第二章 悪役を演じきってみせます!
セシリア・ルシフェル・アストレア。
『薔薇の国の王子たち』に登場する悪役令嬢。
傲慢で、自分に逆らう者を容赦なく潰すタイプ。
物語の序盤には平民出身のヒロイン、エリザベス・カーライルを苛め、殺人未遂まで起こし最終的に敗北する運命にある。
だが、私はその悪役令嬢のお付きのメイド。
つまりは彼女の悪行に加担していると見なされる存在だ。
そして、セシリアによって濡れ衣を着せられ、死ぬ運命にある。
「なら……逆転してやればいい」
操られているフリをしてセシリアを裏から操り、彼女を断罪する側に回る。
陰の支配者になって物語を書き換えるんだ。
だが、そのためには、まずセシリアの信頼を得る必要があった。
彼女は自分に忠誠を誓う者を好む。
だからこそ私は“完璧な悪役”を演じる必要がある訳だ。
セシリアの周囲には、彼女に取り入ろうとする令嬢達が集まっている。
その中の一人として、私は目立つ存在になる必要があった。
ただ目立つだけでは駄目だ。
陰の支配者となるには、セシリアの右腕として地位を築かなければならない。
「リゼール、あなたはとても賢いわね」
セシリアがそう言ったのは、私が彼女の陰謀を完璧に遂行した時だった。
彼女が望むのはいつだって表舞台での華やかな勝利。
だがその陰には私が仕掛けた罠と策略がある。
「あなたを側近に迎えるのは、正解だったわ」
「お役に立てて光栄です、お嬢様」
私は微笑みを浮かべた。
だがその笑顔の裏には冷たい計算がある。
信頼を得れば得るほどセシリアは、私に依存するようになっていっている。
いずれは私がセシリアを操り、物語を自分の都合のいいように書き換えて、ヒロインであるエリザベスと共に悪役令嬢を断罪してやるんだ。