表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/33

ここまで来てトランプって……。

「ここがホテル・ザ・屋敷よ」

 俺たちはやっとホテルに到着する。しかし、見えているのは1階で看板には『恐怖!お化け屋敷!!』と書いてある。その横に小さく『ホテル・ザ・屋敷』。

「下から見ると更に高く見えるな」

 上を見すぎて首が攣りそうだ。攣らないと思うけど。

「何階まであるんだ?」

「地下3階から地上50階まであったはずよ」

「50階……」

 それって何メートルだ?

「入りましょう」

「あ、うん」

 中に入るって、どうやって? 入り口はお化け屋敷のしかないぞ! 大愛はその入り口から入っていく。

「え……」

 俺も仕方なく続く。お化け屋敷なのにドアが自動って何で? ホテルだからか。

「いらっしゃいませ」

 いきなりの挨拶。中が眩し過ぎて何も見えない。

「神林君、大丈夫?」

 大愛が優しく手を差し伸べてくれるのかと思ったら立ったまま笑っているだけだった。

「というか、いらっしゃいませって、俺たち客じゃないだろ……」

「いいえ、お客よ。そういうシチュエーションなんだから」

 ああ、なるほど。そういうシチュエーションですか。分かりましたよ。

 やっと目が見えるようになる。どうやらここからホテル組とお化け組に分かれて行動できるようだ。

「わたしたちは部屋に行くからエレベーターに乗りましょう」

「お荷物お持ちします」

 ボーイというやつが俺のスーツケースを持ってくれる。

「あれ? そういえば大愛の持ち物は?」

「わたしは送ってあるわ」

 そういうことか。

 俺たちはエレベーターに乗る。だが、50階行きがない。

「えっと、50階ってどうやっていくんだ?」

 49階で降りて階段か?

「この鍵を使うの」

 大愛が鍵を取り出す。こういうホテルはオートロックだと思ってたのに鍵をもらってておかしいとは思ったんだよな。嘘じゃないぞ。

 大愛は鍵を49階行きのボタンの上の穴に差して回す。するとエレベーターが動き出す。

「すごい仕組みだな」

「そう? 普通じゃない?」

 普通じゃねえよ!

「わたしには普通に見えるわ」

「はいはい。いいご身分で」

「何か言った?」

「言ってませんよ」

 その時、エレベーターが止まる。

「もう着いたのか? 早いな。それにエレベーター独特のフワッていう感覚やエレベーターが動いている感じが無かったぞ。どういうことだ?」

「普通でしょ」

 だから、普通じゃねえよ!

「さあ、行きましょう」

 そう言って、エレベーターを降りる。そこは、もう部屋だった。

「何だ、これは? 普通はまたドアがあって、そこからが部屋なんじゃないか?」

「当ホテルのロイヤルストレートフラッシュルームは50階丸ごとロイヤルストレートフラッシュルームなんです」

 ボーイさんが説明してくれる。2回目の『ロイヤルストレートフラッシュルーム』を噛んだのは目を瞑る。

「すげえ」

 一言しか出ない。

「では、お荷物はここに」

「あ、はい。ありがとうございます」

「何かありましたら、そこのボタンをお押しください」

 そう言ってボーイさんはエレベーターの近くにある『STAFF BUTTON』を指差す。分かりやすい。

「分かりました」

 ボーイさんはスーツケースをソファの近くに置き、エレベーターで降りていった。

「さて、何する?」

 大愛が訊いてくる。

「えっと、何が出来るんだ?」

 部屋が広過ぎてどこにいればいいのか分からない。大愛はソファに座っているが、普通は座るのが憚れるような高級感溢れるソファだ。だが、一応俺もソファに座る。少しは覚悟していたが、予想以上に沈む。柔らか過ぎるぞ、おい。

「トランプでもやる?」

「ここまで来てトランプって……」

「ここはロイヤルストレートフラッシュルームよ。ポーカーなんていいんじゃない?」

 大愛は備え付けだというトランプを取り出す。いやいや、純金のトランプなんか見たことないから。

 そのトランプを華麗に切って、配る。

「このトランプ、やりにくくないか? 少し重いし」

「普通でしょ」

「普通じゃないんだって」

「それは神林君が普通じゃないんでしょ」

 それから俺と大愛はポーカーで5勝負した。結果は1勝4敗で俺の負け。しかもその1勝が大愛が思いっきり手加減した初戦というのだから俺はポーカーには向いていないのだろう。

 時計を見るともうゴールデンウィーク初日の午前1時を過ぎていた。

「そろそろ寝ましょうか、神林君」

「そうだな」

 俺と大愛は寝室へ行った。滅茶苦茶広い。何だこれは。1つのベッドが天蓋付きだった。何の毛なのか分からないが凄く柔らかい。このホテルのものは全て柔らかいのか?

 ベッドが2つ並んでいたので必然的に大愛は俺の隣のベッドで寝る。が、しかし。どちらもベッドが大き過ぎる為、俺と大愛は10メートル程離れることになってしまった。これならポーカーをやってるほうがマシだ。

「これで寝るのか……」

 無理だろう……。俺は深い溜息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ