表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末病棟  作者: 根室県
1/1

第1話 少佐を決して死なせはしません

 私は泣いていた。

あの御方を私は、私が救えなかった。人を救えずして、私は、医者を名乗っていて、よろしいのでしょうか。宇宙そらに問いかけた。けれど、返事は、こない。


 「おい!こっちの兵士も運べ!!ひどい傷だ。」

「A型の輸血パックがきれてるだと?すぐ補充しろ!」

「アルベルト軍曹が息をしていません!」

薄暗いテントの中でいくつもの言葉がぶつかり合う。看護師がものすごい速さでカートを運んでいる。我が国アルバスは大陸の南を支配しており、北側諸国との戦争で敗戦の一途をだどっており、負傷した兵士がここ最近増えている。

「スカーレット、君にヴァンチェ少佐の、銃で撃たれた右腕の切断を今すぐお願いしたい。この野戦病院の麻酔は尽きた。すまないが、麻酔なしで頼む。優秀な君なら最小限の痛みで切断出来るだろう。よろしく頼むよ。」

ここの医師、看護師の指揮を執っているキルリスさんが言った。

「了解しました。」

 ベッドまで向かうとそこには、右腕を包帯でぐるぐる巻きにして、苦痛の表情を浮かべる少佐がいた。

「やあ、お人形のような人がほぼ戦争の最前線にいるなんてね。」

少佐は到底笑顔には見えない、苦しみと痛みを2対1で混ぜたような、無理な笑顔をして、私に微笑んだ。

「それが、私の使命ですので。」

「お堅いな〜」

少佐は無理な笑顔をしたまま言った。

「申し訳ありませんが、麻酔なしでの切断となります。では、今現在から開始いたします。」

包帯を取ると痛々しい腕が見えた。その腕をエタノールを染み込ませた脱脂綿で消毒し、ペンを走らせた。そして、糸で上腕を縛った。

「いてっ」

少佐が痛みで跳ね上がった。

「もうちょっと優しくできないの?」

笑顔がさらに歪になっていた。

「止血があまいと、切断する際に出血が止まらず、血液が不足します。そして、今、当院の輸血パックは不足しておりますので、失血死の恐れがありますが、よろしいですか?」

少佐が一つほうっとため息をついて、

「わかったよ。」

「それは、止血をきつく行う。という方針に納得した。という、わかったでよろしいでしょうか?」

「そうですっ、いてでで、ちょっ、ちょっと、ちょ、っまって、まって!」

引っ張っていた糸を緩めてから

「何か不都合がございましたか?」

「いや、なんでも、、」

少佐がゼェゼェと息を吐きながら言う。

「それでは、施術を再開します。」

再び糸を締め、結ぶ。

「いっっつ!」

ペンでマーキングした箇所にメスを切り込ませる。

「案外痛くないもんだな、刃物が滑っていくよ。」

少佐はメスによる切断の痛みがあまりないせいか、少し元気な口調で言う。

「少佐、施術中はあまり喋らないほうがよろしいかと。」

「ああ、すまないね。」

皮膚、筋肉、血管を切断し、主要な血管を縛り、結紮けっさつした。神経を引き出し切断、周囲の組織に埋め込んだ。骨を骨鋸で断ち、削り、筋肉を縫い、皮膚を縫い、施術が終わった。

「少佐、以上で施術を終えます。お疲れさまでございました。」

「もうか、早いね。」

 少佐はシンとした眼で自分の右側を見ている。今はもうない、右腕が生えていたであろう場所を。

「義手の装着は、街の病院でお願いします。」

「わかった。ありがとう。」

そう少佐は、初めて本当の笑顔を見せてくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ