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【プロトタイプ版】悪役令嬢、革命の果てに ~英雄と呼ばれた彼女が、処刑台に立つまで~  作者: ぱる子
第四章:破滅への道

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第31話 血と飢餓の道

 周辺諸国との戦線が徐々に拡大するにつれ、戦費は膨れ上がり、国内の負担も限界に近づいていた。軍を維持するための資金と物資の不足は深刻で、徴税や徴発による圧力が増すたび、民衆の暮らしはさらに追い詰められていく。いつしか「民のため」と(うた)われた革命は、血と飢餓が横行する惨劇へと変貌していた。


 首都や大都市の市場は一見活気があるように見えても、棚には品物が不足し、値段は高騰の一途をたどり、下層民はとても手が出せなくなっている。農村の状況はさらに深刻で、軍や保安局が兵糧や家畜を根こそぎ押収し、住民は飢えと病に苦しむばかりだ。

 ある農民が戸口で抗議しても、官吏や国防軍の兵は「国のために協力しろ」と言い放つだけ。強制的に穀物や牛馬を差し出さなければ、「反乱分子」として粛清される恐れがある。


「革命で領主を追い払ったはずなのに、今はもっと酷い取り立てじゃないか……何が『民衆の救済』だよ」


 そんな嘆きの声が村々で聞こえても、保安局の監視を恐れて誰も行動に移せない。中には飢えの果てに暴動を起こす地域もあるが、すぐに兵や秘密警察が駆けつけ、恐怖による弾圧が再び静寂を呼ぶ。小さな抵抗が起きるたび「見せしめ処刑」が行われ、他の地域への警告とされていた。


 革命の当初、「王政の重税から民を解放する」と宣言していたパルメリア自身も、戦線を維持するための巨額な費用を前に、今は「国を守るため、一時的な犠牲が不可欠」と主張している。かつて「不当な徴収」を攻撃した王政と、民の視点ではほとんど変わらず、むしろ粛清の恐怖と飢えの絶望という二重苦に(さいな)まれているのが現実だ。


(私が守らなくて、誰がこの国を救うの? 大丈夫……もう少し圧力をかければ、きっと勝てるわ。ふふ……勝利さえ手にすれば、全てが報われる。民だって、いずれは笑顔を取り戻すはず……そう、絶対に)


 パルメリアはそう自分に言い聞かせる。けれど、その「勝利」の具体的な形は一向に見えてこない。増税と徴兵による負担ばかりが膨れあがり、民の生活は切り詰められるばかりだった。


 レイナーは「このままでは内から国が崩壊する」と再三警告するが、パルメリアは「今さら引き返せば外敵に飲み込まれる」と聞く耳を持たない。

 ガブリエルのもとには、兵士たちから「家族が飢え死に寸前だ」という訴えが相次いでいる。「民を守る」はずの革命軍が、今は「民を苦しめる要因」となっている現実に、彼の胸は張り裂けそうだった。


「こんなの、王政と同じじゃないか……いや、それ以上かもしれない。いつまでこんな暴力を続けるつもりなんだ」


 そう漏らす兵士の声を聞きながらも、ガブリエルは命令に従うしかない。保安局の監視は軍内部にも及び、軽率な発言ひとつで「裏切り者」とみなされる時代だ。


 首都の暮らしもまったく平穏ではない。さらなる課税の強化によって商家や職人は次々と廃業に追い込まれ、住民たちは下手に声を上げれば「反逆」扱いとなることを恐れて黙り込むばかり。暗い面持ちの市民が足早にすれ違う街角は、もはや活気のかけらさえ見出せない。


 それでもパルメリアは「今が正念場」と強気な姿勢をくずさない。「勝ち続ければ、いずれ新たな富を得られ、民衆も報われるはず」と信じているからだ。


「国が潰れては元も子もないわ。今押し切らなきゃ……。多少の痛みは仕方ない。大丈夫、私が全てを取り仕切っている限り失敗はしない」


(……本当に正しいのかしら? ――いいえ、私は間違っていない。もし疑えば、全てが壊れてしまう……。そう、私は「民のため」に戦っている。だから、これでいいはず……ふふ、そうに決まっているわ)


 胸の片隅でわずかに痛む良心を、彼女は必死に振り払い続ける。すでに周辺諸国の連合軍が動き出し、今さら退くことなどできない。彼女にとっては「前へ進む」以外の道など残されていないのだ。


 こうして、戦費拡大と重税によって国内はさらに疲弊し、民の怒りと絶望は限界に近づきつつある。だが、秘密警察と軍の徹底的な弾圧によって反乱は起こらず、社会は深い沈黙に沈んだままだ。

 外征で得る「勝利」のたび戦線は広がり、戦費は膨れ、悪循環が加速する。かつて革命で「民の笑顔」を取り戻すはずだったこの国は、いつしか血と飢え、恐怖に覆われている。それに気づかず、あるいは認めず、狂信とも言える決意で突き進むパルメリアだけが前を見据えていた。

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