第5話 アメリカのバスケ
僕は帰り道を痛い足を引っ張るようにして帰った。
幸い僕の家は学校から近いので、そんなに苦労せずにすむのだが。
家に着くと、玄関の明かりはついておらず、家には誰もいないようだ。
「また希の家か……」
僕は希の家のインターホンを鳴らし、中に入っていく。
すると、玄関先で希がまだ制服姿で立っていた。
「おかえり!」
「なんで、まだ制服なの?」
僕は希を見ると、制服にある異変が起きている事に気付いた。
それは、スカートの丈が前よりかなり短くなっているのだ。
恐らく、先輩から短くする方法を教えてもらったんだろうなと僕は考えた。
「だって、これ気に入っているもん」
「いいから、自分の部屋で着替えてきなよ。僕は希の母さんに頼んで夕食食べさせてもらうから」
「わかったわかった」
希はそういうと、自分の部屋へ戻っていった。
僕はそのまま1階のリビングに行き、用意されていた夕食を食べた。毎回のことなので、悪い気など一切起きない。
普通に食べていると、テレビでなんかの試合が放送されていた。どうせ、野球だろうと思った奏は野球に興味は無いと思い、普通に黙々と食べ続けた。
希がドアからリビングに入ってくる。もういい加減制服に飽きたのか、普通の部屋着になっていた。
テレビから大きな歓声が沸きあがる。野球でもこれほどの歓声は起きないっていうぐらいの歓声だ。
ちょっと気になってテレビをみると、なんとバスケの試合が放送されていたのだ。ただ、日本のバスケではなく、アメリカのバスケだった。
奏は箸を休め、テレビに夢中になった。
スコアは92-100。最終クォーターだ。残り時間は1分23秒。
負けているチームが「ライカーズ」という名前で、勝っているチームが、「トバリアーズ」という名前だ。
ライカーズが得点を決めて、トバリアーズが普通にボールを外から出すと、ライカーズの選手がボールをカットし、そのままダンクを決め付ける。
また、歓声が沸きあがり、英語の実況が入る。
「Ooby turned on a splendid dunk! it is an ace!(オービーが華麗なダンクを決めた! 流石はエースだ!!)」
英語の分からない奏でもダンクという言葉と、エースという言葉は分かった。
このオービーというプレーヤーがチームのエースなのだろう。
残り時間が1分をきり、点差はなお、6点差。相手も時間が時間でたっぷり使ってじりじりと攻撃を仕掛けてくる。
苦しい展開のライカーズ。その時、奇跡は起きた。
ドリブルボールを奇跡的にカットしたのだ。そのまま、ボールをドリブルし速攻を仕掛けレイアップでフィニッシュする。
点差は4点差に減った。相手がハーフコートに来たところで残りの時間は58秒。またしても相手は時間をギリギリまで使ってシュートを打つ。
しかし、相手のシュートは外れ、リバウンドをライカーズが奪取する。そのまままた速攻を決めるところで相手のエースとライカーズのエースとの勝負になった。
ライカーズはドリブルでゴールの近くまで行き、大きくジャンプをする。相手も負けじとジャンプし、ボールを叩き落とそうとする。
だが、それでもエースはボールをゴールにたたきつけた。
その瞬間、笛がなった。実況者がこう言う。
「A basket count! a one throw!!(バスケットカウントでワンスローを獲得だ!)」
これで、ライカーズは得点が認められ、点差は2点に減った。
その後のフリースローを順調に決めて点差は1点になり、ワンシュート差まで持ち込んだ。
ライカーズが何としてもカットしようとコート内を必死に暴れまくる。時間は25秒。このチャンスがラストだ。
奇跡は、1度ではなかった。2度目もカットに成功したのだ。
エースが再びボールを手にし、豪快なダンクを決めて、ゲームを勝利に収めたのだった。
それを見ていた奏はもう虜になってた。
「僕も……やりたい!!」
「え?」
希が聞き返す。
「僕も……あんなプレイヤーになって、皆を感動させたい!」
それを聞いた希が、奏の近くまで来て後ろから奏の華奢な肩にもたれかかってきた。
「私も……おうえんしてるよ」
希はポツリと言ったのだった。