居酒屋
居酒屋「きびだんご」に入った。ここは、おでん屋さんでもある。カウンター席に座ってメニューを見ると、おでんの種類の多さに驚いた。
「おすすめは何でしょうか?」
「大根やがんもどきや玉子や厚揚げやこんにゃくや牛すじやタコやちくわやウィンナーや餅巾着やロールキャベツやはんぺんやじゃがいもや練り物などがありますけど……」
「そんなにたくさんあるんですか!」
「はい。どれもおいしいですよ」
「それなら……まずは、おでん全種類を一つずつお願いします」
「かしこまりました」
「お待たせしました。おでん全種盛り合わせです」
大将が言った。
「ありがとうございます。いただきます」
おでんは熱々でおいしかった。
「これは何という料理なんですか?」
「それは、ちくわぶですね」
ちくわぶは、小麦粉をこねたものを茹であげた食品である。
「へえー、初めて食べましたよ」
「おいしいでしょう?」
「はい、とても」
「ちくわぶには、カルシウムが多く含まれています。骨を強くするのにいいんですよ」
大将が教えてくれた。
「そうなんですか。知らなかったなあ」
「お客さんは健康のためにここに来たわけじゃないと思いますが、体に良いことは間違いないです」
「はい。そう思います」
「この店では、お客さんにはいつもおいしいものを食べてもらいたいと思っています」
大将が言う。私は手羽先のほかに、白身魚のフライ定食を食べる。小鉢がいくつかつき、ご飯とおみそしるがついて千円ちょっとだ。
「ここの魚は新鮮です」
大将は言いながら、大きな皿の上に盛られた白身のフライを出してくれる。一切れ食べてみると、衣がサクッとしていて、中の白身にしっかりと火が通っていることがわかる。脂っこさがなく淡泊な味わいであるが、「うまい!」と言うしかない。
「うちの自慢は手羽先ですが、フライにも自信を持ってますよ」
大将が言った。確かに、このフライは絶品であった。
手羽先の次に食べたのは、鳥皮焼きだった。
「これはね、鳥の皮だけを焼いているんです。だから、皮だけしかありません。でも、その分、安く提供できるんですよ」
鳥皮とは、鶏肉の皮の部分のことである。鳥皮は薄いため、一枚の皮だけで調理する。そのため、鳥皮焼きと呼ばれている。
「塩をつけてどうぞ」
大将が勧めてくれたので、試してみることにする。鳥皮をつまんでみると、カリッとした歯ごたえがあった。そして、噛むとジュワッと油が出てくる。とても香ばしい香りだ。
「うまいですね」
「そうでしょう?」
鳥皮はビールによく合うと思うのだが、残念なことに生憎この日は日本酒しかなかった。しかし、それでも十分に満足できた。鳥皮焼きのあとは、野菜炒めが出てきた。キャベツ、ニンジン、タマネギなどが入ったシンプルな野菜炒めである。
「これこそ家庭料理の王道ですよ」
大将が言う。確かにそうだと思った。家庭で作るような素朴な味付けである。それでいながら、実に美味しいのだ。最後に出てきたのは、デザートである。
「今日はサービスしますからね」
そう言って大将が出してくれたのは、思わず声が出たほどの大きさのプリンであった。直径十五センチくらいはあるだろうか? 表面にはカラメルソースがかけられていて、その上にバニラアイスが載っている。
「うわあ! すごい!これを一人で全部食べるのですか!?」
「もちろんです」
「太っちゃいますねえ……」
言いながらもスプーンを手に取り、早速いただいてみた。濃厚な卵の風味が口の中に広がる。甘くておいしい。幸せである。
「また来てくださいね」
大将が言ってくれた。
「はい、必ず」
力強く答えた。




