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素麺は夏の涼味

素麺は夏の涼味である。暑い時期には食欲があまりなくてもスルスルと食べられる麺類が合っている。人間が生きていくためには食べなければならない。しかし、あまりに辛く苦しい目に遭うと、食べる気持ちも起きなくなる。そのような状態でも素麺は食べられる。食欲がない人でも食べられる。夏以外も季節を問わず食べられる。寒い時期は茹でたてが美味しい。


素麺はコスパが高い。苦学生の主食になる。「地方出の学生の中にはアルバイトで家賃を稼ぎ、素麺ばかり食べている人もいる」(乙川優三郎『R.S.ヴィラセニョール』新潮社、2019年、24頁)。羽海野チカ『ハチミツとクローバー 1』(白泉社、2002年)にも金欠の美大生が毎日、素麺を食べているシーンが描かれる。


素麺の他の麺類と比べた弱点は、スープやソースを変えて様々なバリエーションを楽しめず、単調になることである。トマトソースで食べるトマトそうめんやイタリアン素麺、フルーツを載せた素麺、コンソメスープ素麺など様々なバリエーションを生み出している。


素麺と冷や麦とうどんの違いは太さである。素麺は長径1.3mm未満、冷や麦は長径1.3mm以上1.7mm未満、うどんは長径1.7mm以上のものになる。素麺は細いために麺つゆがよく絡み、独特な食感になる。プチプチッと弾けるような強い歯切れがある。


素麺は麺を延ばし、ねかし(熟成)を繰り返すことで作られる。コシを出すために、熟成を重ねながら麺を徐々に引き延ばして細くしていく。天候や温度、湿度の違いによって変化する生地の具合に注意を払いながら生産する。


素麺は寝かせることで美味しくなる。寝かせることにより、熟成し、素麺の中のグルテン等のタンパク質がグルタミン酸等のアミノ酸に分解され、うま味成分が多くなる。


素麺の起源は中国の菓子の索餅さくへいである。日本には奈良時代に遣唐使が伝えた。もち米をこねて細く延ばし、縄のようにねじり合わせた。索は太い縄、餅は小麦粉と米粉を混ぜ合わせたものを意味する。


朝廷は諸国に対し小麦の種子を献上させ、翌年、全国へ配布した。この種子の中に小麦以外のものも含まれていた。たとえば大豆や粟などである。これらの穀物を粉にして練り固めたものを天日乾燥させてつくった食品も索餅と呼ばれた。


鎌倉時代になると麺を延ばす索麺が登場する。室町時代になると細長い麺になり、素麺と呼ばれるようになった。素麺は公家言葉では「ぞろぞろ」と呼ばれた。「ずずっ」と食べる音が反映している。


日本三大素麺は播州素麺、三輪素麺、小豆島素麺である。四大産地となると島原が加わる。播州林田から発祥した清和源氏の林田氏は肥前に進出し、南北朝時代には林田隠岐守が活躍した。林田隠岐守の領地があった島原半島も素麺の産地である。


三輪素麺は日本の素麺の起源である。冬期に限定して作られる。それにより塩分を少なくし、細くてもコシが強くて独特の歯応えのある麺になる。小豆島素麺は胡麻油を使用して麺を延ばしている。そのために黄色がかった麺になり、弾力もある。


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