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地味な悪役令嬢は卒業します!せっかくですから着飾ってやりますわ!  作者: 柊 花澄


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7 侯爵令嬢ディアナの憤慨


 あの娘が学園に来てからめちゃくちゃだわ!

 なんとかプリムローズ様を励ましたいけど、どうすればいいかしら。


◇◇◇


 私はグラナタス侯爵家の長女ディアナ。

 家族は社交界きっての情報通の父と、社交界の華と呼ばれる母、そして年の離れた弟。

 私は母譲りのラベンダー色の髪とガーネットの瞳をしていて、なかなかの美人だと自分でも思う。髪はコテでくるくる巻いてツインテールにしている。今のお気に入りの髪型だ。 


 私は現在、貴族向けの王都の学園に通っている。

 最近、ある娘が学園に編入してきた。ハニーブラウンの髪に空色の瞳の小柄な娘で、名前はデイジーというらしい。

 デイジーは元は平民だったけれど、ある日突然聖女の力が発現し、ガスタイン伯爵家の養子になった。

 

 この国では聖女がまれに誕生する。聖女は国で手厚く保護されて、貴族と同等の身分が与えられる。

 聖女の仕事は、毎日神殿で祈りを捧げること。祈りを捧げたらどうなるかって? 国の平和が保たれるらしいの。国を癒やす力、っていうのかしら。


 聖女の力って意外とぼんやりしてるのね。もっと目に見えてすごい力かと思ってたわ。怪我を治癒するとか、結界を張って他国の兵の侵入を防ぐとか。

 私が読んだ幻想小説に出てくる大聖女は、一度に千人の負傷兵を治癒していたわよ。


 ちなみに聖女認定には神殿の水晶を使うらしい。水晶に手を翳して光ったら聖女認定されるの。

 水晶が光ればその後の聖女の生活は安泰だし、聖女を擁立している教会派も力を持てるし、なんだか胡散臭いと思うのは私が捻くれてるせいかしら。


 それで私は聖女という存在に懐疑的で(ふーん、この学園に聖女がくるのね)くらいの感想しかなかったのだけれど、実際にデイジーを見て仰天した。

 

 デイジーはとにかく男子生徒との距離が近い。貴族として到底許されないレベルで近い。

 まず男子のことを「ジェフさまぁ」などと甘ったるい声で呼んでいる。両手を胸の辺りで組んで、瞳を潤ませながら相手を見上げるのだ。

 大抵の男子生徒はその仕草にコロッといってしまう。庇護欲をそそるのですって。同性から見るとあざとい女だとすぐわかるのに。男って単純な生き物なのね。


 デイジーが厄介なのは、そのあざとい仕草を婚約者や恋人がいる男子にも向けている所。そうやって波風を立てまくった結果、破局寸前のカップルが何組も出てきている。


 そして特に最近目に余るのが、フェリクス殿下との距離感! 四六時中ベタベタと腕に絡みついているのよ、ありえない!

 だいたいフェリクス殿下もどうかしてるわ。突き放しなさいよ。優しくするから調子に乗るのよ。ああいう手合いは、はっきり言わないとわからないんだから。


 そうやって家で憤慨していたら、情報通の父が教えてくれた。フェリクス殿下は聖女の面倒を見るように国王陛下に命じられていて、無碍には出来ないらしい。

「聖女殿の機嫌をそこねて、神殿に祈りを捧げてくれなくなると王家も困るだろうからなあ。ハッハッハ」と父は笑っていたけど、笑い事じゃないわよ。


 でもなるほどね。いきなり最終学年しかもフェリクス殿下のクラスに編入できたのも、デイジーが生徒会に加入できたのも、学園に圧力がかかっているわけね。これは教会派が本気で王太子妃の座を狙いに来るんじゃないかしら。


 はあ、それにしてもプリムローズ様が可哀想だわ。

 フェリクス殿下の婚約者のプリムローズ様は、誰もが認める美女。国一番と言ってもいい。


***


 初めてプリムローズ様を見たのは、十年前の王宮のお茶会。はっきり覚えているわ。

 あの日のお茶会は、第一王子の婚約者選びの場だったこともあって、両親がものすごく気合を入れて、私を飾り立てたのよね。

 オーダーメイドのピンクのドレスには、宝石がこれでもかって位に縫い付けられていたし、髪もグルングルンに巻いて、花とリボンで盛大に飾られたわ。

 両親も「ディアナが一番可愛い、婚約者はうちの娘で決まりだ」と絶賛してくれたし、実際に会場では私が一番目立っていた。


 第一王子のフェリクス殿下は、令嬢に囲まれて爽やかな笑みを振りまいていた。

 私はフェリクス殿下のような綺麗な王子様より、実はもっと逞しい人が好み。お姫様と護衛騎士の恋物語を読んで以来、勇敢な騎士様に憧れているの。


 あまり気乗りせずに周囲を見渡していると、人だかりから離れた所にポツンと立っている女の子がいた。ドレスもなんだか地味だし、王子様には興味ないのかしら。

 私は興味本位でその子に近寄って、そして衝撃を受けた。だって近くで見たら花の妖精みたいに可憐な美少女だったのだ。こんなに可愛い子、今まで見たことない! 私は思わず、頭の先から足元まで凝視してしまった。

 私の不躾な視線に気づいたその子は俯いてしまった。


「ごきげんよう。あなた、お名前は何というの?」

「ごきげんよう。わたくしはアメティスト家のプリムローズと申します」


 あら公爵家の子だったわ。さっき母を含む貴婦人集団が「麗月の公爵様だわぁ素敵ぃぃ」と囲い込んでた超美形の紳士は、この子のお父様なのね。

 流石に貴族の序列は習っているので、非礼を詫びて名乗らなきゃ。そう思ったが、追いかけてきた母に「さあさあ、フェリクス殿下にご挨拶に行くわよぉ」と強制連行されてしまった。


 あのお茶会の後、第一王子の婚約者がプリムローズ様に決まった。新聞の一面を飾った二人の絵姿を見て、私の両親はがっかりしていたけど、私は当然の結果だと思った。

 可憐なあの子が王子様に大切にされて幸せになる姿を想像して、まるでおとぎ話のようだわ、と心が弾んだ。

 

***


 なのに学園で再会したプリムローズ様は、感情が抜け落ちた人形のような表情をしていて、全然幸せそうには見えなかった。

 父の情報によると、王太子妃教育で品行方正やら貞淑やらを徹底して教え込まれているらしく、異性に対しての隙のなさは尋常ではない。

 同じクラスの男子と話しているのを見たことがないし、用事があるときは共通の知り合いの女子生徒を介しているという徹底ぶり。王家の教育って怖すぎるわ。


 そんなわけでプリムローズ様は、異性の友人がたぶん一人もいない。同性も気後れしてしまうのか、話しかけているのは私のように自己肯定感の高い女子数人だけだ。

 本当は皆プリムローズ様と仲良くしたいのに、見えない壁に阻まれてお近づきになれないみたい。


 最近、不穏な噂が出回り始めてプリムローズ様はますます元気がない。なんとか力になれないかしら。


 プリムローズ様は、この状況にもっと怒ってもいいと思うわ!


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