第四章 陰謀の始まり
「リゼール、あなた最近エリザベスと親しくしているそうね」
セシリアがそう言ったのは、エリザベスに話しかけてから数日後の事だった。
彼女の目には、私が裏切っているように映ったらしい。
悪役令嬢さまは意外と観察眼があるらしい。
しかし、これしきの事で動揺する訳にはいかない。
私は平静を保ちながら慎重に答えた。
「お嬢様、それは誤解です。私はエリザベスを監視するために近づき、仲良くするフリをして行動を把握しているのです。お嬢様の都合の良いように利用する為に」
セシリアは少し考えた末、「そうね」と言って頷く。
「……あなたなら、そんな策を考えるわよね。まぁいいわ。これからもエリザベスを見張りなさい」
だが、その言葉の裏には、疑いの目があった。
セシリアの信頼を失わないよう、慎重に行動する必要がありそうだ。
気を付けなければ。
「あなたは私の右腕よ。忘れないでね」
「もちろんです、お嬢様」
この時、私がセシリアを脅かす存在である事に、セシリア自身が気づき始めている事を悟った。
このままでは彼女は私を排除しようとするだろう。
しかし。
セシリアの疑いが深まるにつれ、彼女の態度も変わっていく。
私への言葉は冷たくなり、命令も厳しくなった。
だけれど私はそれを利用し、エリザベスと結託して彼女の失脚を演出していく。