序章
初めまして。私の小説に、手をかけてくださりありがとうございます。誤字脱字など不備がないように注意をはらいましたが、あれば申し訳ございません。
私の拙い作品ですが、ご愛読よろしくお願いします。
____毎日、退屈で窮屈で息苦しい
「貴方、生きてる?」
「……ぁ、あ」
ゲホッと吐いた血はドス黒い。致命傷をおったのだろう。
「貴方、生きたい?」
「……なにがもっ、ゲホッゲホッ」
木にもたれかかっていたが、咳の反動で蹲ってしまった。この青年は助かる余地はあるのだろうか。
「取引しましょ。私は貴方を助ける、そしたら貴方は私と暮らす。どう?」
「ハハッ……、ぃいぜ、綺麗な、お嬢さん」
古傷に生傷が交差しあっている腕と華奢で色白く絹のような腕が握手をした。
「これからよろしくね、私の可愛い犬」
青年は、コクリと頭を落とし意識を失ってしまった。豪雨の中、何分間、何時間、冷たい雨にされされながら血を流し続けたのだろう。冗談なんて言っている間に、青年は死ぬだろう。
「さぁ、新しいお家に行こうか」
❊❊❊❊❊
俺は、戦争孤児だった。ただ不幸中の不幸中の幸い。戦争中だったら、孤児は兵士として用いられるため、衣食住は保証された。命は保証されなかったが。
俺の国は戦争国だった。とにかく戦争をよくする国で、小国を狙い植民地にしてはそのくり返り。記憶はないが、多分両親は戦争によって死んだと思う。こんな事ばかりをしていたら、大帝国であるどっかの国に目をつけられてしまった。当たり前だろう、なんて馬鹿な王様だ。戦争に参加しない、兵士にならない、なんて言う選択肢はお偉い貴族にしかなくて孤児である俺には戦争しかなかった。戦争のない時期は、衣食住なんてものはなく毎日窃盗をして生き延びてきた。
しかし、俺は神様には見放されていなかったと思う。じゃなかったら、戦地の前線をろくな武器を持たずにどうやって10年も生き延びる。剣と銃の才能だけはよかった。捨て駒呼ばわりされていたが、今では多少はマシになった。実際、捨て駒なのには変わりないが。
いくら剣と銃の才能があっても、“オーラ”を使えなかったら、魔法士には敵わないということをこの戦争で俺は知った。近距離だろうが遠距離だろうが自然だろうがなんだろうがお構い無しのチート集団。火の玉に強風、デカイ氷柱、雷。初めて、魔法士が戦っているところをみたが、確かにこれは国宝級だ。俺の国には、3人ほどしかいないそうだが、大帝国様は、30人以上いるらしい。負け戦だ。
ただ、戦争中に負け戦だの敵わないだの余計なことを考えれば死ぬのは国じゃなくて俺だ。負けても俺が生きてさえいればいい。愛国心なんて産まれる前からないんだからな。
戦術や作戦なんて、読み書きすらできない俺に出来ると思うか。小賢しい真似くらないならできるさ。砂を目にぶっかけるとかな。だから、生き延びる方法だけを考えた。自分のことだけを。これくらいなら俺にだってできる。今までそうやって生きてきたからな。ただ、いくらなんでも相手が悪すぎた。剣を扱う者なら一度くらい耳にする名がある。
___ヴィアラクテア・ド・フラーテル
オーラを使える剣士で、剣という武器の常識的な攻撃力の範疇を大きく空高く越える剣術を持っている。全てはオーラのおかげとか。大帝国だけではなく、世界中に名を馳せる剣の名手だ。そんな奴があの戦場にいた。大袈裟すぎだろと味方兵士の話を鼻で笑っていた自分を殴ってやりたい。噂以上だ。魔法士3人にこいつの攻撃まで避けなければならない。土に大きな穴を掘って埋まりたい。
愛国心だの家族を守るだの名誉ある死だとほざいている奴らは、馬鹿みたいに突っ込んで行っては死んだ。
ただ、自分も笑ってはいられない。馬鹿みたいに突っ込もうが考えて攻めようが死ぬ未来しか見えない。俺はただひたすらに隠れた。味方や敵の死体に隠れながら攻撃を避け撤退命令が出るまで、敵が攻撃を辞めるまで。雑魚の兵士を蹴飛ばしながら、持ち堪えた。気づいたら、味方で立っている奴は誰一人居らず俺だけだった。
「…………」
ヴィアラクテア・ド・フラーテルと目が合った気がする。否、あった。じゃなかったらどうしてこんなにも鼓動が煩い。本能で解る、死ぬと。
恥もプライドも生きるために全て捨てた。そんなもの持ってたって金にはならないし腹も膨れない。だから、逃げた。あいつから逃げるために。近くの森に逃げ込み、さまよった。この森は動物が多く、何度が死ぬところだった。3m越えの熊に狼の群れ、銃の弾は切れるし剣はボロボロで戦えない。オマケに丈夫で風邪も引いたことがないし、腐ったものを食べても腹をくださないこの身体も限界が来た。大量出血に飲まず食わず。拷問とばかりに豪雨まできた。不運の連発だ。
____「貴方、生きてる?」
ぼんやりと見える踊る炎のような赤髪。俺はいつも不幸中の不幸中の幸いで生き延びる。ゴキブリみたいな生命力だと笑ってしまう。
「これからよろしくね、私の可愛い犬」
モン……?は?と考えると頭の中が真っ暗になった。
❊❊❊❊❊
「……っ、ここは。うわっ、なんだこのベッド」
バネでも入っているのかふかふかで、弾力がある。初めてちゃんとしたベッドで寝た。こんなにもいいものなのか。
身体中が痛むが、よく知らないやつの家で呑気に寝ていられない。産まれたての子鹿のように足が震えているが歩けるので問題ない。
「あら、もう起きたの。丈夫な身体なのね」
「お前は……。何が目的で俺を助けた。奴隷でも欲しくなったのか?」
「そう威嚇しないで、傷に響くわ私の可愛い犬」
扉の向こうには赤髪の女がいて優雅にお茶をしながり本を読んでいた。
「モンジョ……あ?んだよそれ」
「なんでもないわ、ただの呼び方よ。それよりお腹空いたよね。スープはどう?」
「生憎、俺は貴族様だからな。庶民の食いもんなんて食べたくねぇよ」
「あら、私そのようなジョーク初めて知ったわ。貴方面白いのね」
クスクスと上品に笑いながら、スープ今温めるわねとキッチンに向かった。ジョークでもなんでもなくただの嫌がらせだ。こちらの悪意になんの嫌悪感も示さずにニコニコのしている女に若干だが、若干ほんの少しだけ罪悪感が芽生えてしまった。
身体中にあった傷が癒えているのもあれば包帯が巻かれている。感謝の言葉一つ述べるべきだが、そんなもの俺は知らない。
「そこに座って。コンソメスープよ」
「……」
なんと言うべきかわからず、口がモゴモゴのして黙ってしまった。
「私はラヴィリーナよ。一昨日から、貴方は私と住むことになったわけだけど、貴方何ができるの?」
「……お前、目が見えないのか?」
初めて暖かいスープを口にして、感動していたせいで、ラヴィリーナの話なんて一切聞いていなかった。そんでもって失礼だ。
「ラヴィリーナ、と言ったはずよ?」
優雅に紅茶を飲んでいるはずなのに、威圧感が凄い。思わず身体に力が入った。
「ラ、ラヴィリーナは目が見えないのか?その、レースは」
「見えるわ。このレースはね、他者から私の目を見えなくするためなの」
「?なんの意味があるんだ」
「……内緒よ」
黒いレースが無ければ、ラヴィリーナは絶世の美女だっただろう。いや、あっても美しさは損なわれていないが。なにが美しいというより、全てが美しく全体が美しい。輪郭、肌、声、髪、上げたらキリがない。
「それでもう一度聞くわ。貴方、何ができるの?私の可愛い犬」
「何ができるって……。あー、剣と銃だな」
「それはいいわね。お料理やお掃除は?」
「したことねぇ」
「したことがない?……そう、そうそうへぇ〜。貴方って本当にお貴族様なの?」
心底驚いた顔で俺の顔を見た。
「あ?喧嘩売ってんなら買うぞ」
「なんでそうなるの。お料理もお掃除もしたことがないんでしょ?侍女達がいるから」
「お前は、衣食住のねぇ生活を知らねぇみたいだな。衣食住がなかったらお掃除もお料理もクソもねぇだよ」
ラヴィリーナの家や服装を見るに裕福なんだろうな。空腹で寝れない夜なんてなかったんだろうな。このまま凍え死ぬんじゃないかって、明日の朝日が恋しくなる事はないんだろうな。
「お前のお陰で死ななかったことには感謝するが、もう出てく。お前みたいな裕福な人間と過ごすなんて真っ平御免だな。じゃーな」
空にした皿を後にして、席から立ち上がった。
「“お座りよ 私の可愛い犬”」
「誰がっ、か、身体が……!!」
「取引したでしょ?私の可愛い犬」
「クソがっ……!」
反抗しようにもできず。その場に無様に膝まづく……“お座り”している。
「もう少しお話しましょうか」
ラヴィリーナは、紅茶を一口飲みこちらに頬杖をし顔を向けた。
「私が貴方の命を助ける代わりに私は貴方に頼みたいことがあるから取引したのよ、わかる?」
優雅であるが、どこか強者特有の威圧を感じるのは気のせいだろうか。
「できないのなら教えるわ。お料理にお掃除、言葉遣いその他諸々ね。面倒臭いだの泣き言は一切受け付けないから。……さぁ、もう反省したかしら?私の可愛い犬」
「……何時までだ」
「いつまで?ああ、取引の期間の事ね。……まだ、わからないのよね。短くて四、五ヶ月ってところね」
「はぁ?!巫山戯るなよ!長すぎるだろが!!」
漸く、“お座り”から解除され立ち上げれた。ラヴィリーナの言葉に納得ができず、ラヴィリーナの元まで行き、睨みつけた。一方、ラヴィリーナはこちらを見るも困った子ね、とでも言うような顔をされ余計に腹が立った。
「貴方は自分の命にどれだけの価値があると思う?まだ10代そこそこでしょ?寿命は多く見積って後60年ってところね。貴方なら、いくら出す?」
「……俺に価値なんてねぇよ。俺は孤児だ。奪う、殺す、それしか能がねぇゴミだ。あんたが、ラヴィリーナが俺に何を期待しているか知らねぇが、少なくとも俺は執事に向かねぇよ」
道端で死んでも、心配されるどころか怪訝な顔をされ蹴られるような虫ケラ同然の孤児である俺になんの価値がある。
俯いたまま、自分を嘲笑してしまう。あまりにも無様で哀れだな、と。
「この国では、成人男性の心臓、肺、血液、歯、髪、その他諸々の臓器を闇市で売ったらいくらになると思う?17億$よ。つまり、私の手元には17億$があるの。価値がないなんて言わせないわ」
「じゅ、じゅ、17億、だと……?!」
「ええ、臓器移植よ。お貴族様たちに売れるんですって。良かったわね、貴方は17億$の価値があるだなんて」
クスッと悪戯に笑うラヴィリーナに、ドキッとしたのは気のせいだ。きっと17億$とかいう大金のせいだ。
「私は17億$と取引をしたの。四、五ヶ月はここにいてもおかしくないでしょ?わかったなら、返事をして私の可愛い犬」
「わ、わかった」
今日から晴れて、ラヴィリーナに使われることになった。
最後までご愛読いただき嬉しいです。
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