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チーズ姫と凸凹従者 ~街道爆走道中記~  作者: 熊猫太郎
第五章:三河のナポレオン、電子の洗脳
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第14話:認可

ピースキャッスル市役所での「二足歩行原付」登録という、行政の歴史を塗り替える暴挙(合理的認可)を経て、ビギーは正式なナンバープレートを手に入れる。だが、自由への切符である運転免許証を持たない僕にとって、それはまだ苔玉を飾られただけの鉄塊に過ぎない。


そこに、いつもの戦場から容赦ない長距離射撃が届く。


――――――――――――――――――――――――――――――


MIKA@修行中: なにそれwww二本足でナンバー取得? ナポレオン気取りwww 跨ってるのが白馬じゃなくて、煤けた苔玉ぶら下げた駄馬なのがウケるんだけどwww 認可も免許も取得できないでしょwww


――――――――――――――――――――――――――――――


『な、何ィッ! ナポレオンだとッ! 最高の褒め言葉じゃないかッ! ……と言いたいところだが、駄馬とは聞き捨てならんッ! ビギーは、とくさんの彫金が刻まれた、三河が生んだ孤高のサラブレッドだッ! 見ていろ、この俺が免許という名の“王冠”を戴く瞬間をなッ!』


僕は、怒りに任せて愛知県警察の原付免許試験案内を叩きつけた!手元には、パパと懇意の医師が忖度の限りを尽くして発行した障害者手帳3級がある。


「30分以上の立位・歩行不可」という、運動不足による膝の笑いを「下肢不自由」として定義したマジックカード。これが、ビギーの異形な形状を「移動支援器具」として正当化する最大の武器となる…らしい。


――時を少し遡る。


市役所の市民税課窓口では、一人の若手職員が、目の前の「光景」に冷や汗を流していた。


「……あの、Clockさん。おっしゃる意味が分かりません。ロボットが、別のロボットを改造した車両を登録しに来るなんて、前例がありませんし……この図面、どう見ても重機か、あるいは二足歩行の軍事兵器ですよ」


「合理的判断を下してください、新型のカーボンユニット職員・山本殿」


ClockはARメガネをスチャッと直し、書類の束を提示する。


「定格出力0.6kW以下。灯火類、制動装置は法定基準内。そして何より、これは身体障害者福祉法に基づき、歩行困難な坊ちゃまの脚を補うための特殊介護改造車両でございます」


「ですが、形状が……」


「おい、何を揉めている」


後ろから、威厳を纏った課長級の上司が現れた!バックアタックだ!!


だが、上司は書類に記された「パパの会社」のロゴと、Clockの胸元に輝く超富裕層向けシリアルナンバーを見た瞬間、角質が全て剥がれ落ちる速度で両手を揉みだしたのである。


「お待たせして申し訳ない、Clockさん。……山本君、法律の条文に書いてあることが全てだぞ? 君が勝手にロボットだからダメだと主観で判断して、納税の機会を奪うつもりか?情報をアップデートしたまえ」


「課長! ですが、これ二本足ですよ!?」


「何が問題だ? 接地条件さえ満たせば二輪と定義できる。しかもこれは、不自由な脚を補うための移動支援器具だ。これを拒むのはバリアフリー法への挑戦か? 市の方針に逆らうつもりか」


上司は、山本の手から書類をひったくると、自ら判子を叩いた。


「全く最近の若いモンときたら…。さあ、さっさと標識を出してこい。…一番良い番号をな」


こうして、ビギーは「役場認定車両」としての地位を確立したのである。例え尾木川巡査長に呼び止められても、公的に「公道走行OK」を突きつけられる最強の盾となるのだッ…!!




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




免許取得当日。僕たちが向かったのは、フラットニードル運転免許試験場のすぐ近くに佇む、怪しげな看板の学習塾。通称、「ヘッドショットスクール」。


原付免許を受験する愛知の若者たちが、藁にもすがる思いで駆け込む「一発合格の聖地」である…!!


「……あ、あの……予約した、……者、です」

※消え入るような声


「はいはい、存じております!坊ちゃまですね! 申し訳ございませんねぇ、あいにく講習室が受講者でいっぱいでして。…こちらの個室へどうぞ!」


店員は、奥の密室へと案内した。そこは、本来の「早朝講習」の部屋とは一線を画す、ハイテク機器に囲まれた空間だった。


「わぁ…ビギーに聞いてたのと…同じ…勉強方法だね。……よし、頑張るぞ」


『フッ! 勉強など、この俺の明晰な頭脳にかかれば赤子の手をひねるようなものッ! ビギーが言っていた勉強…いや、短期集中教育の実力、見せてみろッ!』


渡された特殊ゴーグルをガバッと装着した。視界に走る、暴力的なまでの光の点滅と情報量。


店員が用意した「学習コース」は、学習というよりは、網膜に正解パターンを直接焼き付ける視覚誘発電位を利用したデータ転送であった。数分後、ゴーグルを外した瞳は、どこか虚ろながらも、道路交通法の全てを理解した万能感に満ちていた。


「…いける…ミッション…コンプリート…?」


「マスター、これが愛知の合格セオリー!ヘッドショットスクール、評価☆4の実力だよ!」


ビギーのハルシネーション(洗脳)と、パパの権力が生んだ「ヘッドショット(洗脳)」が、一人の引きこもりを最強の受験マシンへと変貌させていく――

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