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ナポレオンが出てくる桃太郎

 むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山にしばかりに、おばあさんは川へ洗濯へ行きました。


 おばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこ、どんぶらこと大きな桃が流れてきました。

「まあ、なんておおきな桃でしょう」

 おばあさんはよろこんで桃を家へ持って帰りました。


 そして桃を切ろうとすると、中から赤ん坊が飛び出してきました。二人は驚き、喜び、桃から生まれたので「桃太郎」と名付つけて育てることにしました。


 桃太郎はすくすくと成長し、立派な若者になりました。


 ある時、桃太郎はおじいさんに言いました。

「鬼が島に悪い鬼たちが住んでいて、村を荒していると言うではありませんか。私が成敗します」

 二人は危ないのでやめなさいと止めましたが、桃太郎の決意は変わりません。

 そこでおじいさんは桃太郎に立派な刀を、おばあさんは日本一のきびだんごを作って持たせました。


「では行ってまいります」


 桃太郎は鬼を倒すために旅立ちました。


 旅の途中で桃太郎の前に一匹のイヌが現れました。

「桃太郎さん、その袋には何が入っているんだい」と尋ねました。

「日本一のきびだんごだよ」

「一つくれるなら、仲間になってあげましょう」

 桃太郎はきびだんごをイヌに与えて仲間にしました。


 さらに桃太郎の前にサルが現れます。

「桃太郎さん、その袋には何が入っているんだい」

「日本一のきびだんごだよ」

「一つくれるなら、仲間になってあげましょう」

 桃太郎はきびだんごをサルに与えて仲間にしました。


 さらに桃太郎の前にキジが現れます。

「桃太郎さん、その袋には何が入っているんだい」

「日本一のきびだんごだよ」

「一つくれるなら、仲間になってあげましょう」

 桃太郎はきびだんごをキジに与えて仲間にしました。


 さらに桃太郎の前にナポレオンが現れます。

「桃太郎、その袋の中身はなんだ」

「日本一のきびだんごだよ」

「一つくれるなら、仲間になってやろう」

 桃太郎はきびだんごをナポレオンに与えて仲間にしました。



 一行は鬼が島が見える浜辺までたどり着きました。

「あれが鬼が島か。さて、どうやって海を越えよう」

 桃太郎が悩んでいると、ナポレオンがどこからともなくフランス軍を呼び出しました。その数二十万。ブローニュの野営地で訓練を積んだ精鋭たちです。

「橋を架けて渡ろう」

 ナポレオンが手を挙げると、たちまちフランス軍の兵士たちは近くの漁村や村から小舟を徴発して持ってきて集め、工兵隊がざぶざぶと海へ入っていき浮橋を架けていくではありませんか。さらに先遣隊は小舟で島へと渡り、上陸地点の敵を一掃していきます。


 一晩中続いた工事で長さ八百メートルの立派な浮橋が完成しました。桃太郎たちは早速橋を渡りました。

 しかし、その様子は島の鬼たちに見られていました。


 桃太郎たちとフランス軍が島に渡り終わると、眼前の平野には鬼が島の鬼たち、総勢十八万が待ち構えていました。彼らは丘の上に陣取り、上陸地点を半包囲するように布陣しています。


「やあやあ、我こそは桃太郎。村の人たちを苦しめるお前たちを成敗しにやってきたぞ」


 桃太郎が名乗りを上げると、鬼の大将が現れて答えました。


「生意気な小僧め。ワシに勝てると思うのか。お前たち、やってしまえ!」


 こうして桃太郎一行と鬼たちの戦いが始まりました。


 桃太郎はおじいさんから貰った刀を振りかざし、イヌは鋭い牙で噛みつき、サルはひっかき、キジは鬼たちの目をつつき、フランス軍の戦列歩兵は激しい射撃を浴びせ、砲兵隊は十二ポンド砲を容赦なく撃ち、胸甲騎兵たちは逃げ崩れる鬼たちを激しく追撃しました。


 一日中続いた鬼が島の戦いは激しい戦いとなり、桃太郎の一行に七万の、鬼たちに九万の損害が出てとうとう鬼の大将は抵抗を諦めて降伏文書に署名しました。


「あいたたた、まいった。まいった。もう悪い事はしないからゆるしてくれ」


「本当にもう悪いことはしないな?」


「しません。奪った宝物もお返しします」


「それならよい。これからは心を入れ替えて、みんなに親切にするんだぞ」


 桃太郎は鬼が奪った宝物を取り戻しました。ところが、それを前にナポレオンの態度が一変します。


「この宝物は私が全ていただく」


「何を言いだすんだ。この宝物は村の人たちに返すんだ」


「私は大軍を従えているが、彼らを養うだけの金がないのだ。この宝物は賠償金として差し押さえ、特別会計に組み込んで軍事支出の支払いに与える。ついでにこの島は我々の衛星国とし、鬼たちにはこの島に駐留するフランス軍の維持費を支払わせることにする」


 なんということでしょう。ナポレオンの正体は「コルシカの人食い鬼」だったのです。


「たいへんだ」


 桃太郎とイヌとサルとキジは大急ぎで島から脱出し、浮橋を叩き壊して彼らが島から出られないようにしました。


 そこへ、ユニオンジャックの旗を掲げたイギリス軍の戦列艦ヴィクトリー号がやってきました。


 コルシカの人食い鬼(ナポレオン)は陸戦では無敵でしたが、海上戦は勝ち目がなく、イギリス海軍が監視する限り島から出られなくなってしまったのです。


 こうしてナポレオンは島に封印され、桃太郎はイヌ、サル、キジと共におじいさんとおばあさんの待つ家へと帰って、しあわせに暮らしました。


 おしまい。






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― 新着の感想 ―
[良い点] ナポレオンの変わり身には驚きましたが、大軍を率いるためにはきれいごとでは済まされないのだなあと思いました。 それでも鬼たちを封鎖せしめた桃太郎は偉いと思います。 [一言] マッチ売りの少女…
[良い点]  御作、拝読いたしました。  いろいろと日本のむかしばなしを題材にした風刺小説や漫画は見てきましたが、これはこれで新鮮味があって面白かったです。  鬼の財宝を賠償金として軍事費に充てると…
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