【3】
夕飯を終えて風呂にも入り、俺はパソコンの前に待機していた。
時刻は九時四十五分。
こちらからお願いしておいて遅刻するワケにもいかないので、俺はさっさとソフトに登録をして、指定されたIDの会議ルームに入っていた。
「あとは、どれだけ信じてもらえて、どれだけ力になってもらえるかだけど」
会議開始時間の五分前には、奏人もやってきていた。
土御門神楽はまだ現れないので、適当に話をすることにした。
「なぁ、奏人。あのゲームどう思う?」
『こだわってるなぁ、遥人は。別に、ただのホラーゲームだろ?』
「だけど、変なことが起きたのはすわりんだけじゃない。いろんな人がおかしな目にあってる。メールにも書いたろ」
『だからさ、アレがそれだけ怖いゲームってことなんじゃないの?』
「ゲームが怖いからって、倒れて救急車で運ばれるか? 配信者たちが消えて行くか?」
『さぁねぇ、俺に言われてもなぁ。見てた感じ、ありきたりなホラゲだったぜ?』
奏人はあまりサクリファイス・ホスピタルに興味がないらしい。
時刻が夜の十時になったとき、モニター画面にひとりの少女が現れた。少女といってもすわりんと同じタイプの動くアニメ画を使っている、少女に見えるものだが。
『わらわが土御門神楽だ。人間はそろっているようじゃな。話を聞こう』
妙な言葉使いをする彼女が、土御門神楽。
銀髪の首下まである髪。赤い瞳。こぶりな鼻と唇でとても愛らしいアイコンだった。
巫女のような着物を着ていて、言葉使いとその姿が合っていて雰囲気がある。
「あー、土御門神楽さん、俺は三島遥人。こっちは柊木奏人。俺たちは――」
言いかけたところで、土御門神楽が言葉をさえぎった。
『わらわのことは神楽で良い。長い名字は必要ない、ムダじゃ。さん付けもいらぬ』
「あ、ああ。それじゃあ神楽。メールでだいたいのことは話したけど、サクリファイス・ホスピタルっていうホラーゲームのことなんだけどさ」
『神楽ちゃん、遥人のやつ色々考えすぎちゃったみたいだから、落ち着かせてあげて』
奏人がちゃちゃを入れる。
まったく奏人のやつ、すわりんが入院してるってのに――。
『さっさと本題に入らないなら、わらわは去るぞ?』
「待った待った! 話したいことはおおよそメールで送ったけど、サクリファイス・ホスピタルのことなんだ。神楽は関わるなって言っただろ? 何か知っているのかなと思って」
『あれは、呪いじゃ』
『はぁぁ、何それ、いきなり呪いって!? ゲームにそんなのあるワケないっしょ』
『いいや、存在する。そもそも、サクリファイス・ホスピタルがゲームの舞台にしている廃病院は、実際に存在する』
「えっ、あの廃墟、本当に有る場所なのか!?」
『そうじゃ。しかも病院の形から部屋などの作り、壁の汚れなどに至るまで細かく再現しておる。明らかに廃病院とゲームをつなげておるのう。その意図まではわからぬが、その廃病院がいわく付きでな』
なんてことだ。
あのゲームで見た廃墟が、実際に存在するだなんて。
そりゃあ、あれだけリアルに作れるはずだ。本当にあるものなのだから。
『ってことは、あんなでっかい病院をまるごと再現してるワケ? そいつヒマ人だなぁ』
「イチイチ余計なこと言うな奏人。それで、神楽。そのいわくって言うのは?」
神楽はふむ、と一息つくと語り始めた。
『あの廃病院は、もともと精神病院だった。東京の、奥多摩にあるものじゃ』
「奥多摩……ずいぶん不便なところにあるんだな」
『左様。だがそれが好都合だったのじゃ』
「好都合?」
『名前も教えておくか、あの精神病院は奥多摩精神科病院という。家族やその一族が自分の家から精神病患者を出したことを世間に知られぬように、ひっそりと入院させる場所だったのじゃ。ゆえに、都心から遠すぎず、しかし山深い場所は好都合だったでな』
悲しい話だ。
家族から離されて、無理やり入院させられた人は、さぞ寂しかっただろう。
『病院は家族から多額の金を取っておった。そのうえ、患者の扱いもひどいものでな。まるで刑務所のような暮らしを強いられていたのだ』
『おいおい、金だけもらってソレっていくらなんでもひどすぎっしょ』
『むかしは今より精神病への理解もなく、彼らが身を寄せる場所もなかった。ゆえにあんないびつな空間が許されてしまったのだろうな。病院はほとんどいっぱいになるまで入院者がいたらしい。順番待ちになることもあったそうな』
「精神病で入院待ちって?」
『病院がいくら大きくても、入れる人数は限られるでな。いなくなる――つまり死ぬのを待つということじゃ。一説では、病院は高額で死後の処理まで請け負い、敷地に死者を埋めていたという話まである』
「そんな、酷すぎる」
いやな予感しかしない話たちだ。
それにしても、神楽はなぜこんなに詳しいのだろう?
「神楽、なぜそんなに病院のことに詳しいんだ?」
『なんだ、お主は何も知らずにわらわにコンタクトを取ったのか? わらわは都市伝説や怪異、心霊譚を扱う配信者じゃ。こういう話を集めて回っているようなものじゃ』
「あ、そうだったのか。すまん、サクリファイス・ホスピタルの記事だけ読んでいたんだ」
『まぁ良い。とにかく、そういう場所じゃ。恨みもつらみも苦しみもあっただろう。それが何故か、まったく生き写しのようにしてゲームとして現れた。誰かのイタズラか、はたまた――。なんにせよ、関わらないのが吉じゃ』
確かに、そんな悲しくて恨みつらみや怨念がこもっていそうな場所のゲーム、神楽の言う通り関わらない方が良いのだろう。
だけど、すでにすわりんが関わってしまった。
そして、ゲームをプレイした配信者たちは謎の失踪を遂げているのだ。
すわりんまで、そんな風にさせるワケにはいかない。
「それでも、俺の友達がもうゲームに関わって病院に運ばれているんだ。今までのケースを見ても、事態は深刻だと思う。俺は、友達を助けたい」
神楽が再び、ふぅむ、と息をついて言う。
『とはいえ、お主らは金は持ち合わせていないのであろう?』
「そ、それはそうなんだけど……三万くらいなら!」
『遥人太っ腹じゃん! 俺なら千円だわ』
『三万千円では話にならぬ。まぁ、良い。わらわに考えがある。今回は特別に引き受けてやろう』
「本当かっ!? 三万円でいいのか?」
『三万もいらぬ。その代わりはまぁ、無事事件を解決してから話そう』
神楽のアニメがにやりと笑った。うう、俺何かされるのだろうか……。
だけど、まずはすわりんや、ゲームをやってから突然活動をやめてしまった人たちを救わねば!
「それで、神楽はどうするんだ?」
『やることは色々ある。廃病院にも行かねばなるまい』
『へっ、そんなことする必要わるワケ? すわりんにお祓いとかじゃダメなの?』
『呪いは根から取り除かなくてはならぬ。その時はお主も来い、遥人とやら』
「俺が廃病院に……? だけど、俺幽霊とか心霊のことなんてぜんぜんわからないぜ」
『お主がやっている配信の過去動画を見た。お主は常人よりも五感がすぐれ、また第六感もあるように思える。おそらく役に立つであろう』
神楽はずでに俺たちの動画を見ていたのか。
確かにシューティングは得意だし、時々勘が働くこともあるけど、それが廃病院で何か役に立つのだろうか。
とはいえ、こちらが頼んでいる立場だ。断るワケにもいかない。
「わかった、俺も行くよ」
『おいおい遥人、マジか!? 度胸あるなー』
奏人の驚きを無視して、神楽が口を開く。
『そうか。では細かい打ち合わせも必要だろう。それに、廃病院まるごとひとつ清めるのはわらわだけでは手が足りぬ。助っ人も呼ぶとしよう』
「助っ人? 神楽の知り合いか?」
『詳しくは、明日紹介する。では明日、またこの時間に』
そう言うと、神楽はさっさと通話画面の接続を切ってしまった。
取り残された俺と奏人は、同時にため息をついた。
『マイペースなやつだな。それに心霊とか清めるとか、お前信じてるワケ?』
「俺は実際にすわりんの様子も見てるからな。アレはただごとじゃなかった。それに、サクリファイス・ホスピタルのウワサを調べて色々知ったから、そういう可能性もあるかもなって思ってるよ」
『はぁー、とことんまっすぐって言うかなんていうか』
「奏人はどうするんだ、明日の打ち合わせや、廃病院のこととか」
俺がたずねると、奏人は『うーん』と声をもらした。
『俺はぜんぜんそういうのは信じてないよ。ただ、ウワサの廃病院に動画の撮影に行ったら、チャンネルの数字取れるかなぁって気がしてるから迷ってる。あのサクホスが実在の病院だった! 突撃リポート! ってね』
「おいおい、遊びに行くんじゃないんだぞ?」
『まぁ、そういうことで気分次第。そんじゃ、俺そろそろ寝るわ』
「ああ、もう十一時過ぎか。わかった、お疲れ奏人。またな」
奏人も通話から抜け、誰もいなくなったネットの会議室をぼんやりと見つめる。
問題のゲーム。
舞台は実在した病院。
プレイした人たちの失踪。
それがひとりなら、偶然だと片づけただろう。だけど俺が調べた限り、かなりの数の配信者が、サクリファイス・ホスピタルをプレイしてからネット上での消息を絶っている。
何かある、俺にはそう感じられて仕方がなかった。
翌日、俺は大学の授業にも身が入らずサクリファイス・ホスピタルについて考えていた。
すわりんは、やはり大学に来ていない。病状が良くないのかもしれない。
なんとか学校を終えると、俺はその足ですわりんの家に行った。
インターフォンを鳴らし「三島です」と名乗るとお母さんはすぐドアを開けてくれる。
「連日すいません、すわり……日和のことが気になって」
「ありがとう。病院の先生にも検査して貰ったんだけどね、身体に異常はないって。ただ、意識はずっと虚ろだし、時々小さな声で何か言っているし、私も心配しているの」
残念ながら、すわりんの症状は緩和されていないらしい。
「あの、お見舞いに行きたいのですが病院と病室を聞いてもよいでしょうか?」
そう聞くと、お母さんはすぐに教えてくれた。そして「日和に声をかけてあげてね」と告げた。
病院はそう遠くない。なんとか面会時間に間に合いそうだった。
バスで病院につくと、受付に名前とたずねる病室を書いて見舞いの人間がかける首掛けが渡された。
二〇二号室という個室に、すわりんは入院しているようだ。
ノックをして、病室に入る。白い壁紙に白いベッドとカーテン。
病室は白で埋め尽くされていた。
ベッドのうえに、身体を起こしたすわりんがいる。
「すわりん、来たよ。調子はどう?」
「……」
すわりんは俺が来ているのもわかっていない様子で、ぼうっとあらぬ方向を見ている。
「はやく元気になってくれよな。学校の連中も、チャンネルのファンも待っている」
「……」
「俺さ、サクリファイス・ホスピタルの舞台になった廃病院に行ってみる。それで専門家と一緒にやることやって、そしたらきっとすわりんも元気になるよな」
サクリファイス・ホスピタルという言葉を聞くと、それまでじっとしていたすわりんがこちらを向いた。
ブツブツと、小さな声で何か言う。
「病院……出れない……。あの……守る、あ……聖母様……」
「聖母様? 前にも言っていたよな。聖母様ってなんだ?」
「あ、お……また……よみ、が……。く、あ……せい、ぼ……さま」
すわりんは何も映し出していないような目で、うわ言を繰り返すばかり。
前にも言っていた。聖母様――。一体なんなんだ?
「とにかく、すわりんはすぐに元気になるから。待っててな」
俺はすわりんの手を握って言うと、病院をあとにした。バスを使い家に帰る。
会議の前に夕食と風呂をすませ、今日も時間前に会議室にログインしておく。
やがて神楽が来て、来るか迷っていた奏人もやってきた。
『そろったようじゃな。なんだ、奏人とやら。お主もいるのか』
『いやぁ、ちまたでウワサのゲームの舞台になった場所だろ? 気になってね』
どうやら奏人は本気で動画撮影でもしに行くつもりらしい。
『やれやれ、まぁよい。一般人がいたほうが役に立つこともある』
「一般人が、心霊で役に立つ?」
『おっしゃ、それじゃあ俺、役に立っちゃうぞー!』
奏人がおどけて手をふった。その手のひらには血豆が出来ている。
「なんだ奏人、その手。ケガでもしたのか?」
『ああこれ? ゲームのやり過ぎで出来ちゃったんだよ。ほら俺、何事も一生懸命だから』
『とにかく、本題に入るぞ。助っ人を連れてきたから招待する。良いな?』
そういうと、神楽は俺たちの返事も待たずに会議に人を入室させた。
神楽のようなアニメ画像ではなく、webカメラで実際に映っている人だ。
髪は短く、目が細い。区切られた画面の中でもがっしりしてそうな肩が見えた。
『太刀風じゃ。位は僧正。まぁ、自称じゃがな。こやつは仏教を主に修練しているが、ほかの教義にも知識が深い。また、わらわ以上に心霊の祓いを経験しておる』
『太刀風だ……君たちのことは……すでに聞いている……。よろしく頼む……』
太刀風僧正が静かな声で言うと、奏人が大声をあげた。
『うっわ、マジか!? 太刀風僧正じゃん!』
「奏人、知っているのか?」
『えっ、遥人、お前知らないのか? お祓いからお悩み相談まで手広くやってる、大人気の配信者だぜ!』
「そうだったのか、そんな人が助っ人に……太刀風僧正、ありがとうございます」
『かのゲームは……多くの者を不幸へ陥れている……。我が祓うべきもの……』
『では、いくつか話しておくかのう』
紹介を終えたところで、神楽が会議を始めた。
『まずゲームを行うと怪異、または人体に影響がある。これはあり得る話じゃ。かつてアニメで激しいフラッシュ効果を使った結果、見ていた子供が大勢倒れた例もある。これは、あくまで映像には力があるということの説明じゃな』
確かに、前にそんな事件があった。
そう言われてみると、映像は人を倒れさせてしまうほどの力さえ持っているのだ。
『次に呪いじゃ。ゲームを通してプレイヤーに呪いを行えるのか。これはわらわはゲームをあまりやらぬゆえ、わからぬ。しかし、多くの配信者がサクリファイス・ホスピタルをやってからネットで消息を絶っておる。おそらく、お前たちの友人のように入院しているのであろう』
「今日もすわりんに会ってきたけど、茫然自失って感じだったよ」
『つまり、ゲームを介しての呪いはあり得るということじゃな。では、どうするかじゃ』
神楽が一度言葉を切り、アニメ画像が手を合わせる仕草をした。
『現地に行き、廃病院の霊を祓う。おそらくは悪霊じゃろう。それに、電子の世界においてまで狼藉を働くとなれば、かなり強力な恐れがある。みな、注意せよ』
『でもさぁ、そんな大ゲサなことするより、サクホスをやるなって皆に言った方が早くね?』
奏人が口をはさむ。
確かにそうだが、それは早々うまくいかないだろう。
「奏人、それは難しいよ。ゲームをやるなって言われれば言われるほどやるのが、配信者ってもんだろ。配信者だけじゃない、普通のユーザーも皆、逆に興味を持っちゃうよ」
『左様……禁じられるほど……人は引き寄せられる……』
『そういうことじゃ。ゆえにわらわたちが直接行って呪いを解かなければならぬ。場所はわらわが知っているゆえ、案内は問題ない。装備だけは整えてきて欲しい』
装備、と言われてもピンと来ない。
呪いを解く……少なくとも食卓塩ではムリそうだ。
「ちょっと待って。俺や奏人は何を持っていけば役に立つんだ?」
『お主らは懐中電灯であったり、食料であったり、数珠なりお守りなりがあるなら持ってくればよい。動きやすい服装でくるのじゃぞ』
「わ、わかった。あるもの探して持っていくよ」
うちにそういうの、あったかな?
あったとしても、持って行って家族に怪しまれないだろうか。
『決行は明日じゃ、よいな?』
『えええっ、いきなり明日ぁ!? マジかよ?』
『今こうしている間にも、ゲームをプレイしてしまっている者がおるかもしれぬのじゃぞ? 一刻もはやく呪いを解くしかあるまい?』
「それは確かにそうだけど……」
それから俺たちは神楽に待ち合わせ場所や集合する駅を聞いた。
早朝の集合で、暗くなる前にお祓いを済ませてしまいたいらしい。
幸いにして、全員が首都圏に住んでいたので早起きは大変かもしれないが集まれそうだ。
それにしても悪霊を祓いに行くって、どういう気持ちの構えをすれば良いのだろう。
「あっ!」
俺はふと思い出して、声をあげた。
『如何した……遥人……』
「俺、事件があった日にすわりん……俺たちの友達の家に行ったんだ。心配でさ。それで、彼女の部屋に行ったらすわりんはぶっ倒れてて。俺たちがなんとか起き上がらせると、すわりんは妙な言葉と一緒に『聖母様』って言ったんだ」
『聖母ぉ? すわりんってキリスト教だったっけか?』
「それで、今日も病院にお見舞いに行ったんだ。そのときサクリファイス・ホスピタルの名前を出したらまた何かつぶやいて、最後に『聖母様』って言葉を口にしていた」
頷くように、神楽のアニメ絵が動く。
『ふむ、聖母様のぅ。何かしら廃病院や、今回の現象と関係があるのかも知れぬな』
『廃病院……サクリファイス・ホスピタル……聖母……。全ては明日わかること……。皆備えをしたら……ゆっくり眠ることだ……では、また明日……』
太刀風僧正が会議室を出て行った。
『太刀風の言う通りじゃな。わらわも支度をして休むとしよう、また明日じゃ』
「明日はよろしく頼む神楽! ……ありがとう」
『構わぬ。せんなきことじゃ』
短く行って、神楽も去っていった。
『しっかしよぉ、なんかいきなりオカルトじみてきたよなー、そう思わないか、遥人』
「仕方がないだろう、奏人。俺だって驚いているけど、実際に被害者が出ているんだから」
『まぁ、そうなんだけどさぁ。なんで俺らまで行かなきゃいけないんだろ』
「なんだよ奏人、廃病院を動画に録って、人気を稼ぐつもりじゃなかったのか?」
俺がそういうと、奏人は『うーん』とうなった。
『なんていうかさぁ、あいつらってガチ勢じゃん。俺らふつーのやつは部外者かなーって』
「まぁそれは言えてるけど。でも、俺たちにも出来る事があるって言ってたただろ。だから、俺は行くよ。すわりんを止めきれなかった俺の責任でもあるし」
『マジメだねぇ、遥人は。まぁいいさ。ハルカナコンビでさくっと解決しちゃいますか。俺もいくよ。そんじゃま、明日早いしこれで。バイバーイ』
奏人が軽口をたたいて、会議を抜ける。
お気楽ぶっているが、奏人は奏人で何か感じているのかもしれない。
「ハルカナコンビでさくっと解決、か。そうなるといいな」
俺もパソコンの電源を切り、使えそうな荷物をカバンにまとめるとベッドに横になった