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Pℓay!郵便局 ③

未来はまだ頬を赤くしていて、目元には涙の跡がくっきりと残っていた。

 俺は受け取った“未来の手紙”を胸ポケットに押し込みながら、静かに深呼吸をする。


「新垣さん……泣いてるの? 大丈夫?」


 声をかけると、未来は慌てて指の背で涙の跡をこすった。


「あ、ち、違くて……これは、その……」


 言い訳を探すように視線を泳がせているが、泣いた事実を隠せるはずもない。


 俺はそっと、未来の手に触れた。

 その指先が少し冷たくて、胸の奥がチクリと疼く。


「……無理しなくていいよ。“未来の手紙”って、感動して泣いてる人もいっぱいるって、さっき、郵便局の人も言ってた」


 その言葉に、未来の肩がわずかに揺れた。

 張り詰めていた心が、ふっと解けたように見えた。


 だが次の瞬間。


 未来の瞳がまっすぐ俺を捉えた。

 驚いたような、確かめるような表情。


「……空野さんも泣いてた?」


「泣いてない。ゴミが入っただけだ」


 即答した。

 したけど、未来の目が「嘘つきですね」と言っている。


「嘘。そんな顔、初めて見ました」


 未来は胸ポケットのほうへ視線を落とす。

 そこには、AIが作った俺の“20年後の手紙”が入っている。


「まさか……空野さん、20年後の自分に怒られた?」


「怒られてない。忠告されただけだ」


「ふふ……そっちのほうが深刻そう」


 未来は涙の名残が残る目で、いたずらっぽく笑った。

 泣き顔のまま笑うから、余計に胸が締め付けられる。


 そういう笑い方をする時の彼女は、いつもより強く、そして脆い。


「そろそろ場所移動しよう」


 俺は気恥ずかしさをごまかすように言った。


 未来は涙を指で拭いながら、小さくうなずく。


「……行きましょう。せっかくの万博ですし」


 その声は微かに震えていた。

 さっきまで泣いていた余韻が、まだ胸の奥に残っているような声音だった。

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