近代の播州素麺
明治時代になると素麺製造業者が集まり、一八七二年(明治五年)に明神講を設立した。素麺連中約定書を定め、職人の賃金を定めたり、品質の統一化を図ったりした。一八七四年(明治七年)には素麺業者一二七名が開益社を設立した。一八八七年(明治二〇年)には播磨国揖東西両郡素麺営業組合を設立した。
商標「揖保乃糸」は一八九四年(明治二七年)に誕生した。製造工程で上下に伸ばして乾燥される麺は純白の絹糸のようである。「揖保乃糸」は一九〇六年(明治三九年)に商標登録した。大量の注文を受け、生産量が増え、消費量も増えていった。
組合の名前は変遷があり、戦時中は国家統制により、兵庫県手延素麺統制組合に統合される負の歴史があった。終戦で兵庫県手延素麺統制組合は解散し、播州地区に兵庫県手延素麺製粉工業組合が設立された。1962年(昭和37年)から兵庫県手延素麺協同組合となる。
兵庫県手延素麺協同組合は1992年に製造家養成、製麺研究のための施設として、メンテック林田を竣工した。メンテック林田は2003年にリニューアルし、手延麺のモデル製造工場として内容を充実させ、見学通路も作った。兵庫県手延素麺協同組合林田支部では2007年に立体自動倉庫を竣工した。工場と言っても手延べそうめんであり、手を使う工程が多い。
播州素麺のブランド揖保の糸は新型コロナウイルス感染症対応の巣ごもり消費で売れ行きが好調である。2020年2月は前年比18パーセント増、3月は同25%増(「スーパーの棚でそうめんだけ残る現象も…売上げは好調」日本食糧新聞2020年4月22日)。「揖保乃糸上級品300g」は2019年9月から2020年3月までの累計で前年対比6万箱も増えた(「手延べそうめんに早くも品薄感 乾麺好調も品切れとギフト市場に懸念」食品新聞2020年5月15日)。
播州素麺は幕末の「素麺屋仲間取締方申合文書」以来、生産者が品質を守る努力を続けている。生産者が品質を守ることは重要である。2022年には輸入アサリを熊本県産と偽る大規模な産地偽装疑惑が生じた。2021年10月から12月までに「熊本県産」表示のアサリは2485トンも販売された。2021年の一年間の推定漁獲量35トンの約70倍もある。
この結果、熊本産アサリは返品されるほど信用が落ちている。熊本産アサリと称すれば売れると考えて産地偽装したのだろうが、逆に熊本産アサリとすると売れないという皮肉な結果になった。
産地偽装は許されないことである。「熊本県産」と表示するだけでブランド力が上がり、売上が上がると思ったのかもしれないが、消費者の目は厳しい。食の安全・安心への関心が高まる中で、食品の表示ルールや基準を守らない企業は淘汰されていく。
熊本県は水産統計を毎年作成しているが、漁獲量を大きく上回る県産アサリの市場流通が記録されており、偽装の疑いは長年見過ごされていた。行政は生産者保護の発想が強く、生産者に甘くなりがちであるが、それが生産者を苦しめている。




