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序章
暗闇の中で、銀髪が光を放つように揺れていた。
微かな灯りを照り返し、ゆっくりと階段を降っていくその輝きを追うように、一段一段、汚れたコンクリート造りの段差を進んでいく。
重くるしい気配に、全身が冷たい水を浴びせられたように凍える。
この先は危険だと、自分の本能が何度も告げていた。
それでも、行くしかない。
「遥人、着いたぞ。注意するのじゃ」
闇を泳ぐ少女の声。
俺は頷き返し彼女の手がドアノブに伸びるのをじっと見つめる。
現実世界から切り離されたような廃墟、その地下室。
ふと、緊張する頭の片隅でおかしな疑問が生まれた。
――なぜ、自分はこんなところに立っているのだろう。
頭では理解している。
それでも拭っても拭っても振り払えない恐怖と違和感が、そんなことを考えさせる。
そう、あの時から自分は行くと決めたのだ。戸惑いも、後悔もない。
全ては、この悪夢を終わらせるために――。