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俺は俺だ。

「ねえねえ、神林(かんばやし)君って自分のことどう思ってるの?」

「俺は俺だ」

 俺はそう答えた。俺が俺じゃなかったら俺は何なんだ。

「いや、そうじゃなくてね。神林君が神林君なのは知ってるの。というか、神林君が神林君じゃなかったらわたしは誰と喋っているのかわからなくなっちゃうじゃない」

「そうだな」

 中々筋が通っている。さすが生徒会長。

「改めて訊くね。神林君は自分のことをどう思っているの?」

「どうって言われてもな。俺は俺だと思っているとしか答えようがない」

 俺は何故、学校一の美人と謳われる生徒会長で、かの有名な大愛グループの一人娘で、帰国子女で、異国情緒溢れていて、花も恥らって、成績優秀で、容姿端麗な大愛(おおあい)(あい)と中学校からの帰路に就いているのだろう。

 

 話は今日の数学の時間へと遡る。


「起きてよ、神林君」

 俺はマイ枕を持参して机で寝ていた。それなのに俺を無理矢理起こす大愛。

「あぁ? 何だぁ?」

 俺は起こされて気分が悪い。その様を見るクラスメイトと先生。

「授業中なんだから寝てちゃ駄目でしょ」

「はぁ? 授業中だから寝てていいんだろうが」

「変なこと言ってないでさあ、起きた起きた!」

「沖田なら俺の三つ前だぞ」

 そう言って俺は前を指差す。沖田が「え?」という顔をする。笑うクラスメイト。先生も少し笑っていたのを見逃さない。

「沖田に用があるなら俺を起こすなよ。じゃあ、おやすみ」

「えぇー」

 またクラスメイトが笑う。

「そうじゃなくて! ちゃんと起きて授業を受けなきゃ駄目でしょ!」

「いやいや、先生には授業しなければならない義務があるけど、こっちは授業を受けてもいいという権利だけだからいいんだよ。さあ、先生も授業をやらないと義務を果たせませんよ。じゃ」

 マイ枕セット。顔設置。睡眠モードオン。

「駄目でしょ!」

 ドガッ! 頭に激痛が走る。

「うがぁ! ああぁぁぁぁ!!」

 俺の雄叫びがクラス中を駆け巡る。

「頭蓋骨割れた~! 脳震盪だ~! 心筋梗塞だ~! 金縛りだ~! 雲真っ赤出欠だ~」

「蛛膜下出血ね」

「ツッコミ入れるのはそこ以外もあるだろ~!」

 つーか、こいつ何した!?

「えっと、この三角定規の角で頭を刺したの」

「はあ?!」

 頭を押さえていた手を見る。若干、赤い液体らしきものが………………………………………。


 そこで意識が途絶える。


 ベッドで目を覚ます。ここはどこだ?と考えるまでもなく保健室だ。大愛の顔が目に映る。

「Oh,I?」

「大愛よ。それより、大丈夫?」

「これが大丈夫に見えるやつは相当の老眼か失明しているかのどっちかだな」

 頭には包帯を巻いている。

「ただの切り傷だってさ」

 刺し傷じゃないのか?

「起きたの?」

 女性の声がする。

「はい、起きました」

「じゃあ、大愛さんは授業に戻ってね」

「えっ、いや、その……」

「神林君を看てたいのは分かるけど、授業には出ないとね」

「はい……分かりました」

 大愛は保健室を出て行く。

「その傷で神林君なら明日か明後日には治るわよ」

 保健室の加賀崎(かがさき)先生が言う。さっきの女性の声も加賀崎先生だ。

「それって俺が化け物並みに再生力があるって言っているように思えますよ」

「ええ、そうよ」

 は?

「何言っているんですか。俺はただの一介の中学生ですよ」

「神林君って骨折多いわよね」

 俺は中一と中二の二年間で骨折で四回病院に運ばれている。原因は思い出したくない。

「まあ、そう、ですね」

 俺はぎこちなく言う。

「でも、かなり早く治っているわね。一番いい成績が左肩の脱臼と左腕の単純骨折ね」

 そんなこともあったな。確かアレは二年のとき、ハンドボール投げをしている最中に起こった事故だ。先生の所為で思い出してしまう。俺がハンドボールを取ろうとしてあまりの重さに肩が脱臼。そこに前のやつが投げたボールが俺の腕に直撃。奇跡だ。

「あの時は常人よりも一ヶ月以上早く回復。しかもリハビリ無しで普段通りの生活に復帰。治癒力がとても優秀ね。頭とは比べ物にならないくらいね」

 この先生、たまに毒を吐く。保健室の先生なのに怖い。学校の怖い先生ランキングの五位内には必ず入ってくる先生だ。

「ああ、そうですか」

 こう答えるしかない。

「もう五時間目終わって六時間目よ。授業に行く?」

「いえ、下校時刻までここにいます」

「そう、じゃあ、篠原(しのはら)先生にそう伝えておくわね」

「お願いします」

 篠原先生は俺のクラスの担任だ。社会の先生。無駄に法律に詳しく、俺も篠原先生の影響を受けて法律をたまに勉強している。が、先生になるつもりも弁護士になるつもりもない。俺はただ、いまこのときの学園生活を謳歌している。

「じゃあ、もう一眠りするか」

 俺はそう呟くと睡眠モードに入る。


「神林君。起きなさい」

 誰かの声が聞こえる。この声は加賀崎先生だ。

「もう五時よ。そろそろ閉めるから起きて頂戴」

「ふぁい」

 俺は適当に返事をして起き上がる。少し頭が痛むがこれくらいなら大丈夫だ。

「それと、裏門で大愛さんが待ってるって言っていたわよ」

「はあ……」

 それがどうしたと言うのだ。俺には関係ない。

「行ってあげなさい。何か神林君に言いたいことがあるみたいだったから」

「はぁい」

 先生が言うなら仕方がない。先生に言われたのに行かなかったらあとでかなり悲惨な目に合う。合ってきた生徒を何人も見てきた。

「さあ、あそこに鞄があるから、持って行きなさい」

「了解でーす。ありがとうございましたー」

 俺はこれまた適当に言い、鞄を持ち、保健室を出る。

「じゃあ、さようなら」

「さいならー」


 俺は靴を履き替え、裏門へ。大愛がいた。

「あっ、神林君」

「何だ? 俺に用事か?」

「いや、その用事ってほどじゃないんだけど、とにかく、一緒に帰ろう」

 おいおい、何だこの展開! まさかの告白か!?

「ん? ああ、いいぞ」

 俺は動じない素振りを見せながら歩く。その横を大愛が歩く。


 そして、今。

「捻くれてるって思わないの?」

「思う。し、それでいいと思っている」

「それがいいと思っているんでしょ」

「え?」

 何だ、突然。

「自分は捻くれてて社会から逸脱していて、それでいて、そんな自分に満足している。そんな感じでしょ」

「何を知ったようなことを」

「知ってるよ。だって一年生の時、初めてオーストラリアから来たときからずっと見てたから」

 ストーカーかよ。いやいや、そんな思想ではいけない。今の雰囲気に合ってない。

「そして、大愛グループの力を使って神林君の経歴を洗いざらい調べさせてもらったの」

 これは完全なるストーカーだ。

「好きな食べ物、動物は勿論。好きな異性のタイプ、好きな異性の仕草、その他諸々何でも知っている」

「マジかよ……」

 俺はそういう色物語的なこととはかなり疎遠な存在だから親友に彼女がいることすら、先月知ったばっかりだぞ。当人は中学校の入学式に一目惚れして即座に告ったらしい。勇気あるなあ。

 だから好きなタイプは愚か、仕草など一度も言ったことはない。

「そんなバカなことがあるかよ」

「あるのよ。多分、神林君は髪が長くて背が自分と同じくらいで足が長い女性が好きでしょ。だけど、自分の同級生の兄弟とは結婚したくないと思っているんじゃない?」

 100%正解だ。どうなってるんだ?

「好きな仕草は本のページが風で捲られて『アッ!』って時の手ね」

 何でこうも完全なる正解を叩き出すんだ? ストーカー恐るべし。

「大愛グループの心理学科の人に神林君のことを研究してもらったの。モニターの一人としてね」

「何、勝手にやってんだ!」

「それで、今日はそのお礼金を渡そうと思ってたの」

 えっ、じゃあ告白はないのか……。

「告白してほしいの?」

「は?」

「いえ、何でもないわ。はい、お礼金」

「ああ、ありがと」

 俺は封筒を受け取る。重い。

「ざっと200万円」

「はあぁぁ!?」

 モニターってそんなに貰えるのか!? それなら何でも受けるぞ!

「じゃあ、わたしはこれで」

「ああ、ありがと」

 気づくと俺の家の前にいた。大愛はどうやって帰るんだ?

「あ、そうだ。神林君は今、わたしがどうやって帰るのか気になったと思うけど、わたしには専用のリムジンがあるから心配しないでね」

 そりゃあ、いいご身分で。

「じゃあ、また明日、学校で」

 そう言うと大愛は歩いて行ってしまう。いや、別にいいじゃないか、あんなストーカーやろう。そうは思ったがそうは思い切れなかった。何だろう、この感じ。まさかこれが恋? ま、恋でも殺意でも同じだな。どっちにしろ、人を滅ぼすことには変わりない。

 俺はため息を吐きながら家に入る。

僕としては禁断の(禁断か?)ラブコメ学園ものです。別シリーズをやっているのにこれに現を抜かしていてもいいのでしょうか。と、思いながらも手が止まらずに書き上げてしまい、短編にしようと思ったのに、色々続きそうな感じになってしまい……。とにかく、変な感じにならないように頑張ります!(もうすでに変な感じになっていそうです)応援、よろしくお願い致します!

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