第四話 特殊刑事課
翌朝、午前七時。
オルゴールの音色が鳴る目覚まし時計の音が、静まり返った薄暗い部屋の空気を鋭く切り裂いた。
天海翼は、見えない深い泥の底から無理やり水面へと引き上げられたかのように、大きく息を吸い込んで重い瞼をこじ開けた。
「っ、はぁ……」
喉の奥から絞り出されたのは、ひどく掠れた、荒々しい呼気だった。
全身を覆うシーツが嫌な寝汗で重く肌に張り付いている。無意識のうちに、翼の右手は自身の首元へと伸びていた。
パジャマの襟元をまさぐると、そこには氷のように冷え切った、硬い石の感触がある。服の下に隠された『虹色』のペンダントだ。
指先から伝わってくるその冷酷な質量が、昨日、六丁目の薄暗い路地裏で起きた凄惨な死の体験と、自らの脳髄を削り取って行使した異常な魔術の記憶が、決して都合の良い悪夢などではないという現実を、容赦なく突きつけてくる。
(……夢じゃ、ないんだよな)
翼はベッドの端に力なく腰掛け、鉛のように重い頭を両手で抱え込んだ。
目を閉じれば、魚と両生類を掛け合わせたような異形のバケモノの姿と、空気が割れるような銃声が、今も鮮明に網膜の裏で明滅する。
ふと、閉め切った寝室の扉の向こう側から、ふわりと温かな匂いが漂ってきた。
出汁の効いた味噌汁と、甘く焦げた卵焼きの匂いだ。
ひどく人間臭く、平和な日常を象徴するその香りに誘われるように、翼はおぼつかない足取りでベッドから立ち上がり、リビングへと向かった。
冷たいフローリングを踏みしめながらキッチンの入り口に立つと、そこにはすでに、小さな人影がコンロの前に立って立ち働いていた。
「あ、おはよう」
エプロン姿のまま振り返ったのは、黄花百合だった。
彼女は今日も相変わらず、どこか喪服を思わせるような深い黒一色の衣服に身を包んでいる。本来なら保護者であるべき自分が三十代半ばの大人でありながら、年端もいかない少女に朝食の準備までさせてしまっているという事実に、翼の胸にちくりと情けなさが込み上げた。
「百合……今日も朝ごはん、作ってくれたのか」
「はいこれ。冷めないうちに座って」
百合は手際よく湯気を立てるお盆を持ち上げると、小さなダイニングテーブルに二人分の朝食を並べていく。
翼が食卓の椅子に腰を下ろし、出されたお茶の入った湯呑みを両手で包み込んでいると、向かいに座った百合が、箸を持つ手を止めて小首を傾げた。
「翼、考え込んでどうしたの?」
昨日目の当たりにした教団の女や、バケモノたちの残像に囚われ、心ここにあらずといった様子の翼の顔を、百合の黒曜石のような瞳がじっと覗き込んでくる。
「いや……なんでもない。ただ、ちょっと昨日はいろいろありすぎてな」
「そういえば、今日ってパン屋さんの仕事、お休みでしょ?」
百合は自分の分の味噌汁をずずっと啜りながら、なんでもないことのようにあっけらかんと言った。
「じゃあ、昨日会った『探偵のおじさん』とか『大学生のお姉さん』と一緒に、どこか遊びに行ったりするの?」
「……ブッ!?」
翼は思わず、飲み込みかけていた味噌汁を激しくむせ返った。
「ゲホッ、ゴホッ! と、友達!? なんで百合が、俺が昨日他の奴らと会ってたことを知ってるんだ!?」
昨日の夜、命からがらアパートへ帰り着いた際、翼は百合を無用な不安に巻き込ままいと「仕事の手続きが長引いた」とだけ嘘をついて誤魔化していたはずだった。
路地裏でバケモノに頭を踏み潰されて一度死んだなどと、口が裂けても言えるわけがないのだ。
激しく咳き込む翼に対し、百合は呆れたようにジト目を向けてきた。
「翼が昨日の夜、自分で話してたじゃない。もしかして寝ぼけてるの?」
「えっ……嘘だろ」
翼は絶望的な気分で頭を抱えた。
どうやら昨夜、極度の精神的疲労と混乱の中で帰宅した際、無意識のうちに「高校生や探偵の人たちと会った」と、寝言のように愚痴をこぼしてしまっていたらしい。
「友達っていうか、その……たまたま知り合っただけで、遊ぶような関係じゃ……」
「一応、今日学校休校だし?探偵さんの手伝いって、めっちゃ面白そうだし?ずっと家にいるのも退屈だし?」
嫌な予感がする、その翼の予感は的中していた。
「つまり……私もついて行きたい!」
無邪気に目を輝かせる百合の言葉に、翼は血相を変えて立ち上がった。
「駄目だ! 絶対に駄目だぞ百合。今日はちょっと……そう、大人の込み入った用事があるんだ。お前は家でおとなしく留守番してなさい」
あんな得体の知れない化け物がうろついている街へ、この少女を連れ出すわけにはいかない。翼は保護者としての威厳をフル稼働させ、強い口調で止めに入った。
しかし、百合はむすっと頬を膨らませ、箸をテーブルに置いた。
「えー、みんなで探偵みたいに調査するの楽しそうなのに。私を置いていったら、こっそり後つけちゃうかもね」
「お前なぁ……っ!」
二年間、同じ屋根の下で暮らしてきた翼にはよく分かっている。この子は、一度言い出したら絶対に聞かない、ひどく頑固なところがあるのだ。
もし無理やり部屋に閉じ込めておいたとしても、本当に一人で街へ飛び出しかねない。そして万が一、あのバケモノたちに一人で遭遇でもしたらと思うと、翼の背筋は凍りつくようだった。
(……俺の目の届かない場所に置いておくより、俺のそばに置いておいた方が、まだ安全か……?)
数秒の葛藤の末、翼は深いため息をつき、両手を上げて降参のポーズをとった。
「……はぁ、わかったよ。連れて行く。ただし、絶対に俺のそばから離れないこと。少しでも危ないと思ったら、すぐに隠れること。約束できるか?」
「うんっ! 約束する!」
満面の笑みで力強く頷く百合を見て、翼は再び重いため息をついた。
(あぁ、天下崎さんにドヤされるぞ…)
これから「黄衣の教団」やら「魚顔の化け物」やらが絡む、命がけの異常な調査に向かうというのに、まるで休日の家族サービスにでも出かけるような空気になってしまった。
とはいえ、彼女の変わらない明るさに、張り詰めていた自分の心が少しだけ救われていることも事実だった。翼は諦めたように口元を緩めながら、分厚いコートを羽織った。
十一月下旬の朝の空気は、マフラーが欲しくなるほどに冷え込んでいる。
翼と百合は、待ち合わせ場所である駅前のカフェへと続く大通りを並んで歩いていた。
吐く息が真っ白に染まり、空の青へと溶けていく。隣を歩く百合は、まるでお出かけにでも行くかのようにご機嫌な様子で、時折鼻歌を歌いながらスキップをしている。
「ほら百合、あんまり離れるなよ。風邪引くぞ」
「平気だよ、翼! それより、そのお友達ってどんな人たちなの? かっこいい?」
「かっこいいっていうか……まあ、クマみたいな顔した探偵のおっさんとか、気が強そうな女子大生とか……」
翼が苦笑交じりに答えていると、不意に、交差点に設置された大型の街頭ビジョンから、ひどく深刻なトーンのアナウンサーの声が響いてきた。
『――続いてのニュースです。昨晩、夢見ヶ原市の河川敷で、下校中の女子高生が黒いフードを被った集団に襲われるという傷害事件が起こりました』
その言葉を耳にした瞬間、翼の足がアスファルトに縫い付けられたようにピタリと止まった。
『女性は幸い軽傷で済みましたが、病院に運ばれた現在でも会話ができる状態ではなく、現在も河川敷では警察による大規模な調査が行われています。警察の発表によりますと……』
平坦なニュースの音声が、冷たい水のように翼の鼓膜にこびりつく。
(黒いフードの集団……!)
昨日、六丁目の薄暗い路地裏で自分たちを惨殺し、その後、人智を超えた力で返り討ちにした、あの異形の化け物たちが即座に思い浮かぶ。
あの時、自分たちが倒したのは三体だけだった。しかし、このニュースが報じている通りなら、あの冒涜的な怪物たちはまだこの街のどこかに複数潜伏しており、平然と一般人を標的にしてうろついているということになる。
「……っ」
翼は思わず、首元の『虹色』のペンダントを服の上から強く握りしめた。
昨日の非日常な出来事が、そして自分たちが足を踏み入れてしまった狂気の世界が、当たり前の日常のすぐ裏側にまで深く侵食してきている。
もし油断すれば、いつこの隣で無邪気に笑っている百合が、同じようにあのバケモノたちの毒牙にかかるか分からないのだ。
「翼? どうしたの、怖い顔して」
百合が立ち止まった翼の袖を引き、心配そうに見上げてくる。
「……いや、なんでもない。ただ、ちょっと急ごうか。みんなを待たせると悪いからな」
翼は百合の小さな手をしっかりと握り直し、周囲の人混みを警戒するように視線を鋭く巡らせながら、足早に駅前のカフェへと向かった。
カランコロン、と澄んだドアベルの音を鳴らしてカフェの店内に入ると、暖房の効いたコーヒーの香ばしい空気が二人を包み込んだ。
見回すと、奥のボックス席から、見覚えのある巨体が無言で手を挙げるのが見えた。
「おせぇぞ、天海」
コーヒーカップを片手に、不機嫌そうに眉を寄せているのは天下崎星也だ。その向かい側には、不安げな表情で温かいレモンティーのカップを両手で包み込んでいる白石結衣の姿があった。
「すみません、少し出るのに手間取ってしまって」
翼は百合を伴って、二人のいるテーブルへと近づいた。
「……ん? なんだ、その後ろの嬢ちゃんは」
天下崎が、翼の背中からひょっこりと顔を出した百合を見て、目を丸くした。向かいに座る結衣も、驚いたように目をパチクリと瞬かせる。
「天海さん……その子、もしかして……」
「あー、紹介します。俺の同居人の、黄花百合です」
翼が気まずそうに紹介すると、天下崎と結衣の動きが、まるで映像が一時停止したかのようにピタリと止まった。
「……は? 同居人?」
天下崎が、ひどく怪訝そうに眉間に深いシワを寄せる。
「お前、こんな年端もいかない嬢ちゃんと一緒に住んでるのか? 妹や親戚とかじゃなくて?」
「えっ、ちょっと天海さん……それってなんだか、すごく犯罪的な匂いがするんじゃ……」
結衣がドン引きしたような目で、翼をジロリと睨みつける。
「ち、違いますよ! 色々と事情があって身寄りのない彼女を引き取っただけで、やましいことなんて一切ありませんから!」
翼が慌てて両手を振って全力で弁明する横で、百合はペコリと元気よくお辞儀をした。
「初めまして! 翼がお世話になってます、黄花百合です!」
「お、おう……天下崎だ」
「わ、私は白石結衣よ。よろしくね……って、そうじゃなくて!」
結衣はバンッとテーブルを叩き、周囲の客に聞こえないよう声を潜めながら、翼に顔を近づけた。
「いくらなんでも、こんな小さな子を本当に連れてきちゃってどうするのよ! 私たちがこれから話すことも、やろうとしてることも、どれだけ危険か分かってるの!?」
「ああ。嬢ちゃんには悪いが、今日俺たちがやろうとしてるのは探偵ごっこのお遊びじゃねえ。ガキの来る場所じゃない、とっとと家に帰らせろ」
天下崎も厳しい口調で翼を咎める。元刑事としての凄みが滲むその低い声に、百合が一瞬ビクッと肩を揺らして翼のコートの裾を強く握った。
(……所詮、素人は素人か。昨日、こいつの覚悟を少しでも信用した俺がバカだった)
天下崎は内心で深く毒づいた。これから命懸けの調査に向かおうという時に、足手まといになるに決まっている子供を連れてくるなど、正気の沙汰ではない。平和ボケも大概にしろと、怒りすら湧いてくる。
だが、翼は逃げることなく、真っ直ぐに天下崎の目を見返した。
「分かっています。でも、今の状況だと、家に一人で置いておく方がよっぽど危険なんです。……ニュース、見ましたか?」
翼の問いかけに、天下崎と結衣の表情がスッと険しさを増した。
「河川敷で女子高生が襲われたってやつだろ。目撃証言の『黒いフード』……」
「昨日俺たちが倒した、あの化け物たちの生き残りか」
天下崎が忌々しそうに低い舌打ちをする。結衣も恐怖に身をすくませるように、自身の両肩を強く抱きしめた。
「……ええ。まだ奴らが街をうろついているなら、俺の目の届かない場所に一人で置いておくよりも、俺のそばに置いて『あの力』で守った方が確実だと思ったんです」
魔術の力、すなわち『結界』のことだ。翼の切実な判断を聞き、天下崎は深くため息をついて自身の頭をガシガシと掻いた。
「………わかったわかった。嬢ちゃん、絶対にお兄さんたちのそばから離れるなよ」
「お兄さん……? うんっ! 約束する!」
どうにか二人の納得を得て、翼は百合を隣の席に座らせた。
カフェの店員が注文の品をテーブルに並べ、静かに立ち去っていく。
天下崎がブラックコーヒーを一口啜り、結衣はレモンティーのカップから立ち上る湯気で顔を温めるように両手で包み込んだ。翼の隣では、百合がストローでオレンジジュースを美味しそうに飲んでいる。
「ふう……あの、翼。私、ちょっとトイレ行ってくるね」
ジュースを半分ほど飲んだところで、百合がぽつりと呟き、席を立った。
「ああ、気をつけてな」
翼が軽く手を振って見送ると、百合の小さな背中がカフェの奥にある化粧室へと消えていく。
その姿が完全に見えなくなったのを確認すると、テーブルを囲む三人の空気が、一瞬にして温度を下げた。ただの休日のカフェの風景から、生死を賭けた密談の場へと、空間の質が変容したのだ。
「……さて。邪魔者がいなくなったところで、本題に入ろうか」
「邪魔者って…やめてくださいよ…」
天下崎がコーヒーカップを置き、周囲の客に警戒しながら声を一段と低くした。その目つきは、完全に元刑事としての研ぎ澄まされた刃のような鋭さを取り戻している。
「昨日の夜、白石の兄が席を外してる間に、俺たちで話した通りだ」
天下崎のその言葉に、翼の脳裏には、昨夜の密談の記憶が鮮明に蘇ってきた。
――昨夜、白石柊生の実家。
温かい手作りのハンバーグをご馳走になった後、柊生が「お茶でも淹れるよ」と立ち上がり、リビングからキッチンの奥へと姿を消した、そのわずかな数分間のことだった。
ダイニングテーブルに取り残された四人の間には、先ほどまでの和やかな団欒の空気が嘘のように、鉛のような重い沈黙が落ちていた。誰もが、口の中に残るデミグラスソースの甘みよりも、服の下に隠されたペンダントの冷たさと、あの路地裏での惨劇の余韻に支配されていた。
最初にその沈黙を破ったのは、天下崎だった。彼は周囲を警戒するように声を殺して、口を開いた。
「俺は私立探偵として、依頼人の依頼をこなすために6丁目に来た。それがもし、あのイカれた占い師の仕業だと言うのなら……二年前の『虹橋デパート爆破事故』の謎を明かす事。それが、俺の仕事だ」
天下崎の口から飛び出した、過去の凄惨な事件の名前。
その単語を聞いて、最も反応したのは、それまで怯えたように縮こまっていた高校生の九条凪だった。
「虹橋デパート……? あれは、ただの不慮の爆破事故だって結論が出たんじゃなかったっけ。ニュースでもそう言ってたはず…」
凪の戸惑うような言葉を、天下崎は鼻で嗤い飛ばした。
「ハッ。あれは警察の上層部が都合よくもみ消しただけだ。実際の現場は、ただのガス爆発や火薬なんかじゃ説明のつかない、異常な削れ方をしてた。結局、その原因も発火元も、警察の連中には何も分からなかったのさ」
元刑事である天下崎の、内部を知る者だからこそ吐き出せる重い真実。
それを聞き、結衣も少しだけ驚いたように目を丸くした。
「……私も、あのデパートには昔行ったことがあるから、無くなって残念だったな〜ってくらいにしか思ってなかった。そんな裏があったなんて……」
結衣が遠い目をして呟く中、翼は膝の上で両手を強く握りしめ、覚悟を決めて口を開いた。
「俺は……その事故で、自分自身の『記憶』をすべて失ったんです」
「えっ……記憶喪失!?」
翼の唐突な告白に、結衣と凪が同時に息を呑み、驚きの声を上げた。
「うそ……テレビドラマやフィクションの話だと思ってた……」
結衣が信じられないものを見るような目で翼を見つめる。
無理もない。名前以外の過去を持たない空っぽの人間など、普通の生活を送っていればそうそう出会うものではない。
「二年前の事故の現場から、俺は奇跡的に救出されました。でも、それ以前の自分が誰で、何をしていたのか、家族がいたのかどうかも分からない。ただ、昨日の朝に突然入った留守電と、あの占い師の言葉が……俺の過去はあの事故に隠されていると告げているんです」
翼が切実な思いを吐露すると、天下崎は深くため息をつき、腕を組んだ。
「……事情は分かった。だがな」
天下崎の鋭い視線が、翼、結衣、凪の三人を順番に射抜く。
「あの路地裏で異常な力を手に入れたとはいえ、俺たちは今日会ったばかりの、ほぼ赤の他人だ。互いの素性も知らねえし、信頼関係なんてあるはずもない」
天下崎は言葉を区切り、冷酷な現実を突きつけた。
「またあんな思いをしたくなかったら、今日あった事はタチの悪い悪夢だったとでも思って、とっとと忘れた方がいい。明日から、元の平和な日常に戻れ」
それは、彼らを気遣うような言葉の形をとってはいたが、天下崎の内心は別のところにあった。
(こんな素人どもがゾロゾロと加わったら、逆に足手まといになって心配事が増えるだけだ。危険な調査は、俺一人で動いた方が身軽でいい)
しかし、天下崎のその突き放すような言葉を受けても、翼の視線は微塵も揺らがなかった。
「……天下崎さん。さっきも言いましたが俺は、記憶を取り戻す手がかりが、この事故にあると確信しています」
翼は真っ直ぐな、射抜くような眼差しで天下崎を見つめ返した。
「だからこそ、俺は天下崎さんの調査に協力したい。一人で動くより、俺のこの力があった方が、絶対に役に立つはずです」
「おいおい。折角一度助かったその命が、また今日みたいに危険な目に遭うかもしれないんだぞ? 相手は人間の道理が通じないバケモノだ。死んでも文句は言えねえんだぞ」
天下崎が凄みを効かせて脅しをかけるが、翼は怯まなかった。
「なおさらです。そんな危険な場所に、あなただけを行かせられません」
翼の決して退かない意志の強さに、天下崎はしばらく黙り込み、やがて呆れたように鼻を鳴らした。
「……チッ。勝手にしろ。死んでも骨は拾ってやらねえからな」
天下崎が渋々ながらも納得の意を示すと、彼の鋭い視線は残る二人――結衣と凪へと向けられた。
「で? そっちのガキどもはどうする。元の生活に帰るなら止めねえぞ」
名指しされた結衣は、少しの間だけ視線を落として躊躇っていたが、やがて顔を上げ、強い声で答えた。
「……別に、私はその爆破事故に関しては何一つ知らないわ。でも、もし私を毎晩悩ませている異常な『悪夢』が、その事故に何か関係しているのなら……それが分かるまでは、一緒に調査してもいいわ。ここで逃げたら、一生あの夢に怯えて暮らすことになるもの」
結衣の決意表明に、天下崎は短くため息を吐いた。
最後に残されたのは、制服姿のまま縮こまっている凪だった。
凪は膝の上で両手を強く握りしめ、情けなさと悔しさが入り混じったような顔で俯いた。
「僕は……正直、自分でもどうしていいか分からないです」
凪の震える声が、静かなダイニングに落ちる。
「あの時、路地裏で戦闘になった時……僕は恐怖で足が動かなくて、みんなの力に全くなれなかった。今みんなが話している爆破事故のこととも、全然ついていけてないし」
凪は自嘲気味に笑った。
「それに、僕はまだ退院したばかりの病み上がりだし、明日からの学校には行きたい。友達との約束もあるんです」
「なら……」
という天下崎の言葉を凪は遮る。
「……だから、完全に降りるわけじゃないけど、今は一旦保留にさせてほしいです。その代わり、その事故について、一応学校でも聞き込みしてみます。何か僕にも協力できることがあれば、協力します。」
無理もない。つい数日前までベッドで寝たきりだった彼に、いきなり命懸けの調査にフルコミットしろと言う方が酷な話だ。天下崎は、少し考え事をするような顔をした後に答える。
「……まあ、学校の範囲に限ればそう危険はないかもな。だが、無理はするなよ」
天下崎が凪の提案を受け入れると、最後に三人の顔を改めて見回し、冷徹な通告を行った。
「分かっていると思うが、今日あんな事があった以上、これからの行動には常に命の危険が伴うかもしれない。素人の週末の探偵ごっことは訳が違うんだ。俺に同行する以上、勝手な真似は絶対に許さない。俺の言う事は必ず聞いてもらう」
有無を言わさぬその言葉に、翼と結衣が静かに頷く。
「それでいいと言うやつは、明日の午前九時に、駅前のカフェに集合しよう。そこで今後の具体的な方針を決める」
密談の時間が終わりに近づいていることを察知し、四人は急いで各自のスマートフォンを取り出し、連絡先を交換して専用のグループチャットを作成した。
その作業が完了した、まさに数秒後のことだった。
「お待たせー。みんな、お茶が入ったよ」
キッチンの奥から、湯気を立てるお茶の入ったお盆を持った柊生が、いつもの朗らかな笑顔でリビングへと戻ってきた。
四人は何事もなかったかのようにスマートフォンを伏せ、張り詰めていた空気を瞬時に日常のものへと偽装したのだった。
――そして、現在。
駅前のカフェのボックス席で、百合がトイレに立っている間の僅かな猶予。
翼の脳裏から昨夜の密談の記憶がフェードアウトし、目の前に座る天下崎の鋭い声が、再び彼を現実へと引き戻した。
「というわけで、俺たちは予定通りここに集まったわけだが……
高校生(凪)は学校だな」
「ええ。グループチャットに呑気なスタンプが来てるわ」
結衣がスマートフォンの画面を見せながら呆れ顔で言う。
「じゃあ昨日の約束通り、俺たちで情報を整理し、これからの行動方針を固めるぞ」
天下崎はコーヒーカップを置き、テーブルの上の何もない空間を指でトンと叩いた。
「ターゲットは二つだ。一つは、昨日俺たちを襲撃し、今朝のニュースでも女子高生を襲っていたという『黒ローブの男たち』。そしてもう一つは、あの路地裏で俺たちを眠らせた『黄色いレインコートの教団』だ」
「確かに、こんなフィクションみたいな事が現実になった以上、2年前の事故の彼らが関わっている可能性は高そうですね」
翼が相槌を打つと、結衣が手元のスマートフォンを素早く操作し始めた。
「じゃあ、まずは手探りでも情報を集めないといけないわね。オカルト系の掲示板やSNSで、あの『黒ローブ』や『魚顔』に関する目撃情報がないか探してみる」
数分間、無言で画面をスクロールしていた結衣の指が、ピタリと止まった。
「……ちょっとこれ、見て。怪しいまとめ記事を見つけたわ」
結衣がテーブルの中央にスマートフォンを滑らせた。画面には『怪異:川から覗く怪物』という見出しの、いかにも胡散臭いオカルト記事が表示されている。
「『先日、深夜の橋でジョギングしていたYさんが視線を感じて川を覗いた時、そこに魚のような顔の人間がYさんを覗いていた』……だって」
「魚の顔……昨日俺たちを襲った連中か?」
天下崎が顔をしかめ、低く唸った。
「驚いて目を離した隙に、その魚顔の人間は消えてしまったらしいわ。……これってつまり」
「奴らは川や海といった『水の中』に潜伏できるってことですかね。この記事が本当なら」
翼が記事の内容を補足するように言った。
「ちなみに昨日お兄ちゃんが言ってた『海還り』は……ダメね、出てこない。どこで知ったんだろ」
不思議そうな顔をする結衣を横目に、天下崎はスマートフォンから顔を上げ、メンバーを見渡した。
「よし。四人でぞろぞろ動くより、手分けして情報を集めた方が効率がいい。……ひとまず俺は警察署に向かう」
「警察署、ですか?」
「ああ。警察手帳は捨てちまったが、昔のツテがあるんだ。警察がどこまでこの異常事態を掴んでるか、探りを入れてくる」
「気をつけてくださいね」
「ああ。……で、天海と白石はどうする?」
「俺と結衣さん、それに百合は、人が多く集まる大通りやショッピングモールで聞き込みをしましょう」
翼が提案する。
「主婦や買い物客が多く集まる場所なら、二年前の『虹橋デパート爆破事故』に関する当時の噂や、最近の不審な集団についての話が自然に聞けるかもしれません」
「ええ、賛成よ。人目が多いなら危険な目に遭うリスクも下がるしね」
結衣も力強く頷いた。
三人の間で本日の行動目標が完全に固まった、まさにその時だった。
「お待たせー! あー、スッキリした!」
カフェの奥から、元気な声を上げて百合が小走りで戻ってきた。
テーブルの上の張り詰めた空気は一瞬にして霧散し、三人は再び「ただの知人同士の休日」の顔へと戻る。
「おかえり、百合。それじゃあ、俺たちもそろそろ行こうか」
翼が席を立ち、百合の頭を軽く撫でた。
「わかった! 探偵ごっこだね、翼! 私、聞き込み頑張る!で、何を調べるの?」
「あ〜……色々、だよ」
百合が小さな両手でガッツポーズをすると天海が困ったように答える。そのあまりにも無邪気な様子に、天下崎は腕を組み、静かにため息をついた。
「……そうだな。お前らは絶対に大通りから外れるな。狭い路地裏や人通りの少ない所は避けた方がいい。そこの嬢ちゃんも逸れないようにな」
それは単なる気遣いというより、彼らを危険地帯から物理的に遠ざけるための線引きだった。素人が不用意に動けば必ずボロが出る。ならば、無害な場所で時間でも潰していてもらった方が、色々と都合が良かった。
「それじゃあ、それぞれ何か分かったらすぐにチャットで報告だ。危険を感じたら絶対に無理はするなよ」
天下崎の合図と共に、四人はカフェの椅子を立ち、それぞれの目的と深い闇を抱えながら、再び冬の街へと足を踏み出していった。
カフェでの重苦しい作戦会議を終え、四人はそれぞれの目的を果たすべく、冷たい冬の街へと散った。
天下崎星也が単身で向かったのは、彼が二年前まで身を置いていた古巣――夢見ヶ原警察署である。
(……随分と、物々しいな)
警察署の敷地に近づいた天下崎は、コートのポケットに両手を突っ込んだまま、周囲の異様な空気にひどく眉をひそめた。
普段なら市民が各種の手続きや相談で気軽に出入りしているはずの正面ゲートには、厳しい顔つきの制服警官が複数人配置され、周囲を過剰なまでに警戒している。パトカーがひっきりなしに出入りし、無線から漏れる切迫したノイズ交じりの声が絶えず響いていた。
朝のニュースで報じられていた「河川敷での女子高生襲撃事件」。それだけが原因とは到底思えないほどの、異常なピリつき方だ。まるで、見えない「何か」の襲撃に備えて城の守りを固めているかのような焦燥感が、署全体を重く覆っている。
(二年前の虹橋デパートの時と同じだ)
二年前の爆破事故の際、警察組織はあまりにも不自然なスピードで捜査を打ち切った。その隠蔽体質と事なかれ主義に嫌気がさし、自ら警察手帳を叩きつけた天下崎にとって、今のこの過剰な警戒態勢は、彼らが「知っていて隠している」ことの何よりの証明に思えた。
(本当は波風立てずこっそりと情報を引き出したかったんだが……確か連絡がない時は喫煙所に行くんだったか…)
天下崎はスマートフォンのメッセージアプリを開いた。お目当ての相手からは、昨日から一度も返信が返ってきていない事を確認すると、苛立ち交じりの大きいため息を吐く。そして、重い足取りで正面ゲートへと足を踏み出した。
「おい、そこのあんた。止まれ」
即座に、二人の警備員が警棒に手をかけながら天下崎の前に立ち塞がった。
「今日は一般の立ち入りを厳しく制限している。用件は何だ」
「……私立探偵の天下崎だ。刑事課に少し用があってな」
天下崎はわざとらしく懐から名刺を取り出そうとしたが、警備員は冷酷に首を横に振った。
「探偵だの何だのは知らん。現在、署内は特別警戒態勢だ。アポのない部外者は直ちにお引き取り願おう」
(今日は見慣れない顔が多いな。いつもの警備員なら少しばかりは中に入れさせてくれるんだが……)
「部外者ね……。随分と薄情になったもんだな。俺がここにいた頃は、もう少し融通が利いたんだが」
「元関係者だろうが例外はない。帰れと言っているのが聞こえないのか!」
警備員の一人が威圧的に声を荒げ、天下崎の肩を小突こうと手を伸ばした、その時だった。
「――おいおい、よせよ。こいつは俺の客だ」
ゲートの奥から、ひどく気怠げな声が響いた。
シワだらけの安スーツの上に、ヨレヨレのステンカラーコートを引っかけ、口元に火のついていない煙草を咥えた男が、ポケットに手を突っ込んだまま足を引きずるようにして歩いてくる。
年齢は三十代半ばで天下崎よりも少し上だが、いつもだらしない格好をしており、無精髭のせいで年齢以上に老びれて見える。しかし、その両目は獲物を狙う鷹のように鋭く、深い暗い光を宿していた。
天下崎はその顔に、嫌でも見覚えがあった。
「……杉浦刑事。相変わらずの格好だな」
「お前こそ、相変わらず目つきが悪い」
杉浦と呼ばれた男は、煙草を咥えたままニヤリと笑った。彼は天下崎がまだ刑事だった頃の元同僚であり、警察時代はよく薄暗い喫煙所で顔を合わせていた男だ。現在は近年発足された、厄介事や不可解な事件ばかりを専門に扱う『特殊刑事課』という異端の部署に所属している。
杉浦は二年前の「虹橋デパート爆破事故」で、長年付き合っていた婚約者を亡くしている。
その消えることのない喪失を機に、天下崎と杉浦は水面下で奇妙な協力関係を築いていた。互いに決して消えない喪失の傷を共有し、泥水をすするような執念を持つ者同士、二人は年齢や先輩後輩の垣根を超えた対等な口調で接する間柄だった。
天下崎は探偵業で裏の情報が必要な際、情報屋のような立ち位置をする杉浦を頼ることが多かった。杉浦もまた、警察の内部情報を一定の間隔で天下崎に流し、互いに持ちつ持たれつの関係を維持していたのだ。
だが、奇妙なことに、杉浦はあらゆる事件の裏側を饒舌に語る一方で、自分たちの運命を狂わせた『虹橋デパート爆破事故』についてだけは、今まで一度も言及したことがなかった。天下崎が探りを入れても、のらりくらりと躱し、決して核心に触れようとはしなかったのだ。
今日も事前に連絡をして警察署の付近にある建物裏で密かに会いたかったのだが、何か事情があったのだろうかと天下崎は頭を巡らせる。
「杉浦刑事、しかしこの男は……」
警備員が抗議しようとするが、杉浦はそれを面倒くさそうに手で制した。
「いいから通せ。こいつは、俺が追ってる『特命案件』の重要な参考人なんだよ。それとも何か、お前ら警備部が特殊刑事課の捜査の邪魔をするってのか?」
「っ……! し、失礼しました。お通りください」
『特殊刑事課』という言葉の響きに、警備員たちは露骨に顔をしかめ、忌々しそうに道を開けた。どうやら署内でも、杉浦の所属する部署はかなり特異で腫れ物のような立ち位置にあるらしい。
「随分偉そうだな」
「ハッ。お前がここで暴れて公務執行妨害でパクられる前に、俺が拾ってやったんだ。感謝しろよ」
杉浦は肩をすくめると、「ついてこい」と顎で示し、警察署の裏手にある人気の少ない喫煙所へと天下崎を案内した。
「……で? 探偵様がわざわざこんな物々しい日に、古巣に何の用だ」
周囲に誰もいないことを鋭い視線で確認すると、杉浦はようやくジッポライターで煙草に火をつけ、紫煙を深く吐き出した。
「連絡を見る時間が無いほど忙しいんだな」
天下崎は杉浦の横に立ち、冷たいコンクリートの壁に背中を預けた。
「昨日、六丁目の路地裏で……妙な騒ぎがあったらしいな」
カマをかけるような天下崎の言葉に、杉浦は煙草を挟んだ指をピタリと止めた。
「……世間話ねえ。探偵ってのは、随分と耳が早いんだな」
杉浦は短く息を吐き出し、ジッポライターの蓋をカチンと鳴らして閉じた。
「昨日の夕方、都内の路地裏で異常な騒ぎがあったって匿名の通報があってな。目撃者の証言じゃ、お前によく似た大男と数名の連中が路地裏に入った後、路地の奥から不気味な騒音があったらしい」
「……チッ」
天下崎は忌々しそうに舌打ちをし、目を逸らした。
警察というのはこういう時に限って鼻が効くから厄介だ。しかし、事情聴取などで時間を潰される前に、白石兄に車で連れ出してもらえたのは不幸中の幸いだった。警察も、あの路地裏内での具体的な戦闘や、バケモノが溶けて消えたことまでは知らないらしい。
「……で、特殊刑事課さんはあの路地裏にいた可能性のある男に、何の用だ? 事情聴取なら手短に済ませてくれよ」
天下崎は、目の前の元同僚が今はただの情報屋ではなく、警察組織の意向を背負った『特殊刑事課の杉浦』としてここに現れた事を正確に認識した。
「そう気を張るなよ、探偵。……俺がお前に用があるってのは本当だ」
杉浦はそう言うと、くたびれたコートの懐から薄い茶封筒を取り出し、天下崎の胸に無造作に押し付けた。
「なんだ、こりゃあ」
「上からの命令でな、お前に渡すようにと。まあ、俺の情報屋ごっこも筒抜けだったという訳だ。だが、お咎め無しな上に、むしろ協力的なのは予想外だったがな」
杉浦は短くなった煙草を携帯灰皿に押し込み、真剣な眼差しで天下崎を見つめた。
天下崎は黙って封筒を受け取り、中身を引き出した。数枚の資料と、小さなメモが入っている。一番上の書類には『事件概要:神隠し事件』と太字で打たれていた。
「……神隠し事件?」
「二年前からこの夢見ヶ原市で度々起こっている、失踪事件だ。ターゲットにされてるのは、なぜか三十代以上の男女ばかりでな。失踪者はいずれも見つかっておらず、今現在も原因は不明。監視カメラにも不審な点は一切映ってねえ。一般市民には、不安を煽がないようあまりニュースに載せないようにしているから、知っているのは被害者の身寄りか、それこそ特殊刑事課くらいだな」
杉浦は周囲を警戒するように声を潜める。
「ウチで容疑者候補として挙がってるのが、同じく二年前から突如都内に現れた『黒ローブの集団』だ。顔を隠して一般人に『海に還らないか』と怪しげな勧誘をしているという証言から、俺たちは奴らを『海還り』と呼んでいる」
(……海還り。昨日、白石兄が口にしていた名前か!)
天下崎の脳裏に、あの魚と両生類を混ぜ合わせたような化け物たちの姿がフラッシュバックする。
「それと、もう一つ。同じく二年前から現れた『黄色いレインコートの教団』だ。こいつらは海還りとは違って表立った勧誘活動はしていないようだが……あの爆破事故の跡地となった廃墟を拠点にしているという噂も耳にするが、この街は建物が多いからな。今のところ、決定的な居場所は見つけられていない。海還りとの関係性や危険性もまだ調査中だ。いずれにせよ、確定的な証拠が上がってこない以上は、俺らも迂闊に手を出せないのが現状だな」
海還りと、黄色いレインコートの教団。そして二年前の爆破事故の跡地。
天下崎の中で、バラバラだった不気味な点と点が、一本の太い線として繋がり始めていた。妻を奪ったあの悲劇が、単なる事故などではなく、この街の裏で蠢く巨大な狂気と直結しているという確信。
「……なんで突然、警察はこんな機密情報を俺に渡す。今更警察側から協力のつもりか…まさか依頼なんて言わないよな?」
天下崎が鋭く問いかけると、杉浦はふっと肩の力を抜き、いつもの気怠げな表情に戻って腕時計を見た。
「さあな、上層部の考えは分からんよ……なんで今になって『この情報のみ』をお前に渡すのかもな。おっと…もうこんな時間か。特殊刑事課も暇じゃ無いんでね。世間話ばっかしてるのがバレたら、上の連中から何かと文句がきそうだ」
杉浦はコートの襟を立て、踵を返した。
「じゃあな。……探偵」
それだけ言い残し、杉浦は物々しい警戒態勢の敷かれた警察署の中へと戻っていった。
冷たい風が吹き抜ける喫煙所に一人取り残された天下崎は、手元の茶封筒を固く握りしめた。
警察上層部の意図は読めない。だが、彼らが何らかの理由で自分を「泳がせている」ことは明白だった。
【警視庁特殊刑事課】
2023年6月頃に警視庁が発足させた課で、特殊な未解決事件、事故の解明をこの課で行っていくことがニュースで発表された。しかし、その実態は警察の中でも多くは明らかになっていないらしい。
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