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バイオマシン


2083年10月 神奈川県 国防省統合軍参謀本部

 コードネームBM-001、人型兵器バイオマシン。

 生体(有機体)と機械(無機物)をシームレスに結合させたいわば大型のヒューマノイドである。

 フルフロートジョイントを稼働部に持つカルシウム含有超硬質軽量合金を骨格とし、培養液内で筋肉、神経、血管の各組織を構築、それを骨格に配置後、機能性高分子ゲル化人工皮膚で覆い、その上に高強度ゲルの装甲を纏う。その全高は20メートルほどになる。

 小型核融合炉を使った発電システムでポンプを回し、生体組織へカートリッジバックから稼働に必要な酸素及び栄養源を送る。

 操縦は胸部にあるコクピットに搭乗してレバー操作によって行う。この時、AIを通して変換された電気信号が神経繊維から筋肉組織へと伝わり各種動作が可能となる。

 もとは主に再生医療として研究された技術だったが、核に代わる最終兵器としてアメリカと日本との共同開発として軍事転用された。


 「バイオマシンの情報開示に、政府はかなりごねたそうですが」

 国防省統合軍中佐篠原大輔(だいすけ)は、参謀本部本部長室の中央におかれた応接セットの長椅子の横で立ったまま、窓際におかれた大きな机の奥に座っている本部長の大川平蔵に向かって言った。

 「まぁ、座りたまえ」

 大川はそう言って立ち上がると応接セットに行き、ソファーに腰掛けた。それを見て篠原も座った。

 「見かけはな。政治家は(かね)もしくは名誉がもらえればいいだけのことだ。世界を救うために一大決心をした総理は歴史に名を残す。またバイオマシン製造のための施設の建設は日本企業の独占。その企業が海外へ出れば企業も儲かり、キックバックで政治家も儲かり・・・。」

 大川は眼鏡を外すとテーブルにおき、続けた。

 「バイオマシンの基本技術はどの国でも再生医療で行っているものと同じだ。それを軍事利用しただけで何も目新しいものではない。問題はそのコントロール系だ。自分の手足のようにダイレクトにコントロール出来ればいいのだが、まさか直接脳と接続するなんてことは考えないだろうからな」

 篠原はこの大川の言葉の意味することに気がつかなかった。

 「AIのサポートで、かなり操縦は楽になったと聞きましたが」

 「ただ単に動かすということに関しては全く問題ないレベルだ。しかし、戦闘ともなるとコントロール系の負担は大きく、さらに筋肉の動きも合わさるとかなりの発熱量になるとのことだ。夏なら、きついだろうな」

 どこか他人事のような大川の言葉に、篠原は笑いをこらえた。

 「奴らの侵攻は、なぜか今は落ち着いている。アメリカ、ユーラシアなど、大きな大陸を食い尽くして腹が膨れたのかもしれん」

 確かに、ケルベロスが初めて出現した時の勢いが続けば、数ヶ月で人類は絶滅するのではないかと思われた。しかし、その後ケルベロスの出現は激減していた。一見冗談と思えるような、腹が膨れたと言う大川の表現もあながち間違っていないのではないかと篠原は感じた。

 「奴らが何を基準にしているのかはわからんが、いずれ日本にも穴があくと考えた方がいいだろう。そのときのために野嶋君が動いてくれている。完成したときには、誰も口出し出来ないものとなる。そのための根回しはしてきたし、これからも進めるつもりだ。以後、現場で君は、君の判断で動いてもらえればいい。問題があればすべてわたしが処理する」

 『そう言えばあれも死者が出たにもかかわらず表には全く出なかったな』

 篠原は先日起こったバイオマシン研究施設での事故のことを思い出した。

 大川は篠原を見ると、笑いながら続けた。

 「まぁ、早いうちに上に立つ苦労をしておくのもいいだろう」




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