エンタメの値段と味は比例しない
値段と味が比例しないことは様々なエンタメ作品で論じられている。「味は値段に比例せず」という台詞は漫画や小説で多用される。「味は値段で決まる」という台詞は間違いである。
「高級な食材を使えばいいってもんでもない。素材の良さを引き出すのが腕なんだ」
「安い材料でいかに旨いかを追求するのもプロの技です」
「安い肉だって最高級品と同じぐらい美味しくできる」
「高い食材を使うだけが料理ではない」
「高級な食材を使ったとしても、それが美味しいとは限らない」
「高級食材を使いたがるのは素人だけ」
「高級食材で作る料理よりも、その食材を活かした料理の方が美味しかったりする」
「高級レストランより大衆食堂のほうが性に合っているんでね」(東野圭吾『卒業 雪月花殺人ゲーム』講談社文庫、1989年、88頁)
「パーティーや高級レストランの食いものに比べりゃ、ここのハンバーガーのほうが、よっぽどマシだ」(浦沢直樹『MONSTER 15』小学館、2000年)
「高級食材の料理には興味はない」「今僕に必要なのは一般的な大衆料理だ」(『Fate/Zero アンソロジードラマCD Vol.1』「イートイン・泰山」2012年)
「高級な食材でしか美味しい料理を作れないなんて本当の料理人じゃない」(早川光原作、橋本孤蔵漫画『渡職人残侠伝 慶太の味』集英社、2008年)。この思想は同じ原作者の『江戸前鮨職人きららの仕事』でも感じられる。原作者のバックボーンとなる思想と言えるだろう。
藤川よつ葉原作、うえののの漫画『女優めし』の人気女優・和泉撫子は高価なレストランやお洒落なカフェよりも立ち食い寿司や焼きそばなどカジュアルな食事を好んでいる。
天那光汰『剣聖の称号を持つ料理人』は料理人が異世界に転生するファンタジー小説である。威張った役人が上手いステーキを作ることを要求する。肉の質が味を決めるというナイーブな発想から、高級な肉を出せない店では上手いステーキが作れないと考えている。しかし、シェフの技術で炭火焼のステーキを提供し、ギャフンと言わせる。肉の質と味は比例しない。安い食材で美味いものを作るのがプロである。どれほど高い食材でも美味しくなければ意味がない。
雁屋哲著、花咲アキラ画『美味しんぼ』(小学館)の初期は山岡が食の権威を徹底的に凹ませた。その展開は痛快である。第2話「味で勝負!!」では「中味じゃなく名前を有難がってるだけなんじゃないの?」と言い放つ。食材の価格と味が比例するという類の浅ましい発想は徹底的に否定される。その後の『美味しんぼ』は激しいバッシングを受けることもあった。それは権威を守る側に回ったこともあるだろう。
デビッド・宮原原作、たなか亜希夫漫画『かぶく者』連獅子編では梨園の御曹司が焼き鳥の美味しさに目覚める。高級料理よりも美味しいものがある。値段と味は比例しない。




