優れたサービス
優れたサービスは顧客に言われたものを提供するのではなく、顧客自身が表現しない顧客の希望を実現することと言われる。顧客が明示的に欲しいと言ったものを出すだけではダメとはよく言われていることである。
以下はヘンリー・フォードの言葉である。「もし顧客に望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう」(If I had asked people what they wanted, they would have said faster horses.)。
城アラキ原作、加治佐修漫画『バーテンダー a Tokyo 1』「魂の番人」では「お客様ご自身すら気づかない気持ちの裏側を見る」ことが一流のサービスとする。
城アラキ原作、長友健篩漫画『バーテンダー』はバーテンダー佐々倉溜が客に合った酒を出すことで、顧客の抱えている問題が解決する。これは多くのグルメ漫画と重なる。佐々倉の優れたところは、顧客の外見や仕草から問題を把握し、適切な酒を出すことである。シャーロック・ホームズのような観察力と推理力を発揮する。顧客に質問して回答させる負担をかけない。
城アラキ原作、加治佐修漫画『バーテンダー a Tokyo 1』「魂の番人」ではバーテンダーが「普段はどんな物を?」「アルコールの強さとかお好みとかありますか?」と質問する。客は「あんたバカ?そんなこといちいち教えてくれる甘い客がこの銀座のどこにいるの」と答える。顧客の立場になって考え、相手の気持ちをくみ取ることが大切である。
客の好みにあったものを出すことは正しい。客の好みを無視して自分が売りたい物を売りつける悪い意味のソリューション営業は最低である。しかし、客を質問攻めにすることもレベルが低い。特に公務員的なサービスになると、「アレルギーになる食物はないですか」の質問のように客のことを考えているのではなく、単に自分が責任を負いたくないという保身第一の動機になる。
顧客に質問するばかりでは能がない。肉屋に行って「イベリコ豚が欲しい」と言ったのに「トンカツを作るのですか、豚汁を作るのですか」と質問されて注文が進まないならばウンザリする。しかも、この種の質問をする業者が消費者のことを考えているとは限らない。
単に自分の店にはイベリコ豚がなく、それよりも三元豚を買わせたい。そのために何を作るのか質問し、「それには三元豚がいいですよ」と売り込みたいだけということもある。結局、悪い意味のソリューション営業になる。
「質問攻め」と呼ばれる接客スタイルは、顧客に対して不快感を与えるだけでなく、サービス提供者側の信頼性やプロフェッショナリズムにも影響を与える。事業者側は質問よりも説明する立場である。情報を与えずに質問ばかりして選択を迫るものではない。




