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チーズ姫と凸凹従者 ~街道爆走道中記~  作者: 熊猫太郎
第二章:悲劇のブレーメン、DIYの罠
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第6話:外出

結局、ビギーは自宅で「絶対安静」となり、修理のための部品調達が始まった。ビギーと無線通信を繋ぎ、その指示を受けながらパパの容認の下、Clockと共に外出することになったのだ!!


目的地は、地元が誇るプロ仕様DIYショップ、「宝多館(ほうだかん)」。三河の職人たちが「ここになければ世界になし」と豪語する、工具と建材の迷宮だ。


――スチャッ。


「材質、粘度、強度……商品のスペックは全て規格通り。坊ちゃま、こちらがビギーの指定したネジでございます」


Clockは店内の喧騒の中でも、完璧なアテンドを見せる。


ビギーの「インチネジだよ! ビギーはアメリカ生まれのタフガイだからね!」という言葉の通り、指示されるままに部品をカゴに放り込んでいく。


だが、極度の引きこもりである僕にとって、20分以上の歩行は限界を超えるッ!!店内を歩き回るうちに、膝が笑い、意識が朦朧としてくる。


「……痛っ、……もう、歩け、ない……」


「合理的判断を。……レジは私が済ませます。坊ちゃまは店外で待機を」


フラフラとレジをスルーし店の外のベンチに座る僕。Clockは悠々とレジへ向かった。


列に並ぶのは、泥にまみれた作業服の男たち。その中で、一分の隙もないタキシード姿(を模した追加外装)のClockは、異彩を放っていた。


「……お会計、3,240円になります」


「センチュリーブラックカードで。一括でございます」


Clockが差し出したのは、漆黒に輝く、選ばれし者のみが持つカード。店員は絶句した。主人はレジをスルー。執事がその後、数千円のネジを、家が買えるようなカードで支払う。


『……これが、本物の金持ちムーブ……!』


レジ周辺に、一瞬にして緊張が走った。


一方、三河のDIYの聖地「宝多館(ほうだかん)」の駐車場、店外のベンチ。排気ガスの匂いと、切り出されたばかりの木材の香りが混ざり合うアスファルトの上で、僕は深く沈み込んでいた。


「……あ、あうぅ……足が、棒のようだ……」


『なにィッ! たかが20分の歩行で、俺の足が悲鳴を上げているだとッ!この俺は、軟弱なモヤシっ子だと言うのかッ!パパの過保護が、俺の筋繊維をモヤシの食物繊維以下にしてしまったんだッ!』


そこへ、重々しいガラガラとしたディーゼル音を響かせて止まったのは、年季の入ったアフラ・タイタン。運転席から身を乗り出したのは、あのタウンコーナーショップで見かけた、鋭い眼光の男――とくさんだ。


「……お?あん時の、コーナーショプのボウズじゃねぇか。こんなプロの店で、何油売ってんだ?」


「あ……そ、その……えっと……」


心拍数が跳ね上がる。コミュ障全開だッ!!そこへ、レジで「はした金をセンチュリーブラックカード決済」という伝説を残したClockが、無機質な歩調で合流した。


「坊ちゃま、部品の調達は完了いたしました。……おや、このカーボンユニットは?……タイタン。積載量過多、および整備不良の疑いあり。ですが、エンジン調整は極めて精密に行われていますな。論理的ではありませんが、職人の執念を感じます」


「ヘッ、電動機械にゃこのアツさは分からんだろうよ」


ARメガネを「スチャッ」し、0.1秒でスキャンしたClock。それに対しとくさんは鼻で笑うと、タイタンの窓から、汚れ一つない真っ白な軍手で、一枚の名刺を差し出した。


「よくわからんが、困ったことがあったら連絡しろ。……機械を愛してる奴は、嫌いじゃねぇ」


ガサツな口調。だが、その名刺を受け取った僕の手は、なぜか少しだけ温かかった。とくさんはそのまま、タイタンのトップギアまで叩き込んで黒煙を放出しながら走り去っていった……

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