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第4話 悪役令嬢と怪力令嬢

 理不尽に婚約破棄をして令嬢を苦しめる超人王子。彼らを抹殺するため、今日も悪役令嬢を乗せた悪役馬車は荒野を突き進む。


「ほぉらエル。どっちに

 ジョーカーがあるかしら?」


「ぬぬぬぬ……右です!

 だからこっちを引けば……

 ああああああああッ!!」


「残念。ではわたくしは

 こちらを引いて、はい。

 またわたくしの勝ちですわ」


「チクショオオオオオオ!!

 ゲリラ様、ズルしてない

 ですよね? 闇の力使うの

 禁止ですよ!?」


 悪役令嬢ゲリラと悪役メイドのエル、2人は悪役馬車の中で仲良く(?)ババ抜きに興じていた。


「何を人聞きの悪いことを……。

 あなたがクソ雑魚なだけですわ」


「エルは単純だから表情で

 バレバレなんです。もっと

 ポーカーフェイスを

 心掛けなければなりませんわ」


 2人がトランプで遊んでいる中、悪役馬車は森が広がる街道に入る。木漏れ日と爽やかな空気を感じながら、悪役馬は森を駆け抜ける。


 その時だった。


「グアアアアアッ!!」


 悪役馬車の前に、雄叫びを上げながら巨大な影が飛び出した……! 悪役馬は影に驚き立ち止まり、馬車は急停車した!


「な、なんなんです?

 馬車が止まって

 しまいましたけど……」


 ゲリラとエルが身を乗り出し、馬車の前を覗き見ると、そこには巨大な熊がいた。悪役馬を睨み付け、今にも襲い掛かろうとしていた……!


「マズいですわ……!

 こんなところで悪役馬が

 襲われてしまったら、

 わたくしたちは森の中で

 立ち往生になって

 しまいます……!」


 ゲリラが慌てふためきながら、熊を討伐するため、闇の力を解放しようとしていた時だった。


「はぁっ!!」


 突如、少女の声が響き渡ったかと思うと、熊が吹き飛び、悪役馬車を飛び越えた!


「な、何ごとですの……?」


「久しぶりね! 悪役令嬢!」


「あ、あなたは怪力令嬢!」


 声の正体は悪役令嬢の旧友、怪力令嬢だった。怪力令嬢は華奢な見た目とは裏腹に、凄まじい腕力で熊を殴り飛ばしていたのだ。


「そ、その怪力令嬢って

 呼び方やめてくれる……?

 私にはウィナって名前が

 あるんだから……」


「あっ! 怪力令嬢さん!

 お久しぶりです! エルです!」


「だから!! 呼び方ぁ!!」


 怪力令嬢という呼び名が嫌なウィナは、涙目で必死に訴えている……。だが、誰もそんなことは気にしていなかった。


「怪力令嬢。何故あなたが

 こんなところにいるのです?」


「私、今この辺に住んでるのよ。

 ちょ、ちょっと良い人が

 み、見つかって……それで……

 婚約することになって……」


「えっ……!?」


 ゲリラは信じられない物を見るかのような目で、震えながらウィナのことを見つめている。


「あ、あのモテとは無縁の

 怪力令嬢が!? 殿方と!?」


「ほ、ほんと失礼な奴ね……。

 あんたの見る目がないだけよ……」


「せっかく久しぶりに

 会ったんだから、ちょっと

 私の家、寄って行きなさいよ」


「え……? 良いのですか?

 だ、だってあなたたちの

 愛の巣なのでしょう……?」


「ちょっ……!!

 そんな言い方やめてよ!?

 た、ただ一緒に住んでるだけ

 なんだから……!!」


 ウィナは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。ゲリラはそれを見てニヤニヤしている……。


(怪力令嬢はほんと面白い

 反応をしますわね……。

 からかいがいがありますわ……)


「では、お言葉に甘えて

 遊びに行きましょうか」


 悪役令嬢ゲリラはなんだか面白くなり、怪力令嬢の家へ遊びに行くことに決めた。


 怪力令嬢に案内され、馬車を少し走らせた先には、木々と川に囲まれた小さな一軒家が建っていた。悪役令嬢たちの気配に気付き、その家の主が中から出てきた。


「おや、ウィナ、お客さんですか?」


 礼儀正しい爽やかな男性が、ウィナに笑顔を向けている。ウィナは愛おしそうに男性を見つめていた。


「モンドさん……! この人たちは

 私の友人のゲリラとエル……!」


「ゲ、ゲリラ。この人は、わ、私の

 旦那様、宝石王子のモンドです……」


(あ、あの怪力令嬢があんなに

 大人しく乙女な感じに……!?)


 借りてきた猫のように可愛くなっているウィナに、ゲリラは笑いを堪えるので精一杯になっていた。そのことに気付いたエルは若干引いていた。


「ちょ、ちょっとゲリラ様。

 失礼ですよ。そんな面白がって」


「だって! あんなにモテない怪力令嬢が

 殿方とお付き合いしているんですよ!?

 そんなの面白いに決まっていますわ!」


「ワウッ!」


「うわあっ!?」


 ゲリラが吹き出していると、大きなオオカミが人懐っこくゲリラに抱きついてきた。その大きさに押し倒されてしまうゲリラ。


「だ、大丈夫ですか!? ゲリラ様!?」


「大丈夫じゃありませんの……」


「その子はウチのペットの

 ライドウルフのマックスよ。

 気に入られたようね? ゲリラ?」


 ウィナがお返しと言わんばかりにニヤニヤしながら、ゲリラがマックスに押し倒されているのを眺めている。


「賑やかなお友達ですね……。

 みなさん、ぜひゆっくり

 くつろいでいってください」


 宝石王子のモンドに促され、ゲリラとエルは、遠慮なく家の中へと上がることにした。玄関前でモンドとすれ違ったゲリラは、モンドのことを警戒する素振りを見せている。


(宝石王子……まさか……)


 脳裏によぎった疑念を振り払いつつ、ゲリラは怪力令嬢の家へと入って行った。

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