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【プロトタイプ版】悪役令嬢、革命の果てに ~英雄と呼ばれた彼女が、処刑台に立つまで~  作者: ぱる子
第五章:再び燃え上がる革命

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第36話 決断の時

 かつてパルメリアを支えた仲間たちは、(ひそ)かに「第二の革命」に向けた準備を急速に進めていた。国内では終わりの見えない戦争と粛清に対する不満が鬱積(うっせき)し、軍や秘密警察の内部にさえ「このままでは国が滅びる」と考える者が増えている。表向きは独裁に従っているように見える彼らも、なんとか打倒パルメリアの糸口を探そうと暗躍し始めていた。


 もともと、粛清と外征の余波で軍全体が大きな犠牲を強いられ、兵士から下級将校まで生活は限界に達していた。家族は飢え、際限のない戦費徴収に嫌気が差している者は多い。ある若い将校は言う。


「自分は民を守るために兵になったのに、今は民を苦しめる戦争ばかり。もしあの人を倒す術があるなら、協力したい……」


 こうした声が軍の末端に広がり、徐々に兵器や作戦情報が「うっかり」反体制側へ流れていく。かつてパルメリアを敬愛したはずの兵たちが、今は苛烈(かれつ)な独裁に背を向け始めているのだ。

 同様に、秘密警察内部でも粛清の連鎖に心を痛め、いつ自分が密告されるかわからない緊張に疲れ果てる職員が増え、「いざとなればパルメリアに反旗を翻す」という意志を示す者が出始めていた。


「もうたくさんだ。これ以上、人を引きずり出して殺すのは耐えられない……もし次の革命が起こるなら、自分も情報を提供したい」


 そんな声が保安局の下層部に広がり、独裁体制に亀裂が生まれつつある。


 一方、レイナーはパルメリアの政権下で外交を担いながらも、水面下で国外との繋がりを探り始めていた。断交同然の状態ではあるが、暴走する独裁政権に危機感を抱く勢力の中には、「革命が成功するなら新政権と取引できるかもしれない」と考える者もいる。レイナーは複雑な思いを抱えつつ、わずかな資金や物資を(ひそ)かに得ようと動いていた。


(彼女の近くにいる立場だからこそ、できることがある。……本当は止めたいのに、幼馴染として何もできなかった。だから今、せめて民を救う道に力を貸したい)


 苦い思いを飲み込みつつ、レイナーは民衆が蜂起(ほうき)する時に備え、武器や資金の確保に奔走(ほんそう)する。戦争や粛清によって極限まで傷んだ国を、今立ち上がらなければ救えない――そんな危機感が彼を突き動かしていた。


 ユリウスは各地の抵抗グループをまとめ、蜂起(ほうき)の日取りや方針を調整しようとする。小出しの暴動では保安局に各個撃破されるだけなので、同時多発的に声を上げ、大混乱に乗じて主要都市を制圧する作戦を目指す。


「民衆が暴動を起こすなら、同じタイミングで首都近郊の部隊を味方に引き込み、一気に大統領府を包囲する。これが成功の鍵になる」


 彼は密会の場でそう語り、下級将校や秘密警察の内通者たちにに向け、夜間の合図や暗号化した通信手段を伝授していく。その慎重さと徹底ぶりは、王政を倒した当時をはるかに(しの)ぐほどであった。

 

 クラリスは医療や物資の後方支援を検討し、必要に応じて武器の簡単な修理や、科学技術を応用した連絡手段の開発を進めようとしていた。自分が直接前線で戦うことはできなくても、革命の下支えをする役目があると感じている。


(本当は技術で人々を豊かにしたかったのに、こんな形でしか知識を使えないなんて。でも……もう止まってはいられない。少しでも多くの命を救うために)


 そう心を(ふる)わせながらクラリスは動く。


 そして、軍司令官としてパルメリアに従っているガブリエルも、「第二の革命」の動きを耳にし、さらに苛立(いらだ)ちと葛藤を募らせていた。部下の中にはすでに連絡が届いている者もいるが、彼自身は彼女への想いを完全に捨てきれない。主君を裏切れば大勢の血が流れるかもしれない一方、このまま従えばさらに多くの悲劇を生むのは明白――ふたつの地獄の狭間(はざま)で、彼は沈黙しているのだ。


(いずれ決断の時が来る。私も、これ以上は目を背けられない……)


 こうして、レイナーの外交ルートからは国外支援の小さな光が射し、ユリウスやクラリスの尽力で国内の抵抗運動がまとまりを帯びていく。かつて結束した仲間が再び同じ目標に向けて動き出すさまは、あの王政打倒の革命を彷彿(ほうふつ)とさせる。しかし今回は、血に染まった独裁から祖国を救い出すための、より悲痛な戦いである。


「……必ず成功させましょう。民を苦しみから解き放ち、二度と悲劇を繰り返さないために」


 クラリスの決意を聞きながら、ユリウスは深くうなずき、レイナーは拳を握りしめた。かつて共に戦った仲間――パルメリアを倒さなければならない痛切な現実が、三人の胸に重く圧し掛かっている。あの革命期にあった熱狂はもうない。それでも今の彼らは、あの時以上に悲痛な覚悟を抱いていた。


 こうして、独裁との決戦に向けて蜂起(ほうき)の準備は一気に加速する。それは、同じ理想を語り合った友を敵に回すという、あまりにも痛切な闘いだった。しかし彼らには、もはや後戻りする道など残されていなかったのだ。

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