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カッコイイから。

「では、今日も好きなように描いてな」

 美術の小畑先生が言う。この先生も生徒に好きなことをやらせる。そして先生も先生で何かと作業している。

 俺はスケッチブックを開き、先週からの続きを描き始める。これで評価が決まるんだから重要だ。先生は好きなようにって言ってるくせに上手ければ評価が上がるし、独創性があっても上がるらしい。

 あとは絃を書けば取り敢えずは完成だな。

「大愛は何描いてんだ?」

 俺は覗く。

「うわ……」

 教科書丸写しっておい……。エッシャーの騙し絵っておい……。

「でも、上手いな……」

 それだけ言って俺は自分の作業に戻る。

 実際、大愛の絵は教科書に出ている絵の美化150%増しくらいにはなっていたと思う。カラーだったのが証拠だ。うん。

 谷沢のも覗いてみる。数式やら漢字やらが書いてある黒板の絵を描いている。意味分からない。

「お前、美術なんだからもっと美術っぽいことを描けよ」

「神林に言われる筋合いはない」

 俺の絵は素晴らしいぞ!

 ついでに闇雲のも……ん? 闇雲?

「あ、闇雲いたんだ」

 全然気づかなかった。

「わたしは学校生活9年目だけど、1回も休んだことはないわ」

 マジかよ……。

「フフフッ」

 怖いって……。

 そんな闇雲の絵は花畑だった。全部黒いバラ……。怖いよ……。

 俺は俺で真面目に描いてみよう。

「神林君は何を描いているの?」

 大愛が訊いてくる。

「よくぞ訊いてくれた」

 俺はまだ完成はしていないが大愛に見せる。

「何、これ?」

 分かるだろう。

「ギターだぞ、ギター」

 まだ、絃は描いてないけどな。

「ギターね」

 何か文句あるのか?

「わたしには犬に見えるのだけど」

「は?」

 いやいや、どう見てもギターだろう。俺は絵が下手だがそこまではいかないはずだ。

「確かに犬だな」

 谷沢も言ってくる。五月蝿い!

「犬ね。フフフッ」

 闇雲……。怖いよ、ホントに……。俺に対してはほぼドッキリだろ。やめてくれよ。

 でも、どうしてギターが犬になるんだよ。謎だ。

「先生に見せてくる」

 小畑先生は石膏を糸鋸で削っている。何を作ってるんだろう。

「先生!」

「何だ、神林」

 こっちを見ないで声だけで俺だと当てたこの先生はすごい。

「これ、何に見えます?」

「ん?」

 先生は俺の絵を見る。

「犬、か?」

「え……」

 俺は落胆して席へ戻った。

「ほら、犬でしょ」

 もう黙ってくれ。

「そのまま犬を描いたらどうだ?」

「いやいや、俺はギターを描いてたんだ。犬には出来ないぞ」

 このままギターを描く!

「そもそも、何でギターなの?」

「カッコイイから」

「え?」

 えー、分かんないのかよ。

「ギター弾けたらカッコイイじゃないか」

「そう?」

「そうだ」

「そうかしら?」

「そうなんだ」

 大愛も谷沢も闇雲も腑に落ちない顔をしている。

「ギターを弾ける、イコール、カッコイイ。分かったか!」

「ふうん」

「ふうん」

「フフフ」

 フッ、素人には分からないさ。俺は俺の道を行くんだ!

 俺は思いっきりガッツポーズをした。他の3人に白い目で見られていても恥ずかしくなんかないぞ!

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