第12話:緑化
「ガガガガッ!ズシャァーッ!!」
ガレージの前でテールスライド気味に止まったタイタンからとくさんと共に降りてきたのは、プラカードを掲げたとくさんの娘、みどりだった。
「お父さん! こんな支配者に汚染された塊を改造するなんて、地球への反逆よ! だったら私が救済するしかないじゃない!」
「うるせぇよみどり、 仕事中は黙ってろよ!?……おいボウズ、こいつは俺の娘のみどりだ。どうしても付いてくるっつってな…無視していい」
「あ……そ、その……えっと……初めまして……」
※消え入るような小さい声
「へぇ…あんた、支配者の一族にしてはおとなしいわね…だからと言って、容赦はしないわよ!?」
『緑のアフロだとッ!? なんだそのモザイクみたいな服は…ッ!?…パパの着ていた服と同じ模様のパーツもあるぞ!?わからんッ!流行りの模様なのか!?陰キャにファッションの事はわからんッ!!視覚情報が過多だッ! 何だその、世界を救いそうなオーラはッ!だが……この子も、三河の闇の被害者なのか……?』
「とくさん殿、こちら取付用の汎用部品及びエンジン一式となります。各種ハーネス等、必要なものは揃えてございます。組付けは各部嵌合をみて調整を」
「ちょっと、何なのよこの電気羊は!電動じゃないの!電波を出しているわね!?電波は悪なのよ!!How dare you!」
「おう、ありがとよClock。んじゃ、とっとと始めるか。おいコラ、みどり、……静かにしとけよ」
そしてついにビギーの原付への改造作業が始まる。
Clockが手配した新原付基準の4ストロークエンジン、ヘッドライト、ウィンカー、テールランプ、ブレーキランプ、バックミラー、速度計、ホーン、ナンバーステー。それらの汎用品が美しいアルミ合金によるパパ特注の専用削り出しブラケットによりビギーのフレームに着々と装着されていく。
ビギーは、最新のジャイロ制御によって、四足歩行から「二足歩行スタイル」へと変形。二輪車だと言い張るための驚異のバランス感覚だ。その足先には、路面を傷つけないよう、特製シリカ配合のゴムが装備された。残りの2脚は、緊急停止用のブレーキアームとしての再定義…!
だが、ここでみどりのターン!!
「甘いわ! こんなんじゃまだ排ガスがクリーンじゃないわよ!! この『まりもみたいな苔玉』をマフラーに着けなさい! これが触媒よ! これぞアースコロジーだわ!」
みどりはビギーのマフラーに、禍々しい緑色の苔玉を力任せにグイグイとねじ込んだ。
「……やめてよぉ、なかはだめだよぉ…排気圧が上がって、燃費が悪化してるよぉ……熱いよぉ……ブォォン」
「…おい。みどり、やめろ。…せめて外付けにしろ」
とくさんが訴えるが、みどりの勢いは止まらない…!!
「さらに、このブレーキアーム! 空き缶やゴミを片付けられるように自動制御しなさい! 完璧なアースクリーンアームの誕生よ!」
※実際には、ビギーがゴミを認識すると、主人の視界外へ超高速で蹴飛ばし、画面外に消し去るだけの野蛮な機能である
「クラクションも電子音なんて汚いわ! 私の声を録音して! 『Our house is on fire!』……これで賞賛を皆に伝えるのよ!」
「そのような特定のリズムや音声は、道路運送車両の保安基準における警笛として認可されておりません」
「How dare you!、うるさい電気羊ね! なんとかするのがあんたの仕事でしょ!!」
「…コラみどり、やめろっつってんだろ、座んな」
ClockがARメガネをスチャッとし反論するも、みどりはガレージの床にプラカードを掲げつつ特技の座り込みをし、デモを開始した…!!
「……了解いたしました。時間軸を超圧縮し、連続で配置し結合させれば、カーボンユニット(人間)の可聴域ではほぼビープ音になります。……これでよろしいですな?」
「そう、それならいいわ。それだけ多くの声が皆に届くということでしょう? 最初からそうしなさいよ、使えない電気羊ね!」
『何…?え?どういう理論だ?わけわからんッ!!…誰か教えてくれッ! 』
「…そ、そうなの…?」
「マスター! エコカー認定で税金永年免除だよ! 吸気より排気の方が綺麗になった気がするよ!ブォォォォン!」
「そうよ!あんた、ビギーと言ったわね!?私が保証するわ!だって地球素材だもの!!」
「……ございません」
Clockの冷静なツッコミが、ガレージで空虚に響く――




