豚骨ラーメン
豚骨ラーメンは豚骨スープのラーメンである。脂が浮き出た濁ったスープが特徴。スープには旨味が詰まっている。豚骨のまろやかさ、香ばしさをしっかりと味わえる。スープの脂分が麺にしみわたり、麺も食べやすくなっている。豚骨ラーメンは長崎ちゃんぽんに着想を得たとされますが、脂っぽさが重なる。
ズルッ――ズゾォオオオオッ!! 口の中に勢いよく流れ込んでくる濃厚かつ芳ばしさのある豚骨の風味。鼻腔を突き抜ける匂いはまさに豚骨そのもので、食欲をそそる。
豚骨ラーメンはギトギトに油っぽいというイメージがあるが、意外とすっきりしていて、胃にもたれない。臭みも感じない。スープを飲み干した後も、まだ飲める感覚が残る。腹にドスンとたまるようなものではなく、飲みやすいスープである。腹八分目のラーメンである。
豚骨ラーメンと言えば、濃厚なスープが特徴であった。しかし、濃厚な豚骨スープが好まれるとは限らない。濃厚な豚骨スープは苦手だという人もいる。そういう人達のために、あっさりとした豚骨スープが登場した。好みでないものを無理して食べる必要はない。好みのものだけを選べばいいという消費者の行動が新しい味を生み出した。濃厚な豚骨スープが好きな人もいれば、あっさりしたものが好みという人もいる。好みに応じて選べることは消費者の自由であり、選択の自由を尊重することは社会の基本理念でもある。
豚骨ラーメンは豚骨を強火でゴトゴト煮炊きする。するとコラーゲンが溶け出し、ゼラチンとなる。ゼラチンは水や脂と混ざって白濁したスープになる。鹿児島では骨付きの豚肉を似た郷土料理を豚骨と言う。これも長く煮込むことが特徴。煮込めば煮込むほど臭みがとれ、コクが出る。
味噌ラーメンが北海道ならば、豚骨ラーメンは九州である。豚骨ラーメンの発祥地は福岡県久留米市である。高価な鶏ガラの代わりに豚骨を使ったのが始まり。食材の値段と味は比例しない。久留米ラーメンの豚骨スープは継ぎ足しで作っている。このために通好みの濃厚なものになる。匂いも強い。久留米ラーメンはネギやキクラゲ、チャーシュー、海苔を載せるものが多い。
10月2日は、とんこつラーメンの日である。久留米ラーメン会が「とん(10)こつ(2)」の語呂合わせから命名した。久留米ラーメン会が制定するところに豚骨ラーメン発祥地としての自負心がある。
その後は豚骨ラーメンと言えば博多ラーメンとなった。継ぎ足しをしない博多ラーメンの豚骨スープが一般受けは良いだろう。
豚骨ラーメンは九州以外にも広がっている。敦賀ラーメンは豚骨と鶏ガラをベースにした醤油味のスープである。「中華そば 一力」が有名である。豚骨ラーメンは中国人に人気の日本ラーメンです。濃厚な味が中華料理に通じるため、親しみを感じるという(中島恵『中国人は見ている。』日本経済新聞出版社)。
豚骨ラーメンは「こってり」であるが、豚乳も「こってり」味と言う。帯広畜産大大学院修士課程1年の林田空さんの豚乳の研究は2017年9月の日本哺乳類学会で学生口頭発表優秀賞を受賞した(「豚ミルク、なぜ利用されない? 畜大大学院の林田さんが研究」濃+ビジネス北海道2017年10月12日)。