんでしたから」

 あれだけ、色々読むとか言ってたのにそういうのは読まないのかよ。

「性格や、体躯、身体、動向、言動、行動、運命、そういったものを決め付けるようなものは一切読んでいません。理由は特にありませんが、自分の人生は自分のものなので、自分が、これだ!と思える道を進むのが最もにして尤もいいことだと思います」

 まともなことを言ったんだよな。多分。

「では、最終的な答えを出しましょう。寡黙な男がいいかどうか、ですね。それはやはり、人それぞれの個性を出せるかどうかにかかっているのでしょう。自分は寡黙だ、という概念に囚われず、たまには多くのことを喋るのも大切で、新しい自分に出会うことが出来るかもしれません。はたまた、どんなにお喋りな人もたまには1日くらい、全く何も喋らないと言っても過言ではないくらい口数を減らしてみるのもまた、新しい自分出会うチャンスになりえます。このような答えでいいですか?」

「なるほど。ありがとうございました」

 そう言って俺は自分の席へ戻った。



 分かったこと。西尾先生よりも、俺の方が寡黙だ。

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